Sustainable Japan QUICK ESG研究所

【エネルギー】太陽熱発電の技術の進歩と普及の可能性 2015/04/01 体系的に学ぶ

Concentrated solar power

太陽光発電と太陽熱発電

太陽エネルギーを利用した発電方法には前回の太陽光発電の他に太陽熱発電があります。両者ともに太陽のエネルギーを利用する点は同じですが、太陽電池が太陽光の波動を利用して電力を得るのに対し、本太陽熱発電は、太陽光の熱を利用し蒸気を発生させ、他の大部分の発電方法と同様にタービンを回転させることにより電力を得ます。太陽光のエネルギーを熱として利用する点が太陽光発電との主な異なる点です。本太陽熱発電は今後の成長が期待され、積極的に投資されている分野でもあります。

太陽熱の集光利用

太陽熱のエネルギー自体は、発電機以前にも熱源として利用されてきました。現在でも電力へのアクセスのない国や地域(オフグリッド)において、ペットボトルなどを利用し、貯蓄した水が熱を受けることによって、太陽熱を用いて直接的に水を温水に変換するシステムは実用されています。

しかし、一般的に太陽光をそのまま受けた状態では、水を温めてお湯として使うなどの比較的少ないエネルギーで利用することは可能ですが、工業的な用途を始めとした多くの用途としては、エネルギー密度が低く、実用的ではありません。このため十分なエネルギーを得るには、太陽光を集光しエネルギーを集約させる必要があります。例えば虫眼鏡で太陽光を集光させ、紙をを燃やすことが出来ることと根本的な原理は同じです。

基本的な技術

太陽熱発電の基本的な構造は、太陽光を集める集約部分とタービンを回転させ電力を得る発電部分、熱を貯める蓄熱部分に大別されます。

集光技術のタイプ

効率よく太陽光を集めるには、集光に利用する構造とその物質の最適化が必要となります。太陽光や電波は共に直進する波動の性質を持つため、太陽熱を集める構造は電波を集めるアンテナと形状が類似しています。集光には鏡面加工された反射鏡を利用します。集光構造はいくつかのタイプに分けられます。Figure.1に概要図を示します。

Type-of-csp
Figure. 1 主な太陽熱発電施設のタイプ (a) トラフ型 (b) フレネル型 (c) タワー型 (ビームダウン型も類似した形状) (d) ディッシュ型 (NEDOエネルギー白書より)

1) トラフ・パラボラ型 
2) リニア・フレネル型
3) タワー型・ビームダウン型
4) ディッシュ型

それぞれ長所短所があります。それぞれ高温限界や土地利用率が異なり、用途によっても使い分ける必要があります。現在まではトラフ・パラボラ型が主流です。この方式は半円状のミラーを利用して光を集光するタイプです。ミラーの構造が比較的容易であるため製造コストが安いという特徴があります。しかし、他の方法と比較した際に、集光できる太陽光の量が限られるため、集光した太陽熱は比較的低温に限定され、結果として発電効率が低くなります。これに対し、リニア・フレネル型は土地利用率という、単位土地面積に対する発電量が高いため、設置場所が狭くても、高い電力量を得られる点があげられます。しかし曲面構造上、製造コストが高くつく傾向があります。製造コストなどの低下に伴い、今後他の方法の開発に注目が集まっていくと考えられます。

上記の横長の集光構造に対し、タワー型は多数のミラーを同心円状に並べ、中心のタワーへ向け太陽光を集光します。より多くのミラーを利用し発電を行うため発電効率は高くなりますが、「ヘリオスタット」と呼ばれる、鏡の向きを調整することにより集光するシステム、またはその鏡を含むシステムを用いてミラーの角度を調整する構造が必要となるため、高度な技術とランニングコストを要します。ビームダウン型はタワー型と同様に多数のミラーを用いて集熱を行うため、高い効率が得られます。タワー型・ビームダウン型は様々な利点があることから、今後の成長が望まれる方式です。
ディッシュ型は名前のように皿型をした集光設備で、アンテナの形状をしています。ディッシュ型の利点は、形状が比較的シンプルなため製造コストが低い点があげられます。しかし一つ一つのディッシュからの発電量は大きくないため、商業利用には直列に接続して発電量を向上させる必要があります。

