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【マカオ】政府、ALPS処理水海洋放出に反発し10都県からの生鮮食品輸入禁止。香港も続くか

【マカオ】政府、ALPS処理水海洋放出に反発し10都県からの生鮮食品輸入禁止。香港も続くか 1

 中国のマカオ特別行政区政府(民政総署)は8月22日、8月24日から日本の10都県からの生鮮食品の一部に対する輸入禁止措置を発動すると発表した。日本政府が同日、廃炉・汚染水・処理水対策関係閣僚等会議で、ALPS処理水の海洋放出を気象条件等に基づき8月24日にも開始することを決定したことに反発した。香港特別行政区政府も続く見通し。

 今回民政総署が輸出禁止を発出した対象は、福島県、千葉県、栃木県、茨城県、群馬県、宮城県、新潟県、長野県、埼玉県、東京都の合計10都県からの、野菜、果物、牛乳・乳製品、水産物およびその派生品、食肉・食肉加工製品、鶏卵等を含む生鮮食品、動物性食品、海塩・海藻。放射性物質汚染リスクが高いと説明した。

 民政総署は今回、2023年以降、輸入と小売の双方で、日本からの輸入食品の放射性物質の監視を強化していることを明らかにした。輸入時には、税関で、サンプル23,137点の検査を実施し、放射性核種検査のために約160サンプルを採取。異常は確認されなかったという。小売では、主に、コメ、海苔、茶葉、スナック菓子等の包装済み食品等、日本の他地域から輸入され、検査・点検の対象となっていない非主食用食品を対象に実施される。

 今回の閣議決定に先立ち、岸田文雄首相は8月21日、西村康稔経済産業相ともに、首相官邸で、JF全漁連(全国漁業協同組合連合会)の正副会長及び関係漁連会長・漁協組合長との面談を急遽実施。JF全漁連からは、以下を伝えていた。

  • 漁業者・国民の理解を得られないALPS処理水の海洋放出に反対であることはいささかも変わるものではない
  • 科学的な安全性への理解は深まってきたが、科学的に安全だからといって風評被害がなくなるわけではない
  • ALPS処理水の海洋放出は廃炉作業のプロセスの一つに過ぎず、最後の一滴の放出を見届けるまで、漁業者の受け止めは予断を許さない
  • 子々孫々まで安心して漁業できるよう、漁業者に寄り添い、今後数十年の長期にわたろうとも国の全責任において必要な対策を講じ続けることを強く求める

 これに対し、岸田首相は、「廃炉完遂まで漁業者のなりわい継続に取り組むこと、国が全責任をもって必要な対策を講じ続けること、フォローアップ体制構築と水産予算とは別に必要な予算措置に政府全体として責任をもって対応すること」について約束したという。

 JF全漁連は2021年、当時の菅義偉首相に対し、5項目の対応を求めていた。

  • 漁業者・国民への説明:全国の漁業者をはじめ多くの国民から海洋放出反対の意見が出されてきた中で、国として、なぜ海洋放出の方針決定を行ったのか、漁業者・国民に責任をもって説明することを求める。
  • 風評被害への対応:海洋放出の方針決定により当面生じる風評被害と、将来、実際に海洋放出が行われた場合に生じる風評被害に、国の責任においてどのように対処するのか、明確に示すことを求める。
  • アルプス処理水の安全性の担保:海洋放出されるアルプス処理水の安全性を、どのように国内外に説明し、担保していくのか、国の責任において具体的かつ明確に示すことを求める。
  • 漁業者の経営継続:福島県ならびに近隣被災県の漁業者、そして全国の漁業者が安心して子々孫々まで漁業が継続できるための方策を、国の責任として明確に示すことを求める。
  • 継続保管等の継続的検討:半減期効果を念頭に置いた敷地内における更なるタンク増設による保管継続や新たな処理・保管方法等の検討など、あらゆる可能性について国の責任で継続的に検討・実施していくことを求める。

 経済産業省資源エネルギー庁は1月、「ALPS処理水の海洋放出に伴う影響を乗り越えるための漁業者支援事業」を発表し、風評被害にあった漁業事業者に対する支援を開始。公募期間は1月19日から2月7日に設定された。支援事業の規模は500億円。支援金は、海洋放出決定もしくは実際の放出の後、当該時期以降の連続する6ヶ月間のうち、任意の3ヶ月間の合計売上もしくは組合員数が、当該時期以前の同期3ヶ月と比較して3%以上減少している場合に、人件費、燃油代、魚箱代、飼料代等に対して一定の割合が支払われる。JF全漁連は、同事業を、要請した5項目の1つにすぎないと見方を示している。

 ALPS処理水の海洋放出に関し、東京電力ホールディングスは、日本政府の方針に基づく形で、海底トンネルを通じ沿岸から1km沖合に放出する。放出する処理水は、浄化処理、希釈処理を行い、安全に関する国の規制基準等を遵守した水とする。

 具体的には2段階で浄化・希釈する。まず、第1段階では、トリチウム以外の放射性物質の濃度について、環境へ放出する際の規制基準値を確実に下回るまで浄化を実施。希釈放出前に、ALPS処理水中の放射性物質(トリチウム、62種類の放射性物質、炭素14)の濃度を測定・評価し、第三者による確認を得る。次に、第2段階でトリチウムの処理を行う。トリチウムは、大量の海水(100倍以上)で希釈することで、その濃度を環境へ放出する際の規制基準値(60,000Bq/l)の40分の1となる1,500Bq/l未満にする。

【参照ページ】Response to Japan’s announcement of launch of discharge of Fukushima nuclear-contaminated water into the ocean
【参照ページ】廃炉・汚染水・処理水対策関係閣僚等会議(第6回)
【参照ページ】ALPS処理水の取り扱いについて岸田総理大臣と面談
【参照ページ】令和4年度「ALPS処理水の海洋放出に伴う影響を乗り越えるための漁業者支援事業」に係る補助事業者の公募について

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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