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CSO(Chief Sustainability Officer:最高サステナビリティ責任者) 2014/12/18 辞書

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CSOとは?

CSOとは、Chief Sustainability Officerの頭文字で、日本語でいうと「最高サステナビリティ責任者」となります。

最近では日本にもだいぶ言葉が浸透してきていますが、一般的に外資系企業には組織全体のトップであるCEO(Chief Executive Officer:最高経営責任者)をはじめ、COO(Chief Operating Officer:最高業務執行責任者)、CFO(Chief Financial Officer:最高財務責任者)、CMO(Chief Marketing Officer:最高マーケティング責任者)、CIO(Chief Information Officer:最高情報責任者)など通称「CXO」と呼ばれる様々な部門トップ責任者が存在しています。

CSOはサステナビリティ部門を統括する責任者の称号で、企業のサステナビリティ戦略の中核を担う非常に重要な役割を持つポジションです。正確な呼称は業界や企業によっても異なり、例えば環境面における統括ポジションとしてCGO(Chief Green Officer)、CECO(Chief Environmental Commitment Officer)という称号を用いているケースもあります。

Harvard Business School(以下、HBS)が2014年8月に公表したワーキングペーパー”Chief Sustainability Officers: Who Are They and What Do They Do?”によれば、フルタイムで働くCSOを抱えている企業の数は1995年から2003年で2倍に増えており、2003年から2008年にかけては更に2倍になっているというGreen Bizの調査も紹介されています。CSOは今後もますます増加されることが予想されており、企業の事業戦略の中枢を担う人材としての重要性と期待が高まっていることが分かります。

CSOの役割

上記のHBSによる調査では、CSOの役割は企業がどこまでサステナビリティを自社の戦略に統合できているかのステージによって異なってくるとしています。HBSでは企業ステージを大きく下記の3段階に分けており、それぞれのステージにおけるCSOの役割を分析しています。

  • 第1段階:Compliance(コンプライアンス)
  • 第2段階:Efficiency(効率性)
  • 第3段階:Innovation(イノベーション)

それぞれの段階におけるCSOの役割を簡単にご紹介します。

第1段階:Compliance(コンプライアンス)

サステナビリティの領域において初期段階にある企業は、まず法規制をしっかり遵守した事業活動を展開するところから始まります。中には従業員の環境ボランティア活動プログラムなどを実施するケースもありますが、活動の多くは戦略的ではなく、またこの段階の企業は正式にCSOというポジションを設置していないケースがほとんどです。

第2段階:Efficiency(効率性)

次の段階に進むと、企業のサステナビリティ活動はより戦略的になり、エネルギーや水の利用量削減、CO2排出量削減、廃棄物削減などを通じてコスト削減を実現し、経営の効率性を高める活動へと移ります。これらの活動は目に見える形で企業の利益につながるため、CSOとしては推進しやすいミッションだと言えます。

この段階にある企業の多くは既に正式にCSOを設置しており、CSOはCEOとの協力のもと、企業のボトムラインを改善し、レピュテーションを向上させるための具体的な変化を生み出すことが求められます。

第3段階:Innovation(イノベーション)

もっとも先進的な段階にある企業は、既にサステナビリティが事業戦略の核に統合されており、経営戦略=サステナビリティ戦略となっているため、もはや「サステナビリティ戦略」という言葉自体が不適切な段階へと到達しています。サステナビリティは企業の競争優位の根幹であり、長期的な利益を生み出す源泉として考えられており、気候変動や水資源の枯渇といった大きな社会課題を視野に入れた事業計画が作られています。

この段階にある企業では、サステナビリティの責任はCEOからCSOへと委譲されており、CSOの最な重要な役割は、サステナビリティを統合した企業戦略を立案することにあります。また、この段階のCSOは更に自身の権限を各部門に委譲し、意思決定や機能づくりを各部門に委ねることで、全社としてサステナビリティに取り組む体制を構築することが求められます。

この段階にある企業の具体的な例としては、サステナビリティを製品開発・イノベーションにおける機会と捉えているNIKE社などが挙げられます。実際にNIKEの株価は過去15年間で上昇し続けており、2000年時と比較して現在の時価総額は5倍以上となっています。

上記のように、CSOの役割は企業のステージによって変化するものの、一貫して言えることは、企業の長期的価値を守り、高めていくうえで非常に重要な役割を果たしているという点です。

CSOの仕事内容

CSOの仕事内容については、グローバルコンサルティングファームのPricewaterhouseCoopers(以下、PwC)が2012年の10月に公表した”The Sustainability Executive: Profile and Progress”というCSOに関する調査報告書で興味深いデータを公開しています。

PwCがサステナビリティの分野で特に先進的な取り組みを展開しているグローバル企業25社のCSOを対象に実施した同調査では、CSOの業務への時間配分は下記のようになっていると示されています。

  • Core Business and Operations(事業オペレーションや製品・サービス、調達の改善など):19%
  • Internal Engagement(経営陣とのコミュニケーションや従業員エンゲージメント、組織内部への活動報告など):32%
  • External Engagement(外部ステークホルターの対応、活動報告など):21%
  • Developing Strategy(課題の特定・分析およびサステナビリティ戦略の立案):28%

