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【南アフリカ】キングレポートの最新版「キングⅣ」発表。企業に具体的な結果を求める内容に進化 2016/11/13 最新ニュース

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 南アフリカ取締役協会(IoDSA)と同協会が組成したキング委員会(King Committee)は11月1日、「コーポレート・ガバナンスに関するキングレポート」を改訂し、第4版となる「キングⅣ」を発表した。キングレポートは、今では世界的な動きとなった統合報告書という概念を世界で最初に謳ったものとして知られている。キングⅣでは、統合報告の運用を改善するとともに、機関投資家に対する規定も加えられた。

 キングレポートの初版が制定されたのは1994年で、背景にはその3年前に英国で発表されたキャドバリーレポートがあった。当時英国ではコーポレート・ガバナンスのあり方を見直す動きが始まっており、1991年5月に英国の財務報告評議会、ロンドン証券取引所および職業会計士団体によってエイドリアン・キャドバリー卿を委員長とするキャドバリー委員会が設置。1992年12月に「コーポレート・ガバナンスの財務的側面」、通称キャドバリーレポートが発表され、英国の上場会社が遵守すべき最初の行動規範が定められた。この動きが南アフリカに波及する。南アフリカでも同様に、同国でのコーポレート・ガバナンスのあり方を見直す動きが始まり、マービン・キング判事(元南アフリカ最高裁判所判事)を委員長とするキング委員会が1993年7月に立ち上がり、1994年に初版のキングレポートが発表された。キングレポートはその後、第2版のキングⅡが2002年に、キングⅢが2009年に発表されてきた。

 キングレポートは、前回キングⅢで統合報告に関する内容を世界で初めて謳ったことが世界の大きな注目を浴びた。キングレポートは当初はコーポレート・ガバナンスのあるべき姿について内容をまとめることをミッションとしていたが、キングⅡでは、コーポレート・ガバナンスの一環として、従来のアニュアルレポートの提出だけでなく、サステナビリティレポートの提出も行うようという内容を盛り込んだ。そして、キングⅢでは、組織運営には戦略、リスク、業績、サステナビリティが一体不可分であるという認識のもと、アニュアルレポートとサステナビリティレポートを統合させた「統合報告」を発行するべきだとする内容をまとめた。この内容は、南アフリカの主要証券取引所であるヨハネスブルグ証券取引所(JSE)の上場規則として採用され、同証券取引所の上場企業は2010年からキングⅢに基づく統合報告書の提出が世界で初めて義務付けられた。その後キングⅢは、国際統合報告評議会(IIRC)が2013年に発行した「国際統合報告フレームワーク」にも反映され、統合報告の世界的な先駆的事例となっている。

 今回改訂されたキングⅣでの変更点はいくつかある。まず、原則数の変更。キングⅣで規定された原則は全部で17で、キングⅢでは75あった原則が、キングⅣでは16に縮減、そして新たに機関投資家に対しての原則17「機関投資家の理事会は、良いガバナンスと投資先企業の価値創造を促進するために、組織によって責任投資が実施されていることを確認すべきだ」が加えられた。この原則17を含め、今回のキングⅣは全般的に、コーポレート・ガバナンスのあるべき姿として、手続き的な側面だけでなく、組織の価値構造という結果を求めるという従来より踏み込んだ内容になっている。このようなインパクト重視の姿勢から、遵守方法についても、キングⅢの「Apply or Explain(適用せよ、さもなければ説明せよ)」から、キングⅣでは「Apply and Explain(適用し、さらに説明せよ)」に変更された。

 この「Apply and Explain」ルールによって、キング委員会はキングレポート適用の質の向上を目指すとしている。キングⅣでは、各原則ごとに推奨行動が示されているが、具体的にどのような行動を実施するかは各組織に委ねられている。一方で、「Apply and Explain」ルールのもとで、各組織にはどのような行動を選択したかを明らかにする必要が生じるため、これにより透明性の確保を図る。そうすることで、各組織が、原則を実施しているか否か、さらには組織が倫理的組織文化の構築、持続可能な手法を用いた事業運営、経営コントロールの有効性、合法性という4つの結果を伴っているかどうかを、開示内容から企業のステークホルダー自身が判断し、意思決定に活かしていけるようにする。

 また、キングⅣには、企業や経営体制に対して株主がエンゲージメントすることを意図とした、賃金格差、役員報酬の方針と履行に関する議決権行使についても重要事項として盛り込まれた。その他、キングⅢまでは企業のガバナンスを主に念頭に置きレポートが作成されていたが、キングⅣでは政府、NGOなど幅広い組織のガバナンスでも活用できるようにするため、用語が修正された。また、組織形態や組織規模を問わずあらゆる組織に対しての行動規範となるよう、中小企業、NPO、退職年金基金、国営企業、地方自治体の5分野に向けたガイダンスも加えられた。

 キングレポートの適用企業は、2017年4月1日以降の会計年度からキングⅣを適用しなければならない。が、キング委員会はそのときを待たずに即時適用することを推奨している。

【参照ページ】Governance in SA gets major update
【レポート】King IV(キングⅣ)

株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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