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【国際】「気候変動は人々の健康を50年分後戻りさせる」有力医学誌Lancetが警鐘

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 世界で最も質が高い医学誌の1つであるThe Lancetで、気候変動が人々の健康に与える影響に関する注目すべき論文が発表されている。Lancetとロンドン大学ユニバーシティ・カレッジ(UCL)の共同研究組織、Commission on Health and Climate Change(健康と気候変動に関する委員会)によるものだ。同論文は、気候変動は食糧危機や伝染病の流行などを引き起こし、人類の過去半世紀に渡る長寿化や健康面の進歩を台無しにする可能性があると警鐘を鳴らしている。

 英ガーディアン紙(6月23日)によると、UCLインスティチュート・オブ・グローバル・ヘルス理事長兼同委員会の共同委員長Anthony Costello教授は「気候変動は主要な健康問題だが、政策的議論においては無視されてきた」「(世界平均気温)4℃上昇は避けたい。健康と生存に非常に危険で悲惨な影響を及ぼし、半世紀に亘る健康の進歩を後戻りさせる脅威を突きつける。今すぐ、そして今後10年間のアクションで2℃未満に抑えなければすべてが崩壊してしまうかもしれない」と語っている。

 平均気温上昇を2℃未満に抑えるためには、今世紀末までのCO2排出量を2兆9000億トン(2900ギガトン/GtCO)未満に維持する必要がある。現在のペースで行くと、今後15年~30年の間には2900GtCO2を越えると予測されており、今世紀末には平均気温上昇が(地域ごとの増幅やインパクトの違いはあるが)2.6℃から4.8℃になる見込みだ。

 委員会は、低炭素経済と健康・貧困問題の改善は財政やテクノロジーではなく政治的な意志決定の問題だとして、各国政府に対して5年以内に加速すべき10項目の政策提言を行っている。その一部を以下に挙げる。

  • 気候変動と公衆衛生のリサーチへの出資
  • 気候変動に弾力的に対処できるような財政的裏付けの拡大。特に低・中所得国での健康への影響を減少させるようなシステムの強化
  • 心臓・呼吸系の健康を守るためのエネルギーミックスからの石炭の迅速な排除
  • 個人と地球が健康・健全であるようなライフスタイル転換の支援・促進
  • 説得力があり予測可能な国際標準の(排出量取引制度、炭素税導入などの)炭素価格メカニズム

 気候変動は暴風雨・熱波・洪水・干ばつ等を引き起こし、伝染病・心臓病等の疾患、そして食糧難や飢饉の増加に繋がる。また大気汚染はぜんそく・肺がん等の原因となる。同委員会が特に注目しているのは深刻な大気汚染による死亡者が増加していることだ。英テレグラフ紙(2014年1月7日)は中国での死亡者を年間35万人~50万人と報道している。

 一方、炭素排出量の削減により、大気汚染による早過ぎる死を2030年に年間50万人、2050年に130万人、2050年に130万人、2100年に220万人削減できるという試算があるという。汚染が激しい中国とインドで効果が顕著になると見られる。

 医療や健康関連分野の専門家らは化石燃料への社会的依存に終止符を打つためのリーダーになるべきで、そのためには強力かつ堅固な利権にも対峙するようにと進言している。

 我々自身も身近なところからの変革が必要だ。エネルギーの節約、健康的なライフスタイルへのシフト、ヘルシーでサステナブルな食事等が気候変動から健康を守るのに大きく役立つ。同論文は12月にパリで開催される国連気候変動サミットでも注目を集めそうだ。

【論文ダウンロード】The Lancet Commissions Health and climate change: policy responses to protect public health
【参照記事】Scientific American Global Warming Could Undo 50 Years of Health Gains
【参照記事】The guardian Climate change threatens 50 years of progress in global health, study says
【参照記事】The Telegraph China's 'airpocalypse' kills 350,000 to 500,000 each year

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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