Sustainable Japan QUICK ESG研究所

【IT】Greenpeaceの巨大な影響力 〜Amazon, Appleがクリーンエネルギー推進へ転換〜 2014/12/22 事例を見る

cloud

急速に拡大するWEBサービス業界。最近ではソーシャルネットワーキングサービス、クラウドサービスが日常的に家庭やオフィスで活用されるようになってきました。次々と新たなWEBサービスが生まれる一方、サステナビリティの文脈でWEBサービスの事例が取り扱わることはあまり多くありませんでした。サステナビリティのニュースで大きく取り扱われてきたのは、原材料の安定供給に勤しむ食品業界、製造現場での人権問題対応に追われる製造業、スチュワードシップ・コードなどで関心が高まる金融業界。ステークホルダーとの価値媒体が「データ」となっているWEBサービス業界は、ESG(環境・社会・ガバナンス)のトレンドとはやや疎遠であるような印象がありました。しかし、いま、アメリカではこの状況が大きく変化しつつあります。

WEBサービス業界とサステナビリティ。この両者を結びつける火付け役を果たしたのは、国際NGOのGreenpeace。オランダ・アムステルダムに拠点を置くGreenpeaceは、環境保全・自然保護のために、時には過激とも思われる手法をも用いて行動をすることで知られており、日本でも2001年に捕鯨船をめぐるトラブルで有名になりました。今では、32ヶ国に拠点を置き、国やグローバル企業が無視できないほどの強大な影響力があります。数あるGreenpeaceの世界的キャンペーンの中で、彼らが2012年に開始したのがWEBサービス業界に対するネガティブキャンペーン、テーマはWEBサービス業界の事業の根幹である通信機器を動かすための電力エネルギーです。

2012年4月、Greenpeaceは”How clean is your cloud?“というレポートを発行、Amazon, Apple, Dell, Facebook, Google, HP, IBM, Microsoft, Oracle, Rackspace, Salesforce, Twitter, Yahooというアメリカを代表するWEBサービス会社14社の使用電力の環境配慮を独自評価し、成績の悪い企業に対する厳しい追及をスタートさせます。How-clean-is-your-cloud
(出所:Greenpeace “How clean is your cloud?”)

14社の使用電力のクリーン度合いを測る上で、Greenpeaceが用いた評価軸は以下の5つです。
1) 事業で使用する全電力の石炭火力発電及び原子力発電依存度
2) エネルギーに関する情報開示度
3) 事業所所在地選定におけるエネルギー要素考慮度
4) エネルギー効率と温室効果ガス排出量
5) 再生可能エネルギー投資額および政策提言度

結果、評価が低かったApple、Amazon、Microsoftに対し、Greenpeaceはネガティブキャンペーンを世界的に展開していきます。

ドイツではGreenpeaceのメンバーが、化石燃料をイメージした黒い風船を持ち、アップルストアに押しかけました。

ルクセンブルグでは同様に、煙をイメージした白い風船を掲げ、Amazonに警鐘を鳴らす広告を打ち出しました。

他にもオンライン上やリアルな場で、Greenpeaceは強烈なキャンペーンを展開していきました。

いち早く反応を示したのはApple。Greenpeaceのレポート発表直後からAppleとの議論の応酬が始まりました。まず、レポート発表の5日後、AppleがNew York Times紙を通じて反論、レポートが報じた同社の電力消費量が実際より多く試算されていること、また同社の新設データセンターでは再生可能エネルギープロジェクトを進めていることを強調します。しかし、Greenpeaceは同日、Appleのデータ開示の透明性が低いことや再生可能エネルギー割合を増やす努力が足りないことを理由に、キャンペーンを継続させる宣言をGreenpeaceのホームページ上で行います。その1か月後、ついにAppleはGreenpeaceの要求に沿うような形で、全米4ヶ所にあるデータセンター全ての電力を再生可能エネルギーで調達する方針を宣言します(Wired紙)。

その後もApple, Amazon, Microsoftに対するGreenpeaceの糾弾は約1年間続き、WEBサービス各社は対応を余儀なくされる状況へと移っていきました。再生可能エネルギーへのコミットメントを標榜したAppleは2013年3月、データセンターの電力調達を100%再生可能エネルギーで賄うための具体的なプランを公表(GreenpeaceのHP)。一方、Greenpeaceから悪くない評価を得ていたGoogleも再生可能エネルギーへのコミットメントを先手を打って高めていきます。2013年4月、Googleは、自社電力消費量の再生可能エネルギー割合を高めるため、100万USドルを投じて風力発電所と太陽光発電所を設置することを発表し、さらに電力調達元であるDuke Energy社に対して再生可能エネルギー割合を高めるよう要求することを公表します(GoogleのHP)。こうして、Greenpeaceによるレポート発表を契機に、アメリカのWEBサービス企業の再生可能エネルギーに対するコミットメントは大きく高まっていきました。

2014年10月には、Microsoftは、シーメンス社と共同で自社データセンターの付近でバイオガス発電所を設立する計画を発表(シーメンス社のHP)。そして、2014年11月。長らく沈黙を守ってきたAmazonもついに公式発表を行い、時期は言明しないながらもAmazonのクラウドサービス(AWS)の消費電力をグローバルで100%再生可能エネルギーで調達する方針を宣言しました(Environmental Leader)。その数日後の2014年12月に、Appleが自社で進める再生可能エネルギー発電の第三者監査を推進するため、最近創設された再生可能エネルギーの認証制度”Green-e®”に第1号企業として加盟することを決定するという報道もありました(3BL)。

2012年4月にGreenpeaceが仕掛けたクラウドサービスに対するネガティブキャンペーンは、当初はそのやや過激な手法から否定的な見解も表出しましたが、2年半経った今、Greenpeaceが掲げた方向性に業界全体が向かっていることが見て取れます。今日、グローバル展開するWEBサービス企業は、自社の施設内に再生可能エネルギー発電設備を整備するのはもちろんのこと、国ごとの再生可能エネルギー推進状況を考慮してデータセンターの設置国を検討したり、電力事業者に対して再生可能エネルギー発電割合を高める圧力をかけるにまで至っています。日本企業はこの流れを対岸の火事のように傍観してもいられません。今回は主にシリコンバレーのグローバル企業が標的となりましたが、日本企業が海外での事業拡大を狙うのであれば、当然Greenpeaceのターゲットリストの中に入ってくるということにもなります。再生可能エネルギーの発電コストが年々減少し、一方で化石燃料市場の価格が大きく変動する中、企業の長期的発展を勝ち取るのは、再生可能エネルギー投資を推し進めるシリコンバレーの企業なのか、はたまた電力供給を政府や電力事業者の方針に身を委ねる企業なのか。その答えは自明な気がしてなりません。

文:サステナビリティ研究所所長 夫馬賢治

Facebookコメント (0)

ページ上部へ戻る