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【北米コラム】「化石燃料お断り」 2014/10/10 ESGコラム

fossil-fuels

 昨年(2014年)9月、米国ニューヨークでは国連気候変動首脳会議(気候変動サミット)にオバマ米大統領を始めとする120カ国の首脳が出席し、2015年末の国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)に向けて各国の様々な取り組みが発表された。

 この会議を翌日に控えた9月22日日曜日には、マンハッタンのセントラルパーク沿いの8th Avenueを40万人に及ぶとみられる人々が「People’s Climate March」に参加し、世界の首脳へ気候変動対策への取り組みをアピールした。

People’s Climate March
(出所)http://peoplesclimate.org/lineup/

 一方、同じ日に民間、個人、地方自治体などによる連合は同じくニューヨークで、化石燃料に対する計500億ドル(約6兆4円)以上の投資撤退を宣言した。この連合には資産規模8億6千万ドル(約1兆円)を保有するロックフェラー・ブラザーズ財団(Rockefeller Brothers Fund)が含まれており、化石燃料との関わりを可能な限り減らし、また環境悪影響を及ぼすエネルギー源である石炭灰とオイルサンドへのすべての投資を止めると発表した。(「Fund Announces Plans to Divest from Fossil Fuels」)

 1900年代初頭に石油産業で莫大な財を成したジョン・ロックフェラーの5人の息子たちが設立した同ファンドは、持続可能な世界を支援するというミッションを掲げる。2010年には投資の10%を持続可能な開発向けに指定し、クリーンテック関連事業に投資を開始したが、気象変動を防止するという命題を追求するために、今回は最も炭素排出量の多い石炭とオイルサンドへの投資から撤退することとしたという。その他の化石燃料関連の投資も今後見直す方針を表明している。ロックフェラーが創始したスタンダード・オイル(Standard Oil)の後身である米エクソンモービル(ExxonMobil)は、このセクターの大手であり、今回の発表は「石油王一族」による「脱化石燃料宣言」であるだけに話題となった。

 日を同じくして、米国最大級の都市である、ロサンゼルス、ヒューストン、そしてフィラデルフィアの3市長が温室効果ガスの削減対策を考える全米市長気候運動アジェンダの発足を発表し、他の都市の参加を呼びかけた。

 一方、ジョン・ロックフェラーと同じ頃に鉄道王として活躍したリーランド・スタンフォードが創立したスタンフォード大学も、今年5月に大学基金の脱石炭宣言をした。スタンフォード大学は、化石燃料への投資をやめるよう働きかける学生運動フォッシル・フリー・スタンフォードの圧力に応じる形で石炭関係の企業への直接投資を禁止するルールを採用した。フォッシル・フリー・スタンフォードは、教職員・学生・卒業生から支持を呼びかけ、学部生の78%もが脱化石燃料を支持している。

 政財学界ともに、グラス・ルーツの民衆の勢いに押されて重い腰をようやく上げているという印象が否めないが、理由はともあれ、産業革命以来200年に渡る化石燃料利用による悪影響を解消しようという動きに拍車がかかっていることは顕著だ。世界人口が50億人だった1987年に比べ、既に40%増の70億人に達しており、その個々人が先進国並みの物質的な恩恵を享受する環境を目指しつつ、化石燃料への依存度を下げることは容易ではない。物質的な恩恵と地球の健康を天秤にかけながら試行錯誤することになると思うが、気候変動問題が一部の科学者の老婆心的な懸念だった30年前に比べ今や誰しもが問題であることを認識していることは進歩と評価したい。

(QUICK ESG 研究所)
執筆:MARI Kawawa
編集:松川 恵美

(QUICK ESG 研究所) 執筆:MARI Kawawa 編集:松川 恵美

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