Sustainable Japan QUICK ESG研究所

【戦略】アジアCSRの最新事情 〜CSRアジアサミット2014参加レポート〜 2014/09/28 体系的に学ぶ

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2014年9月16日、17日、アジア地域で大きなネットワークを持つCSRコンサルティング会社・CSRアジアが香港で年次イベント「CSRアジアサミット2014」を開催、10周年となる今回のイベントには、アジア各国から事業会社、投資銀行、コンサルティング会社、NGOなど600人を超える参加者がアジアの20以上の国から集まりました。イベントでは、基調講演のほか24のテーマセッションが開催、会場となった香港のシャングリラ・ホテルにはところ狭しと人が往来する姿がありました。Sustainable Japanも今回のイベントに参加してきましたので、そこで議論されていた内容や、参加者の関心事などを踏まえ、アジア地域におけるCSRの「今」をお届けしたいと思います。

イベントの主催者であるCSRアジア、香港にグローバル拠点を置くCSRのリサーチ・コンサルティング会社で、10年前に3人のオーストラリア人によって設立されました。10年前と言えば日本でもCSRという言葉が環境経営という側面から始まった時とほぼ同時期です。その後、CSRアジアは、アジア地域のローカル企業や欧米資本企業のCSR戦略の構築を手がけ、今では中国、マレーシア、シンガポール、タイ、インドネシア、イギリス、日本に拠点を拡大しています。

今回のイベントで、参加者の関心を大きく集めていたように見えたのは、「サプライチェーン対応」「CSVと測定」「統合報告・GRI」「ESG投資」です。

サプライチェーン対応

サプライチェーンや生産現場改善というテーマには、ローカル事業会社、特にグローバルソーシングと英語では呼ばれている製造受託企業の参加者が大きな関心を持っている感じでした。中国、東南アジア、南アジアの地域は、グローバルサプライチェーンの中に組み込まれているところが多く、欧米企業が課す環境・労働規制の現状や対応方法についての関心が高いのかもしれません。サプライチェーンのセッションでは、H&Mやリーバイス、そして日本からも富士ゼロックスがアジア地域における労働環境の改善を共有していました。興味深かったのは、参加者の年齢層です。サプライチェーンの参加者には、欧米やオーストラリアなどからのNGO関係者の参加も多かったのですが、アジアのローカル事業会社からは若手の参加も目立ちました。従業員3,000人を誇る香港のグローバルソーシング企業の20代後半の女性参加者がいたので話を聞いてみると、「最近は社内でのCSRに関する関心が高まってる。ここで学んだものを社内に持ち帰って、すぐに業務に活かしたい。」と話してくれました。「こんなに若いのに自分たちだけで参加してるんですか?返ったら報告書とか書くんですか?」日本人的なこんな質問をしてみると、「別に若いのに会社を代表してるなんて変なことじゃないですよ(笑)。報告書って何ですか?そんなものはありません。自分たちの業務でしっかり活かしていいけばいいんじゃないですか?」との回答。ちなみに、このイベントの参加費用は一人8万円以上と決して安くはないのですが、香港の会社が若手に大きな権限と責任を与えている様子を垣間見ることもできました。

CSVと測定

このテーマも、コミュニティ投資が進むアジア地域ならではの関心事かもしれません。イベントの基調講演の中で、コカコーラ財団の理事長はコカコーラグループが”Me, We, the World”というコンセプトを作成し、水、女性支援、教育機会への投資の3つを事業活動に影響を与える重要テーマとして定め、この分野に特化したコミュニティ投資と測定を行っていることを紹介していました。測定のセッションには、事業会社だけでなく、NGOからの参加者も多く、NGOの活動においても「アウトカム(活動がもたらした効果)」を重視していこうという姿勢を伺うことができました。NGOの参加者側においても、アジア地域で活動をしている欧米・オーストラリア人と、アジア人の間にはまだ状況や関心の違いがあるようで、欧米・オーストラリア人がCSV・測定・SROIという概念をかなりキャッチアップしているのに比べ、ローカルNGOを運営する中国人参加者からは「最貧層や災害援助など最前線で活動をしている私たちからしたら、実際に必要なのは資金だ。企業の事業活動には影響の少ない分野なのかもしれないこの最前線に対し、企業はもっと理解を示し、資金提供をして欲しい」と切羽詰まった意見も出ていました。

