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【国際】2014年の世界におけるサステナビリティを象徴する10の出来事 2015/01/12 最新ニュース

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ユニリーバやヒューレット・パッカード、PwCなど世界の名だたる企業のサステナビリティ担当顧問・アドバイザーを務め、環境経営戦略に関するベストセラー“Green to Gold”の共著者としても知られるAndrew Winston氏が、2014年のサステナビリティ業界を振り返って特に象徴的だった10の出来事をHarvard Business Reviewに寄稿している。

2014年はサステナビリティの世界でも本当に多くのニュースが飛び交ったが、その中でも今後の世界全体の動きを考えるうえで特に重要だと思われる出来事をWinston氏が包括してまとめてくれているので、各ポイントを簡単にご紹介したい。

1. 悪いニュース:気候変動は今、実際に起きている

2014年は気候変動の現状やリスクを科学的に分析したレポートが数多く公表されたが、Winston氏はIPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change:気候変動に関する政府間パネル)が発表した最新の第5次評価報告書統合報告書に加え、The American Association for the Advancement of Science(AAAS)のレポート”What we know”、米国内の気候変動の現状やリスクを業界別・地域別などにまとめたU.S. National Climate Assessmentのレポート、米国内の各地域における気候変動リスクを示し、既に米国の地域レベルでは気候変動が深刻な経済損失をもたらしていると警鐘を鳴らしたレポート、”Risky Business Report”などを紹介している。

中でもAAASのレポートが示している下記3つのポイントはとてもシンプルで分かりやすい。

  • 気候変動は今、地球上で実際に起こっている
  • 気候変動が不可逆的な負の影響をもたらすリスクは高い
  • 対策が早ければ早いほど、コストは少なくて済む

2. 良いニュース:気候変動対策のコストは大きく低下している

上記のように2014年は気候変動という現実を科学的な根拠とともに改めて突きつけられた年でもあったが、それと同時に気候変動対策に向けた明るい話題もいくつか提供された。Winston氏は良いニュースとして2つの分析報告書を紹介している。

1つ目は、グローバル企業のCEOや経済学者らがマクロ経済のレベルでクリーンエコノミーに移行する経済的合理性についてまとめた”New Climate Economy”レポートで、2つ目は、BSRやCDP、Ceres、WBCSDなど世界を代表するサステナビリティ推進機関らによる共同プロジェクト、We Mean Businessが公表したレポート”The Climate Has Changed”だ。

両者とも再生可能エネルギーの利用やエネルギー効率化など低炭素社会に向けた投資が結果としてコスト削減および利益創出につながり、事業上の価値をもたらすことを明らかにしている。

さらに、Winston氏はWe Mean Businessから派生したプロジェクトRE100 Group(2020年までに再生可能エネルギー100%を目指すプロジェクト)において、Philips、Mars、Nestle、IKEAなど世界の名だたる大企業が再生可能エネルギーへの完全シフトにコミットした事例などを紹介している。

これらの事例が示す通り、既に世界では気候変動対策は「コスト」ではなく「利益」を生み出す新たな機会だという認識が一般化しつつある。再生可能エネルギーへの投資はもちろん、最近ではIoT(Internet of Things)やビッグデータ分析など最先端テクノロジーを活用したエネルギー効率化プロジェクトなども増えつつあり、ITとサステナビリティの融合も著しい。気候変動対策は業界の垣根を超えたビッグビジネスとなりつつあるのだ。

3. 電力・エネルギー業界が変わってきた

上記のような流れを受けて早急にビジネスの転換を迫られているのが電力・エネルギー業界だ。Winston氏は5月にバークレイズ銀行が米国の電力業界の債券格付けを下げたというニュースや、ドイツの電力大手、E.Onが化石燃料から再生可能エネルギーへのシフトを発表した事例などを挙げている。

