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【戦略】サステナビリティ(CSR)とは何か? ー定義とその意味ー 2014/02/02 体系的に学ぶ

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サステナビリティ(CSR)とは

サステナビリティ(Sustainability)とは、広く環境・社会・経済の3つの観点からこの世の中を持続可能にしていくという考え方のことを言います。その中でも特に、企業が事業活動を通じて環境・社会・経済に与える影響を考慮し、長期的な企業戦略を立てていく取組は、コーポレート・サステナビリティ(Corporate Sustainability)と呼ばれています。

日本のCSR

サステナビリティという単語は日本ではまだ聞き慣れない言葉かもしれません。この分野におけるより使い慣れた単語としてはCSR (企業の社会的責任)という言葉があります。ですが、私たちはSustainable Japanの上では、CSRという言葉より、サステナビリティという言葉を積極的に使おうとしています。このページでは、サステナビリティが含有する意味をご紹介しながら、日本でのCSRと、海外でのサステナビリティが持つ意味の違いをご紹介したいと思います。

CSRという言葉から、どのような活動をイメージするでしょうか。Wikipediaの「企業の社会的責任」の日本語ページでは、CSRを「企業が利益を追求するだけでなく、組織活動が社会へ与える影響に責任をもち、あらゆるステークホルダー(利害関係者:消費者、投資家等、及び社会全体)からの要求に対して適切な意思決定をすることを指す。 」と定義しています。しかし、この定義からは企業の具体的な活動がいまいち想像できません。より具体的なイメージとしては、東日本大震災の際に、企業が寄付や物資の供給をを行ったことを思い浮かべる方もいると思います。また、発展途上国に対して、学校を建てたり、医薬品を届けたり、植林を行ったりする活動を想像する方もいるかもしれません。これらは、日本では「社会貢献活動」と呼ばれることもあります。「CSR」というとこのような社会貢献活動を想起する人が多いかもしれません。

一方で、企業経営者は、CSRを少し違った捉え方をしているようです。日本を代表する企業団体のひとつである経済同友会のレポート(2010年)や、商工中金のリサーチ部門である商工総合研究所レポート(2012年)によると、経営者にとってのCSRの意味とは、第1位が「より良い商品・サービスを提供すること」、第2位が「法令を遵守し、倫理的行動を取ること」、第3位が「事業活動の過程で生じる環境負荷を軽減すること」となっています。特に興味深いのが1位の「より良い商品・サービスを提供すること」です。「会社は社会の公器」という考え方の強い日本企業にとって、日々のサービスや商品を提供することこそが社会貢献であり、その役割をすでに果たしているという考え方もかなり根強くあります。

このように、従来の日本企業が持つCSRに対する考え方を極端にシンプルに言ってしまうと、「お客様に役立つ製品とサービスを提供して利益を出し納税する。さらに社会貢献活動を行って利益の一部を社会に還元する。さらに出来る限り環境に配慮する。」だったかもしれません。日本企業で実際にCSRを担当されている方に状況をお聞きしても、CSR推進室の実務は、環境活動と社会貢献活動をまとめ、社長のメッセージを含めて「CSRレポート」を作成することだと答える方が数多くいます。さらに、そのCSR担当者の中で、社内の他部署から「CSR推進室は何をしているのかわからない」「会社に貢献しているのかわからない」と言われ、嘆いている方も少なくありません。

海外のCSRとサステナビリティ

ここで少し視野を広げて、海外の状況を見てみると、日本企業のCSRの捉え方とは違うものが発見できます。英語のWikipediaでCSRを調べてみると、「CSR is a form of corporate self-regulation integrated into a business model.(CSRとはビジネスモデルに統合された企業自身の自己抑制だ)」と書かれています。これは、社会・環境への価値追求と事業活動そのものを統合させ、さらにリスクマネジメントを徹底していくことを意味しています。このWikipediaページでは、更に高次元のCSRの形として、企業が与える社会・環境・経済面における長期的な影響価値そのものを高めていくことだという定義も紹介されています。そして、日本企業が捉えてきた「施し」としてのCSRでもなく、リスクマネジメントとしてのCSRでもなく、社会・環境・経済の3つの尺度から企業価値そのものを上げていくという意味でのCSRに今、海外の企業は取り組んでいます。その結果、現在、英語圏では、以前使われていたCSRやCorporate Citizenshipという言葉以上に、コーポレートサステナビリティ(Corporate Sustainability)という言葉が使われるようになってきています。