上記を見ると、先進企業のCSOは幅広い業務の中でも特に組織内部へのエンゲージメントに最も多くの時間を割いていることが分かります。サステナビリティを経営戦略に統合するための経営陣とのコミュニケーションや、実際に戦略を実行する各事業部門や他部門への研修・エンゲージメントなどが重要な業務だと認識されていることが分かります。

CSOの人物像

CSOの人物像についても同じくPwCの報告書に調査結果が記載されており、その人物像をまとめると下記のようになっています。

  • CSOの出身部門:最も多いのは環境部門。次いで製品・事業部門、法務、マーケティング・コミュニケーション、広報と続く
  • CSOの出身会社:内部からの登用が外部からの登用の約3倍
  • CSOの性別:男性・女性がほぼ半々
  • CSOの平均勤続年数:13年

やはりCSOのバックボーンとして最も多いのは環境部門の出身者ですが、製品・事業、法務、マーケティングなど他にも様々な出身者がおり、企業によってCSOに対する期待の重きが置かれている領域が異なるという点や、CSOはより組織横断的な働きが求められるポジションだということが分かります。

また、多くは組織内部からの登用者で、平均勤続年数が13年という点も興味深いデータです。CSOは役割上、組織内外の様々なステークホルダーと連携する必要がありますが、特に組織内の他部門との連携は実際のサステナビリティ戦略を実行に移すうえで非常に重要となります。その意味で、社内に豊富なネットワークを有しており、他部門との調整能力が高い人物の適性が高いポジションとも言えるかもしれません。

CSOの組織構成上のポジション

PwCのレポートによれば、CSOの組織構成全体におけるポジションとしては、CEOからのレポートラインが2段階以内にあるケースがほとんどのようです。一般的には、CEOを中心とする経営幹部層によるサステナビリティ・アドバイザリー・ボードが設置されており、CSOはそのボードの直下に配置され、自身は部署横断で構成されたマネジメントチームを統括し、各部門の活動を管理するという形が多いようです。また、経営幹部層への活動状況のレポーティング頻度としては四半期毎に行っているケースが最も多くなっています。

CSOに求められる要素

それでは、CSOには具体的にどのような要件、素質が求められるのでしょうか?PwCのレポートには各先進企業のCSOからのコメントをまとめた11のポイントが記載されていますが、そのうちいくつかの項目を統合して更に絞り込んでまとめると、下記のようになります。

  • 自社の事業全体に対する深い理解
  • 強固な従業員エンゲージメント
  • 戦略的なビジョンとストーリー
  • コミュニケーションスキル
  • 情熱・忍耐、そして長期的な視点

まず前提となるのが、自社の事業全体、ビジネスモデルに対する深い理解です。それは、環境問題や社会問題といった外部環境を自社の事業に結びつけ、機会を見出す能力とも深く関係しています。また、CSOは自社のサステナビリティに関する様々なデータを基にして意思決定や戦略構築をしていく必要がありますが、そもそもどんなデータを測定するべきなのかといった視点は、事業に対する深い理解がないと得られません。

また、実際の戦略を実行し、成果につなげるにあたって重要なのは、やはり従業員の強いエンゲージメントを引き出す力です。そしてそのためには、具体的な行動意欲を喚起させるような戦略的なビジョンやストーリーの構築力、そしてそれをしっかりと伝えるコミュニケーションスキルが求められます。

そして、組織内外のステークホルダーとコミュニケーションをとるうえで重要なのは、ビジネス言語を話せるか、という点です。より具体的にいうなれば、その活動が具体的にどのように企業の利益や価値に結びついていくのかについて、相手と前提を共有できる力とも言えるでしょう。サステナビリティの重要性を理解していない他部門からの協力を引き出すためには、相手の立場に立ったコミュニケーションが求められます。

最後に挙げたのは、情熱、忍耐、そして長期的な視点です。サステナビリティ活動の多くはすぐに成果が上がるものもあれば、そうではなく長期的な視点に立って活動の成果を図る必要があるものも多くあります。短期的に見れば支出にしかなっていなくても、長期的に見れば現在はあくまで投資期間であり、将来的に大きな企業価値となり跳ね返ってくる取り組みも多いのです。しかし、そうした見通しを各ステークホルダーに説得してもらうのはそう簡単なことではありません。そこにはCSOとしての強い情熱、そして忍耐が求められます。

まとめ

ここまで読んで頂ければ分かる通り、CSOは非常に広範な役割と仕事内容、そして高いビジネススキルが求められるとても重要なポジションだということが分かります。

これらの情報を基にしてCSOを配置しているサステナビリティ先進企業のポイントをまとめると、下記3つが浮かび上がってきます。

  • 勤続年数が長く、社内ネットワークの豊富な人物をCSOに配置する
  • CSOは経営陣や従業員など組織内部のコミュニケーションに多くの時間を割く
  • 企業ステージによってCSOの組織における役割を進化させていく

下記にCSOに関する参考文献も掲載していますので、興味がある方はぜひチェックしてみてください。

参考文献

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