今や化石燃料に依存した事業を展開している企業は投資家からリスクと認識されつつあり、化石燃料銘柄を除いたインデックスなども生まれつつある。(※参考記事:【国際】MSCI社、化石燃料銘柄を除いた新インデックスを発表

4. 炭素税のような厳しい規制の実現可能性が高まってきた

気候変動に対する企業のインセンティブを高めるうえでは、自主的な取り組みだけではなく規制による後押しも有効だ。
Winston氏は、その一例としてサステナビリティ分野で多大な影響力を持つアドボカシーNGOのCeresの取り組みを挙げており、Ceresのグループの中でも特に積極的に炭素税などのより厳しい規制の導入を推進しているBICEPが、General MillsやKellogg、Nestleなどの企業を新たに加盟団体に迎えたニュースを紹介している。(※関連記事:【アメリカ】General Mills、Ceresの気候変動に関する政策提言グループBICEPに加盟」

5. 気候変動に対する社会的な機運が盛り上がっている

政府や企業らの動きに加え、市民らによるソーシャル・アクションも活発化しつつある。9月には米国ニューヨークで、気候変動に対する国際的な行動を呼びかける”Climate March”が実施され、世界162ヶ国で2646のイベントが開催される過去最大規模のムーブメントとなった。

6. サステナビリティ戦略やミッションが短期志向より優位に立ちつつある

変化の波は企業経営の現場にも確実にやってきている。グローバル企業の多くがサステナビリティを経営戦略・事業戦略に統合し、長期的な競争優位を実現しようと積極的に取り組んでいる。そうした動きの象徴としてWinston氏が取り上げているのが、CVSとAppleの事例だ。

米国大手ドラッグストアチェーンのCVS は9月に名称をCVS Healthに変更し、店頭からタバコを取り除いた。タバコが生み出す利益よりも消費者の健康や生活を重視した優れた決断として取り上げられた。

また、3月にはAppleのCEOとして有名なTim Cook氏が株主総会でAppleの環境を重視した経営姿勢を批判した株主に対して自社の株を手放すように糾弾し、話題になったことも記憶に新しい。

CVS HealthやAppleだけでなく、既に多くの企業は短期志向を乗り越えて長期的視点に立った経営戦略へのシフトを進めており、投資家らもSRIを通じてその流れを積極的に後押ししている。今後もこの流れは更に加速していくはずだ。

7. 競争から協働へ

様々なサステナビリティ課題に対し、企業が「競争」するのではなく「協働」することで競争力を失うことなく成果を挙げるといった事例も増えてきている。Winston氏がその事例として挙げているのが、米国小売大手2社、WalmartとTargetによる取り組みだ。

両社は9月にPersonal Care Products Sustainability Summitを共同で主催し、自社のバリューチェーン上におけるパーソナル・ケア製品から、健康に害を及ぼす可能性がある化学物質などを取り除くために協働することを発表した。

両社とも消費者からのよりサステナブルな製品に対するニーズが高まってきていることを受け、競合企業という立場を乗り越えて一つのテーブルで議論することを決めたのだ。バリューチェーン全体のサステナビリティを推進するのは1企業の力だけでは難しい。今後もこうした競合企業同士の協働プロジェクトはさらに増えていきそうだ。

8. 食の浪費への関心が高まりつつある

2050年には人口が90億人に到達すると予想されている中、食糧問題は深刻なサステナビリティ課題の一つだ。しかし現実は理想とは程遠く、今も世界では大量の食料品が消費されることもなく毎日廃棄されている。Winston氏が紹介しているUN’s Food and Agriculture Organizationの推定によれば、世界では年間 1.3億トンの食料品が廃棄されており、7500億ドルのコストに相当するという。食料品の30~40%を廃棄している現在の状況はとてもサステナブルとは言えない。

