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【国際】ヒューマン・トラフィッキングへの関与は食品飲料業界が最多。RepRiskが特別報告書

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 ESGリスクコンサルティング世界大手スイスのRepRiskは9月28日、ヒューマン・トラフィッキング(人身取引)実態に関する報告書「RepRisk Special Report: Human trafficking」を発表した。同社は、企業がサプライチェーン上で関与してしまっている人権問題についての分析開示を進めており、今回の報告書は今年4月に発表された「RepRisk Special Report: Forced Labor」に続く第2弾。

【参考】食品、建設、アパレル企業は奴隷労働との関連性強い。RepRisk特別報告書(2016年5月9日)

 ヒューマン・トラフィッキングという言葉は日本ではまだ耳慣れないが、欧米の人権分野では近年頻出している概念。日本政府はヒューマン・トラフィッキングを「人身取引」と和訳しており、この和訳からは、人身売買や奴隷貿易、誘拐ビジネスなどを想起させるが、国際的な定義はそれより遥かに幅広く、人をモノとして扱うような行為を「ヒューマン・トラフィッキング」と呼称している。最も広く浸透している定義は、国際組織犯罪防止条約の「人身取引(ヒューマン・トラフィッキング)」に関する議定書が定義している「搾取することを目的とし、力による脅迫、誘拐、強要、詐欺、偽装行為、脆弱な立場にある人に対する権力の乱用、金銭等の便益授受を手段とした、人材の獲得、輸送、引渡、隔離、引受」。このような行為は、途上国での農村や漁場での組織的関与が見られる他、日本でも外国人研修制度を悪用しパスポートなどを会社で管理するなど強制労働の問題が指摘されている。国際労働機関(ILO)の統計によると、現在ヒューマン・トラフィッキング状態にある人口は世界で約2,100万人もいる。

 RepRiskは、環境・社会・ガバナンス(ESG)に関する企業情報を独自に収集しデータベース化しており、すでに世界75,000社と18,000プロジェクトのデータが集まっている。今回はこのデータベースを活用し、ヒューマン・トラフィッキングの関与度が高い業界と国を分析した。世界的にヒューマン・トラフィッキングへの関与が多い業界としては順に、食品・飲料業界、消費財業界、人材斡旋等のビジネスサービス業界、旅行・レジャー業界、建設・資源業界。食品・飲料業界で最も関与度の高い企業には、ワースト2位に米ウォルマート、ワースト3位にネスレの名前も上がった。また、関与度の高い国としては、食品・飲料業界では米国やタイ、消費財業界ではマルタ、アルゼンチン、インド、ビジネスサービス業界では米国やカンボジアが挙げられた。

 ヒューマン・トラフィッキングに関するESG課題に関する分析では、トップに人権侵害への共謀罪リスクが挙げられており、それ以外には劣悪な労働環境、強制労働、児童労働、詐欺が挙げられた。また、この分野に強いNGOとしては、 American Civil Liberties Union、National Center for Missing and Exploited Children、Change.org、Coalition Against Trafficking in Women、ヒューマンウォッチがトップ5として挙げられた。

 強制動労(Forced Labor)やヒューマン・トラフィッキングは、日本の大手企業で積極的に関与しているところはないと思うが、海外のサプライチェーン上や、国内でも外国人研修制度を利用している企業などで発生している可能性がある。また、日本企業の海外進出に伴い、ヒューマン・トラフィッキング問題に巻き込まれるリスクも増えていく。とりわけ、最もヒューマン・トラフィッキングが発生しているのは米国であり、意外なところで関与してしまっていることもある。近年は、企業にサプライチェーン上の責任も追及される傾向があることから、これらの現状については十分にケアする必要がある。海外出張時の接待や慰労会などでも間接的に関与していないかどうか十分に注意していきたい。

【参照ページ】RepRisk releases Special Report on Human trafficking
【報告書】RepRisk Special Report: Human trafficking

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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