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【インドネシア】裁判所、熱帯雨林火災で企業過失を認定。パーム油企業に巨額の賠償命令

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 インドネシアの南ジャカルタ地方裁判所は8月11日、インドネシア中央政府がインドネシアのパーム油生産上場企業Sampoerna Agro社の子会社であるPT National Sago Prima(NSP)を2014年にスマトラ島で発生した熱帯雨林火災の責任があると訴えていた裁判で、インドネシア中央政府の勝訴の判決を下した。地裁はNSP社に対して、1兆ルピア(約77億円)の損害賠償支払いを命じた。

 インドネシアはここ数年、乾季になる度に大規模な熱帯雨林火災に見舞われている。背景には、パーム油や木材の栽培を目的とした違法な焼畑農林業があると言われている。また、作地確保のため湿地帯を脱水し土地を乾燥されていることも要因になっている。特に、エルニーニョ現象の影響を受け乾季が長引いた2015年の秋に発生した火災は非常に大規模な者で、米国バーモント州より広範囲の熱帯雨林が焼失、50万人以上が煙霧による疾病に苦しみ、燃焼による9月と10月の2ヶ月間の二酸化炭素排出量は同時期のEU全域での排出量を上回るものとなった。世界銀行は経済被害を160億米ドル(約1兆6,300億円)と見積もっている。

 インドネシアでは熱帯雨林火災の責任を企業に追及する動きが相次いでいるが、実際には司法当局の判断は揺れている。2015年9月にインドネシア最高裁判所は、Tripa泥炭湿地帯での熱帯雨林火災の責任がパーム油生産のPT Kallista Alam社にあるとし2,600米ドル(約26億円)の損害賠償を命じる判決を下した。この最高裁判決は、インドネシアで熱帯雨林火災の責任を企業に認める画期的な判決となった。しかしその後の今年1月、南スマトラのパレンバン地方裁判所は木材生産のPT Bumi Mekar Hijau社が訴えられた同様のケースで、熱帯雨林火災は原告が言うほどの環境被害はもたらしていないという判決を下し、環境団体等から大きな反発を生んでいた。インドネシア政府の環境林業省は判決を不服としその後控訴をしている。1999年のインドネシア森林法は、自社管理地の火災に対して企業には予防・管理義務があると定めているが、熱帯雨林火災の直接の原因が企業にあったことを立証することは極めて難しく、判断が別れる大きな要因となっている。今回の事案となったスマトラ島火災でも、環境林業省は15社の関与を指摘していたが、現地のリアウ州警察は事件は解決済と片付けようとしていたが、市民からの猛反発を受けたジョコ大統領の判断で裁判の道が開けた。

 今回の南ジャカルタ地裁の判決は、パレンバン地裁判決とは異なり、NSP者に対して消火設備の不備過失があったことを認定し、甚大な環境被害の責任があると判断した。消火設備の不備は、コスト削減に走る産業界全体で常態化している。さらに、火災によって利益率の低い草木を敢えて焼却し、さらにその焼却を損害として保険会社から焼却した草木価額以上の保険金を請求することも一般化していると言われている。しかしながら、南ジャカルタ地裁の判事3人のうち一人は当該熱帯雨林火災は純粋な自然災害だとしており、判事の間でも意見は割れた。NSP社は控訴する構え。

 インドネシアで発生する熱帯雨林火災から発生する煙霧は国際的な問題になってきている。2015年の大規模火災は、シンガポールやマレーシアにも頻繁に煙霧をもたらし、一時フィリピンにまで到達した。

【参照ページ】Company ordered to pay record $76m over fires in Sumatra

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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