Sustainable Japan QUICK ESG研究所

【イギリス】ユニリーバのCEOが語るサステナビリティへのコミットメント 2014/05/21 最新ニュース

本日ご紹介する動画は、ユニリーバのCEO、Paul Polman氏のインタビュー。こちらの動画は戦略コンサルティング会社、マッキンゼー・アンド・カンパニーのウェブサイト上にある季刊コラムコーナーに同氏が寄稿している「Business, society, and the future of capitalism(企業、社会、そして資本主義の未来)」という記事に関連したインタビュー動画だ。

本編のコラム記事では、同氏の企業やビジネスに対する考えや、ユニリーバがどのようにサステナビリティに取り組み、変革を実現してきたのかについての歴史が詳しく解説されており、非常に示唆に富む内容となっている。興味がある方はぜひインタビュー動画だけではなく本編のコラムも読んで頂きたいが、ここではインタビュー内容に沿いながらPaul氏の主張の中でも特にエッセンスとなる部分を中心にご紹介していく。

社会課題と企業の役割

Paul氏が冒頭で述べているように、現在社会課題となっている貧困や気候変動、食糧問題、森林破壊といった諸問題は、いずれも一晩で解決できるような問題ではなく、「10年プラン」のようなより長期的で構造的な解決策を必要としている。そしてこれらの諸問題はグローバル資本主義の進展とともにより顕在化、深刻化しつつあり、従来の資本主義モデル自体の修正が求められている。

同氏は、もしユニリーバのような企業がこうした社会課題に取り組まないとしたら、人々はその企業が将来も第一線で事業を展開していることを決して許してはくれないだろうと警鐘を鳴らしている。

ユニリーバのようにグローバル規模で自然資源やコミュニティの恩恵に預かりながらビジネスを拡大してきた企業にとって、社会のサステナビリティを高めることは自社のサステナビリティを高めることと同義であり、傍観者ではなく問題解決主体としてこれらの課題に取り組んでいく必要がある、というのが同氏の考えなのだ。

そしてそのためには、企業はより長期的な視点でビジネスに取り組んでいくことが求められる。しかし、今でこそサステナビリティの先進企業として知られるようになったユニリーバも、当初から長期的な視点を重視してビジネスに取り組めていたわけではなかった。それでは、同社はどのようにして今日に至るまでの変革を実現したのだろうか?

ユニリーバはどのように変わったのか?

Paul氏が2009年にユニリーバのCEOに就任してから最初に目を向けたのは、組織内部の変革だった。同氏がCEOに就任する以前、ユニリーバは10年間ほど業績が横ばいの状態が続いており、株主からの強いプレッシャーにさらされていた。株主からの業績向上要求に応えるために、同社ではITシステムや社員教育といった長期的に競争力をもたらすであろう分野への投資をあきらめ、短期的な業績向上を追求せざるをえない状況にあったという。

しかし、株主の短期的な要求に合わせて事業展開を継続している限り長期的な価値を作り出すことはできないと考えた同氏は、大きく下記4つの改革に取り組んだ。

  1. マインドセットの変革
  2. Unilever Sustainable Living Plan
  3. 四半期決算報告の廃止
  4. 報酬システムの変更

上記の改革により、ユニリーバはサステナビリティ先進企業へと大きく変貌することになる。ここではそれぞれのポイントについてインタビューの内容も踏まえて簡単にご紹介しておく。

1. マインドセットの変革

Paul氏が最初に取り組んだのは、従業員のマインドセットの変革だ。同氏はCEO就任時、総売上を2倍にすると宣言した。ユニリーバの従業員はこうした成長志向のメッセージを長い間聞いたことがなかったので、CEOによるこの大胆なコミットメントは組織が長きにわたる停滞期間を終えて「成長マインド」を取り戻す上でとても役立った。

2. Unilever Sustainable Living Plan

しかし、従業員の成長マインドを喚起するだけでは変革を実現するのは難しい。そこで同氏が次に取り組んだのは、掲げた目標を実現するための具体的な方法を示すことだ。成長を実現するためには、資源の利用方法を変え、より包括的な成長モデルを作り上げる必要があった。そこで生まれたのが、2010年に発表された”Unilever Sustainable Living Plan”である。

“Unilever Sustainable Living Plan”は、ビジネス規模を2倍にしながらも環境負荷を減らし、社会へのポジティブ・インパクトを増やすという大胆な計画で、10年後の2020年をターゲットに健康・衛生、環境負荷削減、経済発展の3分野で9つの目標が設定された。

たとえば、農産物由来の製品については100%持続可能な資源を使用するという明確な目標を立てた。この目標を実現するためにはサプライチェーンを変革する必要があり、当然ながら時間がかかる。それはある意味業界全体を変革するという作業に等しいからだ。

ユニリーバはこの計画を導入し、実現する方法を考え始めてから、よく考えれば変化を起こす方法は数多く存在していることを発見したという。たとえば同社はパッケージの削減によって工場におけるCO2排出量を70%削減することに成功したが、”Unilever Sustainable Living Plan”による意識向上がなければ、決してそれは実現できなかっただろうとPaul氏は語る。

同氏によれば、ユニリーバのような効率の高い経営をしている企業でさえもバリューチェーン全体から無駄をなくすことはできておらず、今でも製品の使用方法や再利用の方法について再考する機会は山のようにあるという。我々にとってみれば廃棄物でしかないものでも、他の産業にとってみれば貴重な資源となることもあり、そうして我々は循環型の経済を作り出すことができるという。