NGO絡みの話以外では、スタンダード・チャータード銀行が自社の事業活動そのものをSROIで評価しレポーティングしているというプレゼンテーションもありました。彼はもともとCSRやサステナビリティ畑ではなく、資本市場部門の出身者であり、最初は何を測定していくべきか悩んだといいますが、リーマンショックで銀行が社会から大きな非難を浴びたのを機に、「バンカーとして自分の仕事に誇りが持てなくなっていた。銀行が社会に産みだしているプラスの効果とマイナスの効果を純粋に知りたいという欲求が自然と生まれてきたし、社内からも声が高まってきた。」と、SROI測定に大きな拍車がかかったことを吐露してくれました。同社にとってSROIの測定は、すでに一過性のものから毎年の事業戦略構築の中に組み込まれており、グループ経営においてすでに無くてはならない存在になっていると言います。

統合報告・GRI

日本でも徐々に関心が高まっている統合報告やGRIのG4についても、アジア企業は同様に、もしくは日本企業以上に関心を寄せています。アジア企業のCSR部門にとって、目下一番の悩みどころは「マテリアリティ特定」と言っても過言ではないかもしれません。レポーティングのワークショップでは、コンサルタントからマテリアリティ特定の業務フローが紹介されましたが、会場からは「ステークホルダーのうち、重要なものと、重要でないものを分けることは、考えとしてはわかるが、現実にはそんなことはできない」「株主のうち、少数株主の意見は重要でないと位置づけるということなのか?」と現場の難しさも率直に飛び出していました。講師役を担当したオーストラリアのコンサルティング会社Helikonia社からは、「実際にはマテリアリティ特定はサイエンスというよりアートな世界。機械的にマテリアルな(重要な)ステークホルダーやイシューを特定する方程式は存在しない。エンゲージメントで声を集めても、経営陣の判断で優先順位が変わることもあるし、そのような政治的な要素も大きく働く。様々なコミュニケーションを通じて柔軟に対応していくしかないし、今年はこのテーマ、来年はこのテーマというように、順番に対象のステークホルダーを変えていくことも可能だ」と回答していました。一般的にマテリアリティは年々変わるものではないとも言われていますが、他社との関係を重んじるアジア地域特有の環境では、柔軟なマテリアリティ特定が模索されているようです。

ESG投資

資本市場でのESG考慮をテーマとしたセッションも多くの参加者を集めていました。セッションには、クレディ・スイス、HSBC、BNPパリバ、Robecoといった世界有数の投資銀行や投資顧問企業がプレゼンターを務め、経済的リターンを追求する上でも非財務情報(ESG)の果たす役割の大きさが認識されてきており、投資先選定の上でESGがスクリーニング要素として取り入れられてきたという説明が各社からありました。一方で、会場から「アジアのローカルの金融機関はとてもとてもそんなことを考えている様子はないと感じる。」というアジア人参加者からの意見に対し、主催者であるCSRアジアからも「今回のセッションにも本当はアジアの金融機関に参加してほしくて参加依頼に尽力した。だが結果的にはどこも受けてくれず、欧米の金融機関だけが揃う形となってしまったのは残念だった。欧米とアジアの金融機関の間にはまだまだ考え方の開きが大きい。」と嘆きの声がありました。

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イベントに参加してみた総評として、アジアのローカル企業は、もちろん実行レベルには大きな差がありますが、CSRやサステナビリティに関する欧米の情報を熱心にキャッチアップしようとしていると感じました。実際に参加者は、主に英語メディアで欧米から流れてくる業界の専門用語を次々と口にしていました。Sustainable Japanでは、情報量の豊富な欧米のニュースを多く扱うことが従来どうしても多くなってしまっていたのですが、これからはアジア企業の取組も出来る限り取り上げていこうと考えています。

CSR Asia Summit 2014

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