では、具体的にコーポレート・サステナビリティとはどのような取り組みを指すのでしょうか。コーポレート・サステナビリティを重視する企業では、環境・社会面の考慮と経済的リターンを相反するものとしてではなく、両立させるものだととらえています。そして、サステナビリティ担当者は、環境・社会のニーズを考慮することで新たなビジネスを創造して売上を伸ばす、省エネや廃棄物ゼロを通じてコストを削減する、働く環境を改善して採用コストを下げる、コミュニティに支持されることでサプライチェーンの安定化を図ることを通じて、社会・環境・経済の総価値を上げるという具体的な役割を担っています。そこには、サステナビリティ=企業の長期戦略という構図が見て取れます。実際に欧米のグローバル企業では、サステナビリティ部門に専門の役員が置かれ、CEOから強大な権限を付与されて全社に号令をかける役目を担っています。敢えて日本企業の言葉で表現すると、財務的数値目標だけでなく、環境・社会面の数値目標を追求する経営企画担当役員もしくは社長と言えるかもしれません。

コーポレート・サステナビリティを理解する上で、とても重要なコンセプトが2つあります。それは「長期的に考える」、そして「社会・環境への価値提供は財務リターンと矛盾しない」という考え方です。これまで市場関係者の中では、短期リターンを追求するため、企業に対してより短期間での情報開示を求める動きが盛んでした。年次決算だけではなく、半期決算を、さらには四半期決算を、という流れです。ところが最近、それに対する弊害が指摘されるようになりました。市場関係者も企業も「ショートターミズム(短期志向主義)」になるがゆえに、企業が長期的に継続することも、自然環境や社会と長期的に共存していくことを難しくし、結果長期的に財務リターンを減少させてしまうかもしれないというものです。今、EUでは四半期決算を継続するかどうかが議会で議論され、企業の中でも自ら四半期決算を止める動きも出てきています。一方で、企業経営者には、数十年先を見越した上で、環境や社会とどう向き合うのか、事業運営をどう継続させるのか、はたまた事業継続が本当に可能なのかに対する回答を投資家から求められるようになってきています。

もう一つのキーコンセプトは「社会・環境への価値提供は財務リターンと矛盾しない」です。長年「CSRはコストだ」と見なされてきた日本では、信じられない考え方もしれませんが、すでに欧米ではこのような考え方が普及してきています。このことを信じるのは、NGO関係者だけでなく、ここ数年の間に、企業経営者、さらには投資家の間にも浸透し、今では法律の法理のうえでも「社会・環境への価値提供は財務リターンと矛盾する」ことは否定され、このような考え方を保持すると、ともすると善管注意義務違反、受託者責任違反とまで言われかねない状況です。2011年にハーバードビジネススクールのマイケル・ポーター教授が唱えた “CSV: Creating Shared Value”という概念も、この考え方をなぞるものとなっています。

当然ながら、環境・社会・経済の面で企業価値を上げていくことは容易ではなく、この3つを同時に追求するためにはしっかりとした戦略的思考と実務能力が必要です。コーポレートサステナビリティを経営の根幹に据える企業は、社内の意思決定方法を変え、従業員の教育を行い、マネジメントの危機を乗り越えながら、よりよいコーポレート・サステナビリティを追求しています。Sustainable Japanは、そのようなベストプラクティスの事例やナレッジをご紹介します。

著者プロフィール

夫馬 賢治

株式会社ニューラル サステナビリティ研究所所長

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