3. 四半期決算報告の廃止

“Unilever Sustainable Living Plan”を達成するためにはより長期的な視点でビジネスモデルを再構築する必要があると考えたPaul氏は、それまで行っていた四半期ベースの決算報告を廃止した。長期視点で計画を進めていくためには、株価を気にしながら次の四半期の業績を良くするためだけに働くという誘惑を組織の中から取り払う必要があったのだ。

この方針を発表したところ、人々はその方針を更に悪いニュースの前兆だと受け取り、ユニリーバの株価は8%も下がってしまった。しかしそれでもPaul氏は自身の考えを変えることはなかった。同氏は、長期的な視点で考えれば本来のパフォーマンスは必ず株価に反映されるというスタンスを貫いたのだ。

4. 報酬システムの変更

そして組織内部変革の最終ステップとして、報酬システムを長期目標に関わるインセンティブと紐づけた。この紐づけにより、ユニリーバは長期的な視点で持続可能な成長に焦点を絞るのだというメッセージを明確に示した。

このように、Paul氏はまず大胆な目標を提示して社員の意欲を喚起し、続いてそれを実現するための具体的な計画を用意し、さらに計画を実行するうえでボトルネックとなる要素を組織の力学から排除したことで、組織内部の変革を実行した。

長期視点はどのようなメリットをもたらしたか?

上記のような取り組みは、ユニリーバにどのようなメリットをもたらしたのだろうか。Paul氏が強調する一番のメリットは、サステナビリティへの取り組みにより従業員のエンゲージメントとモチベーションが劇的に高まったことだという。

同氏によれば、ユニリーバは金融業界ほどの高給を支払っているわけではないものの、この4、5年で従業員のエンゲージメントスコアは劇的に上昇したとのことで、ベンチマークしていた8,000社の企業と比較してもこれほどの上昇は見たことがないという。

従業員は暮らしに良い変化をもたらす仕事に関わっていることに誇りを感じており、これは明らかに目的志向型(Purpose-Driven)のビジネスモデルのおかげだとのことだ。

この変化によりユニリーバは組織内部からより多くのエネルギーを引き出すことに成功しており、従業員の変革への前向きな意欲が、単なる良い会社と偉大な会社との違いを生み出しているという。

また、同氏はより自社の活動の透明性を高めれば高めるほどステークホルダーやパートナー、バリューチェーンとの信頼関係を構築できると述べており、従業員だけではなくあらゆるステークホルダーのエンゲージメント強化につながる点にも言及している。

そして、同氏によれば長期志向型の成長モデルは決して短期業績の悪化や短期的利益への妥協を意味するものではないという。”Unilever Sustainable Living Plan”のような10年計画は、10年間は短期業績には目をつむるということではなく、計画の進捗報告の中で毎年ユニリーバがどれだけ前進したかを示すものだというのが同氏の考えだ。

株主の変化

長期的視点に立ったビジネスモデルへの変革は、ユニリーバのガバナンスにも変化をもたらし始めている。同社は四半期の業績報告を廃止して長期的利益重視の経営へと方針を切り替えたことで、同社の株主基盤は短期業績の変化による株価の上下で利益を稼ごうとする投資家から、より長期的な視点で自社の成長を支援してくれる投資家へと徐々にシフトしてきているというのだ。

ユニリーバのようなグローバル企業ともなれば異なる意志や目的を持った様々な株主が存在しており、それら全ての要望を応えようとすれば当然ながら経営のかじ取りは非常に難しくなる。しかし、マーケティングの世界ではターゲットとする消費者を絞り込むのが当然であるように、株主についても同じ原則を適用したらどうか?というのがPaul氏の提案だ。

より長期志向の投資家を惹きつければ惹きつけるほど、短期的な業績を必要以上に気にすることなく自社のサステナビリティ活動を推進しやすくなる。ユニリーバのように明確な経営方針を打ち出せば、株主構成すらも自社の目標達成に沿う形で最適化することができるのだ。

まとめ

インタビュー動画およびコラムの中で言及されているPaul氏の主張をまとめると、下記のようになる。

  • 社会課題の解決には長期の取り組みが必要
  • そして企業はその解決主体とならなければならない
  • そのためにユニリーバは長期志向のビジネスモデルへ転換した
  • 長期志向への転換は、短期業績については妥協するという意味ではない
  • 結果、従業員のエンゲージメントやモチベーションが劇的に向上した
  • 株主構成など、長期的な視点を重視したガバナンスへと変革されつつある

ユニリーバの優れた点は、長期志向のビジネスモデルへと転換するために、従業員のマインドセットだけではなく四半期業績報告の廃止、報酬システムとの紐づけなど会社のシステム自体に変革を加えることで長期計画を実行しやすい環境を整え、結果として従業員のモチベーション向上だけではなく、株主構成の変化などコーポレート・ガバナンスそのものを変革した点だ。

これらはPaul氏の強いコミットメントと実行力があってこそ成しうる変革ではあるが、組織内部の行動を決定づける要素がどこにあるのかをしっかりと見極めながら一つ一つボトルネックを取り除いていけば、ユニリーバのような大企業でも5年という短期間で大きく組織のガバナンスとビジネスモデルを転換できるという事実は、多くの企業や経営者が参考にできるはずだ。

同社の”Unilever Sustainable Living Plan”もまだ道半ばではあるものの、ぜひこうしたサステナビリティ先進企業の取り組みから成功のエッセンスを抽出し、自社の変革に活かしていきたいところだ。

【企業サイト】ユニリーバ
【参考サイト】マッキンゼー&カンパニー “Business, society, and the future of capitalism”

Facebookコメント (0)

ページ上部へ戻る