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【アメリカ】全米学術協会、大学による昨今のサステナビリティ推進ブームを批判

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 学者や市民らによる学術振興ネットワークのNational Association of Scholars(全米学術協会、以下NAS)は3月25日、米国の各大学で展開されているサステナビリティ推進のムーブメントに警鐘を鳴らす報告書を発表した。大学らのサステナビリティへの熱心な取り組みが高等教育にもたらす弊害について分析している。

 「Sustainability: Higher Education’s New Fundamentalism(サステナビリティ―高等教育の新たな原理主義)」と題した260ページにわたる同報告書では、昨今のサステナビリティブームは大学のカリキュラムを歪め、重要な問題に関する自由な議論の妨げとなっていると指摘している。また、大学の授業料や学生の借金が増える一方で、大学側はサステナビリティを推進するプログラムに巨額の資金を費やしていると批判している。

 同報告書は、サステナビリティブームがいかに大学内における気候変動に対する自由で合理的な議論を妨げているかについて説明しており、学生と教員に対して物事への深い考察の代わりに盲従を求めているとして「American College and University Presidents’ Climate Commitment(全米大学学長らによる気候変動コミットメント」に署名している685校の大学を批判している。

 米国の大学では既にサステナビリティをテーマにしたプログラムが1400以上も提供されているほか、サステナビリティ教育は心理学や数学といった一見無縁そうな科目も含めた大学全般のカリキュラムに広がっているという。NASの会長を務めるPeter Wood氏は、「高等教育とリベラルアーツ教育をサステナビリティの推進に利用することは、それらの教育の本来の目的を大きく損なってしまう。サステナビリティは他の分野をサステナビリティ推進のための単なる道具として扱っている」と指摘した。

 また、同報告書は各大学が掲げるサステナビリティ目標に対しても苦言を呈しており、年間500万米ドルをサステナビリティ推進に費やしているバーモント州のミドルベリー大学を例に取り、しばしばサステナビリティ関連プログラムによる支出がコスト削減を上回っていると指摘している。Wood氏は「大学はサステナビリティプログラムによる支出報告の透明性が全く無いにも関わらず、それらの投資がコスト削減につながっているとよく宣言する」と付け加えた。

 さらに、報告書では各大学の運用基金の間で広がっている化石燃料銘柄から資金を引き揚げる昨今のトレンドについても警鐘を鳴らしている。同報告書を共著したRachelle Peterson氏は「この運動は無益だ。株を売却したところで、化石燃料関連企業にも環境にも何の影響も生まないだろう。この運動の目的は、サステナビリティという大義名分のために学生を集めることだ」と語った。

 NASが主張する通り、気候変動といった昨今のグローバル課題を学術的な視点から検証することもないまま盲目的に受け入れてしまうことは、健全な批判精神や探求精神を育成する妨げとなる。また、化石燃料銘柄からの資金引き揚げについても、本当に低炭素経済への移行を実現したいのであれば、投資を止めるのではなく、引き続き株主として働きかけを行うほうが効果的だと考える投資家も多い。

 そうした様々な意見を自由に議論できる環境を用意せず、単に学生の集客を目的としてサステナビリティへの取り組みを強調することは、大学教育の危機につながるというNASの指摘は一考に値する。

【報告書ダウンロード】Sustainability: Higher Education’s New Fundamentalism
【団体サイト】National Association of Scholars

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