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【国際】OECD、租税回避第1回会合を開催。具体的な各国間ルール調整の検討開始

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 OECD(経済協力開発機構)租税委員会は6月30日、租税回避の問題を議論するため「第1回包摂的枠組み会合」を京都で開催、79ヶ国・地域が参加した。先進国が加盟するOECDの加盟国は現在34ヶ国だが、今回はBEPS(税源浸食と利益移転)というタックスヘイブン問題について関心がある国に幅広く参加を呼びかけた。すでに、OECDが主導する「BEPS包摂的枠組み」には85ヶ国・地域が参加しており、京都会合には枠組み未参加の21ヶ国も会合には参加した。「包摂的枠組み会合」では、OECD加盟国、非加盟国が対等に議論する場として位置づけられており、タックスヘイブン問題についての包括的なルール整備を目指している。パナマ文書事件でも世間の耳目を集めたタックスヘイブン問題について、国際会議での議論が本格化してきた。

 パスカル・サンタマンOECD租税センター局長は、2つの主要な論点を強調した。1つめは、企業の実態の有無を明確にするため受益権所有者の登記強化とその情報を国家間で共有する仕組みを進展させる必要性について。もうひとつは、これまで登記から除外されてきた投資信託の受益権所有者についても、企業と同様の登記および国家間の情報の共有が必要だというもの。租税回避問題の国際的な専門家である同氏は、効果的な管理体制を構築して租税回避および腐敗と闘うには、警察と税務調査官が必要に応じてアクセスできるように、企業の所有者の登記を徹底し、精査することに加え、投資信託についても、背後に誰がいるのか発見することが可能でなければならないことを強調した。

 投資信託は特に不透明で問題点が多いと言われている。信託という形態が腐敗行為を隠蔽したり資金洗浄をしやすくする側面があるということがその理由だ。しかし、信託には各国の法制上、受益権所有者の登記は必要なく、特にオフショア地域では人気がある。投資信託の受益権所有者を登記によって明確化する考え方については、英国政府を中心に反対意見も多い。英国では、中央政府では租税回避に向けた検討が進んではいるが、中央政府の管轄権の及ばない英国王室属領(マン島とチャネル諸島)や、一定の自治が認められている英国海外領土(ケイマン諸島、ジブラルタル、ヴァージン諸島など)では、タックスヘイブンを政策的に推進してきた背景があり、租税回避防止対策に対する反対が根強い。

 OECD租税委員会は、2012年6月から租税回避問題を扱う「BEPSプロジェクト」を開始し、2015年10月に「BEPSパッケージ」と呼ばれる報告書まとめ、租税回避に係る15項目について、各国が遵守すべきミニマムスタンダードと実施が望まれるベストプラクティスを勧告している。京都会合では、アルゼンチン、キュラソー島、ジョージア、韓国、ウルグアイの5ヶ国・地域が、BEPSプロジェクトの国別報告書の自動的交換に関するマルチの当局間合意(CbC MCAA)に署名、署名国の総数は44となった。CbC MCAAは、税務当局が多国籍企業グループ(MNEs)の取引の全体像を把握するため、全ての署名国が情報の機密性を確保しつつ国別の報告書を自動的に交換することを可能とするもの。CbC MCAAには日本も署名しているが、米国は署名していない。

 京都会合では、さらに、移転価格や利子控除等、BEPSパッケージの実現に向けた実務的な基準策定作業に着手。まずは、BEPSパッケージでミニマムスタンダードを定めた有害税制、租税条約の濫用、国別報告書、紛争解決メカニズムの4項目から検討を始した。

【参照ページ】First meeting of the new inclusive framework to tackle Base Erosion and Profit Shifting marks a new era in international tax co-operation
【参照ページ】Tax reform expert calls for register of owners of corporate trusts

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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