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【TED】ESGと利益は両立する。サステナビリティ投資論。 2014/02/17 事例を見る

今回ご紹介するのは、TEDのサステナビリティに関する最新トーク、”The investment logic for sustainability(サステナビリティ投資論)”。TEDでは定期的にサステナビリティに関するプレゼン動画がアップされており、サステナビリティ分野における先駆者たちのプレゼンテーションから学べることは非常に多い。

今回のプレゼンターは、米国のボストンに本社を置く資産運用会社、State Street Global AdvisorsでESG投資部門のトップを務めているChris McKnett氏。McKnett氏の一番の主張は、ESGへの取り組みと利益の創出は決してトレードオフではなく、”compatible”(両立できる)な関係だという点だ。

同氏によれば、投資家は、投資判断をする際に財務要因だけではなくESG要因を含めることが重要だと言う。

動画の中では、その具体的な事例としてMSCI World(モルガン・ スタンレー・キャピタル・インターナショナル・ワールド)指数のチャートが挙げられている。グローバル大手企業500社のパフォーマンスと、気候変動戦略とリスクマネジメントにおいて優れた取り組みをしている企業のパフォーマンスを比較すると、8年以上に渡って後者のほうがパフォーマンスが良いというのだ。

McKnett氏も述べている通り、これはあくまで相関関係であって因果関係ではない(ESGへの取り組みが利益をもたらしているとは断定できない)が、少なくともESGへの取り組みにおいてリーダーシップを発揮することと利益を出すこととは矛盾しないということを示している。

また、McKnett氏の所属するState Street社では、自社システムのクラウド環境への移行や仮想化により年間で2,300万ドルのコスト削減と10万トン(自動車21,000台分)のCO2排出量削減に成功したという事例や、米国のコングロマリット企業Pentairが、10年前に自社のコアビジネスを電動工具から水ビジネスへと切り替えたという事例など、ESGへの取り組みが利益に直結した事例を挙げている。

中でも興味深いのは、資産運用の世界でもESG運用が進んでいる事例として挙げられている下記2つの年金基金だ。

  • Hesta(Health Employees Superannuation Trust Australia):オーストラリアの年金信託。運用額は220億ドル。
  • CalPERS:カルフォルニア州の職員退職年金基金:運用額は2440億ドルで全米2位、世界第6位の規模。

オーストラリアのエコファンドとして有名なHestaは、ESGがリスクとリターンにもたらす影響を非常に重視しており、ESG指標を投資プロセスの核に位置づけている。また、世界第6位の運用額を誇るカルフォルニアのCalPERSも、運用額の100%をサステナブル投資にあてている。

年金ファンドのように長期運用を前提とする資産運用の場合は、ESGパフォーマンスが高い銘柄を中心に構成するサステナビリティ投資との相性がより高いと言える。

McKnett氏によれば、今後のサステナビリティ分野の鍵を握るのは、こうした機関投資家だという。なぜなら、機関投資家は莫大な資産を持っているからだ。現在、グローバルでみると株式市場は55兆円、債権市場は78兆円あり、合わせて約133兆円の資産が運用されている。これは世界最大のGDPを誇るアメリカの経済規模の約8倍半にあたるとのことだ。

これらの莫大な資金がサステナビリティ分野への投資に向かっていき、積極的にESGに取り組む企業により潤沢な資金と利益が生まれる循環を作ることができれば、大きなインパクトをもたらせるはずだ。

動画内で紹介されている通り、今グローバルでは多くのCEOがサステナビリティへの取り組みを”important(重要なこと)”ではなく”crucial(決定的に重大なこと)”だと考え始めている。既に80%以上のCEOはサステナビリティがビジネスの成功をもたらすイノベーションの根源であり、競争優位につながると考えており、93%がESGは社会と自社の未来にとって重要だと考えている。

機関投資家や経営者の意識が変わり始めていることはサステナビリティ分野の将来にとって非常に明るい材料であり、日本企業も負けずにグローバルに広がる新たなチャンスを手にしたいところだ。

最後に、McKnett氏が動画の後半部分で紹介している米国35代大統領、John F. Kennedyの名言を紹介しておく。

“There are risks and costs to a program of action, but they are far less than the long-range risks and costs of comfortable inaction.(行動にはつねに危険や代償が伴うものだ。しかしそれらは、行動せずに楽を決めこんだときの長期的なリスクやコストと比較すれば、取るに足らないものだ。)”

【TED】Chris McKnett: The investment logic for sustainability
【企業サイト】State Street Global Advisors

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