発電技術

太陽熱発電では、火力発電や水力発電、風力発電などの主な発電システムと同様に、タービンを回転させることにより電力を得ます。太陽熱発電における現在までの主流は蒸気タービン式です。蒸気タービン式は、文字通り蒸気を発生させ、その蒸気でタービンを回転させる方式です。この方式の利点は、構造が比較的簡単であること、大動力を得られることにあり、主に火力発電で用いられているタービン方式です。欠点としては、水蒸気が水で構成されていることから、タービンの回転に利用した水蒸気を回収するために再度水蒸気を液体に戻すための冷却が必要となるため、冷却に必要な冷却水を設置しなければいけない点が挙げられます。

これに対し、高温空気タービン式という方法も開発が進められています。高温空気タービン方式では空気に高圧をかけることにより圧縮された空気を利用してタービンを回転させるため、水蒸気タービン式に必要な水を必要とせず、主に強い太陽光が得られる地域で使われています。また、水が不足している地帯にも設置可能できるという大きな利点も含んでいます。

蓄熱技術

太陽熱発電は太陽のエネルギーを利用しているため、太陽光が得られない時間帯には発電が出来ません。また、太陽熱発電は日射量の変動により発電電力が安定しないため、安定した電気の供給という社会ニーズに応えるためには、太陽熱発電単体での利用は難しくなります。発電量を安定させるために、太陽熱発電の変動に合わせて燃料を用いたボイラと接続するハイブリッド型も実現しています。しかしながら、燃料を用いた発電方法では、火力発電と根本的に変わらないため、持続可能性を高めるためにも、日光が強い際に集めた熱を貯めておく、「蓄熱技術」の向上が求められています。

現在実用化されている蓄熱システムは、プラスイオンとマイナスイオンからなる物質が液体状になる「融解塩」を用いた繊熱蓄熱システムです。一般的に塩(エン)は冷めづらく、熱を蓄えるには適している物質です。

このシステムは以下の3つに大別されます。
1) 直接二層式
2) 間接二層式
3) サーモクライン式

直接二層式は、融解塩を利用し直接熱媒を保存するものです。この方式は、高温タンクと低音タンクの2つのタンクで構成され、主にタワー型に用いられています。間接二層式では二種類のタンクを利用する点は直接二層式と同様ですが、融解塩などの蓄熱材とは異なる材料を熱媒として利用している点が異なります。この方式は構造の関係で比較的コストが高くなりますが、安全面で直接二層式よりも優れており、トラフ型への利用が望まれています。サーモクライン式は、単層の融解塩に熱を蓄熱する方式です。サーモクラインは水温が急激に変化する層を指します。熱の性質により、高温部と低温部がグラデーション(または段階式)のように勾配がつく性質を利用しています。高温部の熱が利用された後に、冷えた熱媒体は低温部へ保存されます。この方式は他の二層式に比べ、タンクが単層で済むことからコストを抑えることが出来ます。

太陽熱発電の世界の分布

世界で太陽熱発電を利用している主な地域は日射量に大きく依存しています。Figure.2に世界の日射量のマップを示します。
annual-isolation
Figure.2 世界の年間日射量, (energyinformative.orgよりinformation based on Meteonorm)

太陽光を利用している関係で必然的に日差しが強い赤道に近い領域の国が主要地域となります。すなわち、サンベルト地帯と呼ばれる、アフリカ北部、中東、アメリカ合衆国北緯37度以南に広がる日照量の多い地域です。また装置の構造上、湿気や砂嵐が少ない領域が好まれます。さらに発電には蒸気タービンを利用している方式の場合は、降水や湿度などの水分の有無も重要となります。

主な最新の実用事例

太陽熱発電は近年の実装例が増えてきています。特に2010年代に入ってからが顕著です。

イタリア

サンベルト地帯に位置するイタリアは、太陽熱発電に積極的に投資・開発を行っています。例えば、トラフ型集光装置と融解塩を利用した太陽熱発電施設がシチリアにおいて2013年頃より稼働しています。2020年までには石油による発電と発電価格で競争できるよう目標を掲げ、技術の向上に取り組んでいます。

