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【アメリカ】ナイキが語る「サステナビリティ」と「イノベーション」

今回ご紹介するのは、世界のサステナビリティ業界を代表するアドボカシーNGO、Ceresの25周年記念カンファレンスでの一幕。ナイキでCSO(最高サステナビリティ責任者)・イノベーション推進担当副社長を務めるHannah Jones氏へのインタビューだ。

ナイキというと1990年代に起こったNGOらによる不買運動を思い浮かべる方も多いかもしれないが、同社はその苦い経験をきっかけに積極的にサプライチェーン改善に取り組み、現在ではサステナビリティ先進企業として知られるようになった。

ナイキのサステナビリティを一手に担うのがHannah Jones氏だ。同氏は元々BBCラジオのソーシャル・アクション部門でレポーター、リサーチャーとしてキャリアをスタートし、その後に人種差別やAIDS・HIV 問題を扱うNGOを経て、コンサルタントとしてマイクロソフトのコミュニティ投資に携わった後、1998年にナイキに入社する。

ナイキでは中東・アフリカ地域におけるCSR担当役員として実績を積み重ね、現在では同社のサステナビリティ及びイノベーションを統括している。2009年にはWorld Economic ForumでYoung Global Leaderに選出されており、現在はCSR Europeの役員も務めているなど、ナイキのみならず世界のサステナビリティを牽引するリーダーの一人だ。

上記は非常に短いインタビューながら、ナイキのサステナビリティに対する考え方のエッセンスが詰まっている。ここでは、同氏が語るポイントを質問に合わせて簡潔にご紹介したい。

サステナビリティの向上に向けた動きがより早く、より広範に広まるためには、何が起こる必要があるか?

Jone氏は、サステナビリティの推進には下記に挙げる3つのレバーを引く必要があると主張する。

  1. Concept:サステナビリティを、企業のビジネスモデル、ガバナンス、経営陣の説明責任などの仕組みに統合するという考え方。ビジネスモデル構造の中でサステナビリティがしっかりと制度化されていることが重要。
  2. Advocacy:政策、サステナブル経済への移行、正しい基準に基づく正しいインセンティブの必要性に向けたアドボカシー。企業の声をはっきり届ける必要がある。
  3. Innovation:「サステナビリティ」とは「イノベーション」をただ異なる表現で言い換えたものに過ぎない。イノベーションによって、消費者、投資家、経営者を喜ばせる新たなソリューションを生み出し、未来に飛び込むことができる。

中でもJones氏が最も重点的に取り組んでいるのは3つ目のイノベーションだという。「サステナビリティ」とは「イノベーション」の言い換えに過ぎないという同氏の力強い言葉からは、ナイキがサステナビリティを新たなビジネスを創出する機会と捉えていることがよく分かる。

同社の核にあるのは「サステナブル・イノベーション」という考え方で、"We're making athletes faster, stronger and better - with less impact(我々は、より少ないインパクトで、アスリートをより早く、強く、よくする)”というコンセプトを掲げている。同社のサステナブル・イノベーションにおける取り組みはNIKE BETTER WORLDに紹介されている。

ナイキはどのようにサステナビリティを事業に統合しているのか?

サステナビリティを事業にどのように統合するかはどの企業にとっても重要な課題だが、Jones氏が挙げるポイントをまとめると、大きく下記の2つに絞ることができる。

  • 統合はトップから始まる
  • ガバナンス、評価、報酬といった仕組みを通じて組織に浸透させる

同氏は、サステナビリティと事業の統合はトップから始まると語る。統合はリーダーシープのある経営陣からの合図と共に始まり、ナイキの場合はCorporate Responsibility and Sustainability Committee of the Board(企業責任・サステナビリティ委員会)がその役割を果たしているという。そしてサステナビリティは成長戦略の一部へと落とし込まれ、各事業のオーナーシップや説明責任、業績評価、インセンティブなどの仕組みに浸透していくという。

トップのリーダーシップでサステナビリティの概念が導入され、それをガバナンス、制度、評価などを通じて企業の細部構造にシステムとして組み込まれることが重要だというのが同氏の考えだ。

ナイキはどのように目標をサステナビリティに関連づけているのか?

Jone氏は「自分の仕事の将来の価値は誰にも分からない」というサステナビリティ担当者にありがちな悩みに対し、「ほとんどのイノベーションもそれは同じだ」としたうえで、ナイキではサステナビリティの機能がイノベーションの機能と同様に推進されており、全てはステージゲート式で進んでいくと語る。

この話は「CSR=コスト」という考えに対する一つの反論としても有効だ。CSRに限らず、イノベーションを生み出すためのR&Dや、営業、マーケティング、採用など、企業活動の全ては必ずしも利益につながるとは限らない。どの取り組みにも失敗はつきものだし、やり方が悪ければ大きな損失につながることもある。CSR活動が利益につながるか、コストで終わるのかは「CSRそのもの」ではなく「どうやるか」にかかっているのだ。

また、同氏は短期・中期・長期の利益のバランスがとれた投資ポートフォリオを見つけ出す努力をしていると語り、サステナビリティはイノベーションと同様、あくまで「コスト」ではなく「投資」だという姿勢を強調する。

そして、同氏がナイキの一番の強みとして挙げるのが同社のカルチャーだ。ナイキにはもともとリスクを恐れないカルチャーが根付いており、イノベーションが同社の源泉となっている点を挙げている。

サステナビリティの推進に向けてナイキはどのようにサプライヤーと協働しているのか?

Jones氏によれば、ナイキはサステナビリティを推進するために、サプライヤーの数を減らすという明確な調達戦略を進めてきたという。サプライヤーを限定することで、ナイキとサプライヤー工場のトップ同士がサステナビリティ戦略について対話することができ、 良好な長期的関係を築くことができるという。

また、ナイキでは独自のバランス・スコアカードを作成しており、このスコアカードにはコスト・品質・納期という一般的な3項目に加えて、環境への影響、労働者の人権などのサステナビリティ項目が含まれているという。サプライヤーは独立した第三者機関の監査により評価され、その評価に基づく罰則やインセンティブが用意されているとのことだ。

ナイキのサプライチェーンにおける取り組みは、ウェブサイトでも閲覧可能だ。例えば同社はサプライチェーンの透明性向上・情報開示を目的としてManufacturing Mapで全世界のサプライヤーリストを公開している。

まとめ

上記インタビューから伝わってくるのは、ナイキのサステナビリティの根底にある「イノベーション」という考え方だ。

同社のサステナビリティ活動には、環境・社会面への負荷をできる限り減らしながら、アスリートを支えるより優れたプロダクトを作り出すというミッションが貫かれており、そのためのイノベーションこそがナイキのサステナビリティの源泉となっている。

同社にとっての「リスク」は、管理するべき「危機」であると同時にナイキをさらに前進させるための「機会」でもある。リスクを恐れないという同社のカルチャーが、結果として世の中をよりよくする革新的なソリューションを生み出しているのだ。

ナイキのサステナビリティへの取り組みはウェブサイト上にも非常にスタイリッシュにまとめられているので、ぜひ下記も参考にして頂きたい。

【企業サイト】Nike
【参考ページ】Nike Sustainable Business
【参考ページ】Nike CR Report
【参考サイト】Ceres

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