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【政府・レギュレーションの動向】水循環基本法と外国資本による森林買収について ~水シリーズ その3~ 2014/10/29 ESGコラム

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農林水産省(林野庁)は、2013年度における外国資本による森林買収の事例について、都道府県を通じて調査を行い、その結果を取りまとめ、発表した。
調査結果では、全国で14件、194haが取得され、そのうち、北海道が11件、191haと突出している。取得者は、7件が中国、その他、シンガポール、英領ヴァージン諸島およびアメリカとなっている。

また、2006年から2013年において、海外居住者と思われる者による森林買収の事例の集計結果によると、9道府県で総件数79件、森林面積980ha、うち北海道が65件、906haと、件数で82%、面積で92%を占める。他県では、神奈川県6件、長野県2件、山形県、栃木県、群馬県、兵庫県、福岡県および沖縄県が各1件となっている。

以上を合計すると、総面積11.78平方キロとなり、千代田区の面積に匹敵する森林が外国資本によって買収されていることになる。(2005年以前の取引および日本法人を通じた取引も含めると、実態はそれ以上の可能性が高い。)

森林買収の目的は、木材の伐採、材木の調達の林業ではなく、資産保有であり、別荘(自用、賃貸)、住宅(販売)用等となっている。地下水は土地所有者に帰属するため、その取得した所有地で井戸を掘り、地下水を利用することはできる。

ただし、取得した土地で水源地の確保、さらに地下水を開発するとなると、大規模な揚水設備の設置が必要となり、条例が施行されている地方自治体の知事に届け出なければならい。各地方自治体で制定された水源地域保全条例は、水源地域の土地売買における事前届け出等も義務付けており、2014年4月現在、全国15道県で実施されている。

総務省統計局の日本統計年鑑によると、上水道年間取水量(地下水)を都道府県別にランキングすると、静岡県、埼玉県、岐阜県、兵庫県、東京都の順になっており、地表水を含めた総量に占める地下水の占める割合が高いのが、鳥取県(98.5%)、熊本県(81.2%)、高知県(73.5%)、岐阜県(71.8%)で、買収件数が多い北海道(7.4%)、神奈川県(6.9%)、長野県(35.0%)、山形県(15.3%)、栃木県(56.0)について、必ずしも外国資本の森林買収と地下水の関係は見えてこない。

しかしながら、土地所有者の責務等を規定した条例を制定していない地方自治体が、依然として32都府県ある中、2014.07.01に施行された「水循環基本法」において、国、地方公共団体、事業者および国民の責務については規定されたが、土地所有者の責務については、規定が折り込まれなかった。地下水は、民法第207条(土地所有権の範囲)の規定から土地所有者に帰属することになる。所有者が、国民であっても外国資本であっても、森林の所有者は、地下水の保全および森林の適正な整備等、その責務を果たすべきであり、今後の大きな課題となると思われる。

参考:農林水産省の調査結果は次の通り。

1.調査方法

平成25年1月から12月までの期間における外国資本による森林買収について、森林法に基づく届出情報などの行政が保有する情報(注)を参考に、都道府県を通じて調査を行いました。

(注)行政が保有する情報

森林法に基づく届出情報

面積にかかわらず、森林の土地の所有者となった場合に市町村へ提出されたものです。

国土利用計画法に基づく届出情報

一定面積以上(都市計画区域外の場合は1ha以上)の土地について、売買等の契約を締結した場合に市町村へ提出されたものです。

不動産登記法に基づく届出情報

第三者への対抗要件として登記所に登記されたものです。

2.居住地が海外にある外国法人又は外国人と思われる者による森林買収の事例

調査の結果、確認された事例は、次のとおりです。
water cycle table1
注1:森林面積は小数第1位を四捨五入して(1ha未満であるものは、有効桁数1桁の小数で)表示しました。
注2:計の不一致は四捨五入によるものです。
注3:利用目的は、届出書に記載されているものを記載しています。

3.その他の事例

2の事例のほか、国内の外資系企業と思われる者による森林の取得事例として都道府県から報告があった事例は、次のとおりです。
water cycle tabe2
注1:森林面積は小数第1位を四捨五入して表示しました。
注2:「外資系企業」は、国外居住者又は外国法人による出資比率又は国外居住者の役員の比率が過半数を占める法人を指します。
注3:平成25年1月~12月における取得事例です。

<添付資料>
居住地が海外にある外国法人又は外国人と思われる者による森林買収の事例の集計(平成18~25年における森林取得の事例)(PDF:134KB)

株式会社QUICK ESG研究所 執筆:株式会社QUICK ESG研究所 菅原 晴樹

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