スペイン

イタリア同様日射量が多く、太陽の国とも呼ばれるスペインにおいても、太陽熱発電は積極的に導入されています。2011年にスペインのセビリアに完成したGemasolar集光型太陽熱発電所は、ヘリオスタットを使ったタワー型の発電施設です。

アラブ首長国連邦

アラブ首長国連邦は砂漠地帯に近いこともあり日射量が豊富な地域です。アブダビでは、フレネル式の太陽熱発電施設が2013年より稼動しています。産油国が太陽光・太陽熱を利用した発電方法を発達させることは、エネルギー開発・政策の可能性を広げ、エネルギーの在り方を根底から見直す可能性を秘めています。

アメリカ

カリフォルニアは同様にサンベルト地帯に位置し、太陽熱に恵まれています。カリフォルニア州に位置するモハーベ砂漠ではタワー型の太陽熱発電施設があります。数十億ドルの費用を伴う開発には、Google等も出資しています。広大な土地に数十万枚のヘリオスタットを設置し、集光を行っています。

日本における太陽熱発電

上記各国で実用化されている太陽熱発電設備には、千代田化工建設、三鷹光器、日立造船、三井造船など日本企業の製品が導入されてきた実績がありますしかしながら、日本国内の太陽熱発電の状況は、サンベルト地帯と比較すると多湿で比較的日差しが弱く、太陽熱発電に向いている土地が極めて限られています。また、十分な発電量を得るには現段階では施設の大規模化が不可欠であるため、国土の狭い日本では利用が難しいという事情もあります。今後さらに集光技術の向上や、湿気に強い設備の構造が開発されれば、日本において太陽熱発電が普及する可能性は高まっていくと考えられます。

最新技術と今後の課題

他の再生可能エネルギーと同様、全体的な低コスト化、高効率化が重要となることに加え、特に蓄熱システムやタービン耐久性などの高性能化が望まれています。

蓄熱材料の改良の分野では、いくつかの代替方式が開発段階にあります。コンクリートを熱媒とした蓄熱技術では、熱媒に蓄熱量の高いコンクリートの固体物質を利用することにより、液体よりも管理がしやすくなることにより、メンテナンスコストなどを下げる方法です。その他にも化学反応を用いた蓄熱方法などもあります。化学反応は蓄熱密度が高くなる傾向にあり、蓄熱素材としての高い可能性を秘めています。

太陽光発電と太陽熱発電の将来的な相違

太陽光発電と太陽熱発電は共に太陽のエネルギーを利用していますが、それぞれ特徴が異なっています。このため将来的な発展の方向性も大きく異なっていくことが予想されます。太陽光発電は材料や構造の違いで、大きく性能が変化します。材料によっては比較的小さい規模でも電力を得ることが容易であるため、小型化もひとつの成長方向であると考えられます。

太陽光と太陽熱を同時に利用した方法として「ハイブリッドソーラー」タイプの設備も近年注目を集めています。この方法は例えば家庭用太陽光発電パネルを給湯設備と組み合わせることにより、太陽光による発電と太陽熱による水温の上昇を利用しています。しかしこの方法では太陽熱のエネルギーは利用しているものの、太陽熱による発電は行っていません。

太陽熱発電は、数百度の高温を必要とする点や比較的装置が大規模になる傾向あることから、家庭用などの小規模な発電設備には向きませんが、変換効率が比較的高くなる傾向にことから、タワー型・ビームダウン型太陽熱発電を利用した大規模施設には大きな期待が寄せられています。

※本シリーズは持続可能エネルギーの基本的な技術と今後の展望を、科学的な知識が無い場合にも極力分かりやすい解説を心がけています。独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構「NEDO再生可能エネルギー技術白書」や各国の持続可能エネルギー政策ページをベースに、各技術や現状に親しみがわき、身近に感じられるよう心がけています。

著者プロフィール

篠原 肇

株式会社ニューラル サステナビリティ研究所研究員 ケンブリッジ大学

Facebookコメント (0)

ページ上部へ戻る