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【北米コラム】ダム撤去の動き 2015/04/30 ESGコラム

dam

 10年前の世界ダム委員会の報告書によれば、毎年世界中で300から450億米ドルがダムの建設に使われており、その5割から7割が発展途上国のダム建設に充てられているという。
今日、世界中でおよそ80万のダムが稼動しており、そのうち高さ15メートル以上の大型ダムは45,000ある。
http://isites.harvard.edu/fs/docs/icb.topic903404.files/Sci.Am.on%20dam%20removal.pdf

 その大半が第二次世界大戦後に建てられ、世界の電力の20%を供給しているほかに農業・林業に貢献する運河や貯水にも使われる。水力発電は再生可能なクリーン・エネルギーと位置づけられているが、ダムの環境にもたらす悪影響も近年明らかにされてきている。魚や川の植物の生息地・生態系の破壊、下流の水温・栄養分・季節的な水流の変化、三角州の淡水不足による海水の流入過多、海岸や川辺の土壌の劣化等々、多岐に及ぶ悪影響が研究で明らかになってきた。全米の主要河川はすべて例外なくダムの建設が行われ、世界の主要227河川の6割がダムの悪影響を受けているといわれている。戦後70年が経過し、多くのダムは陳腐劣化している。環境への影響だけでなく、安全性への懸念からダムの稼動を廃止する傾向が見られ、とりわけ米国連邦エネルギー規制委員会のダム運営免許50年期限の失効と重なり、1990年以降増加傾向を強めている。2013年までに撤去されたダムの数は全米で1100以上に昇り、その過半数は1999年以降に撤去されている。
http://www.americanrivers.org/initiative/dams/projects/2013-dam-removals/

 環境保全・河川管理・生態系の回復にはダムの計画的な撤去が他の方法に比べ、最もコスト的にも理論的にも優れているというのが常識論になってきている。

 米国西海岸のワシントン州グラインズ・キャニオン・ダムとエルワ・ダムは、今年の8月に完全撤去されたが、世界で最大のダム撤去例である。1913年から1927年の間に建設された二つのダムは、地元の製紙工場の電力の4割を供給する水力発電所の役目を果たしてきた。あまり知られていない事実だが、米国連邦政府に買収された2001年の直近の二つのダムの所有者は日本製紙の子会社大昭和製紙の米国現地法人だった。ダムの撤去を前提とする米国連邦政府の買収ではあったが、予算・規制・行政府間の軋轢等で本格的に撤去を開始したのは2011年に入ってからであった。
二つのダムの完全撤去により、貯水池はなくなり、ダムでせき止められていた土砂は河川の生態系を再構築し、100年以上見られなくなっていた鮭や鱒の川のぼりが初めて見られるようになった。ダムのあったオリンピック国立公園では、生態系の再生過程を研究するために、鮭や鱒に無線タグをつけて観察をしている。
http://www.nps.gov/olym/learn/nature/damremovalblog.htm

 一方、日本でも熊本県八代市の荒瀬ダムも、紆余曲折を経て2012年から撤去作業を進めており、日本では初のダム撤去を5年がかりで進めており、球磨川に魚が戻ってきているという。今後、日本でもダム撤去のトレンドが見られるかもしれないと期待される一方で、クリーンな発電の代表とされてきた水力発電所に代わる電力供給源の確保が必要と思われる。

 クリーンな電力供給源も予期せぬ副作用を及ぼすという事例がある。例えば、風力発電所の付近の住民、畜産や野鳥の突然死や異常出産、頭痛、耳鳴り、めまい、吐き気、視力低下等々が問題として浮上してきている。設置して数年して表れるこれらの症状・被害を予知し得たのだろうか?人間の知恵とその限界を考えさせられる。

執筆者Mari Kawawa

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