しかし、こうした問題に取り組む新たな動きも出始めつつある。Winston氏はその優れた一例としてフランスの大手スーパーマーケットチェーン、Intermarcheの取り組みを紹介している。同社は7月に、見た目が美しくない点を理由に廃棄されてしまうフルーツや野菜を、ジュースや30%オフとして販売するキャンペーンを展開し、見事に成功を収めた。

こうした廃棄の問題は食料品だけにとどまらない。例えばSustainable Brandsは昨年末に、IoT(Internet of Things)の進化により更にElectronic Waste(電子廃棄物)が増える懸念があるという記事を紹介している。

こうした廃棄物を活用して製品をつくり、新たな付加価値をつけて販売するアップサイクルやエシカルプロダクツなども最近はトレンドの一つとなりつつあるが、食に限らず、いかに「浪費を減らすか」という点は企業・個人を問わず今後も重要なテーマであり続けるだろう。

9. 10代の若者が飲料メーカーの行動を変えた

ソーシャルメディアの普及などを通じて、消費者がかつてないほどにパワーを持ち始めているのも昨今のトレンドだ。消費者からの圧力が企業の行動を変えた事例としてWinston氏が紹介しているのが、5月にニューヨーク・タイムズ紙で取り上げられた、ある10代の若者によるCoca ColaとPepsiに対するキャンペーンだ。

ミシシッピ出身の10代女性、Sarah Kavanagh氏はChange.orgというソーシャルキャンペーン・プラットフォームを活用して数年間をかけて20万もの署名を集め、Coca Cola、Pepsiという世界を代表する飲料メーカーに対し、同社らが販売する清涼飲料などから健康に害を及ぼす恐れがある成分の使用を止めるように働きかけ、見事キャンペーンの成功を勝ち取った。

今や、消費者は、企業自体はもちろん製品の一つ一つに対しても高い透明性を求めるようになってきており、企業は「この製品は何でできているのか」「どこから来ているのか」といった質問に対して一点の曇りもなく説明できることが求められている。

10. 格差への戦いが新たな企業の流れを生みつつある

Winston氏が最後に挙げているのが、格差の解消に向けた企業の自主的な取り組みだ。
同氏は、アパレル大手のGAPが2月に最低時給を9ドルに上げると発表し、6月には家具大手のIKEAが最低賃金を17%引き上げると発表するなど、従業員の生活を第一に考えて法規制よりも先に自主的にアクションを起こす企業が増えてきた点を指摘している。

現在、米国では国内の所得格差が非常に問題視されており、10月にはFRBが「米国では上位5%の富裕層が全体の63%の資産を保有しており、金融危機以降で格差は拡大の一途を辿っている」として警鐘を鳴らした。

また、格差問題は米国だけにとどまらず世界全体でも問題視されており、12月にはOECDが「格差が経済成長を阻害する」という報告書を公表したばかりだ。格差が拡大すれば社会、経済は不安定な状況に陥り、対応コストも増加して結果として持続可能な経済成長モデルの実現が難しくなる。

こうした大きな問題に各企業がどのように対応していくのか、現在OECDが進めているグローバル大企業によるタックスヘイブンを活用した租税回避の動きに対する国際的な規制作りなども含め、富の配分に対する問題は2015年も引き続きホットトピックの一つとなりそうだ。

まとめ

いかがだろうか。こうして振り返ってみると、2014年は世界全体がサステナビリティの向上に向けてさらに大きく前進したことがよく分かる。迫りくる気候変動の危機などを考えれば現在の変化スピードは決して十分とは言えないものの、政府、企業、NGO、市民など各セクターにおいて確実に世界の潮流が変わり始めていることを感じとることができるのではないだろうか?

2015年はどのような企業、人物がサステナビリティの世界に明るい話題をもたらすのか、この1年の動きに期待したい。時間のある方はぜひ下記からWinston氏の記事の詳細を読んで頂きたい。

【参考サイト】Harvard Business Review “The 10 Most Important Sustainable Business Stories from 2014”
【参考サイト】Andrew Winston

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