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【セミナー参加報告】「CDP 2016 日本報告会」のキーファインディングス 2016/10/27 ESGコラム

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 パリ協定の発効を約10日後に控えた2016年10月25日(火)、東京証券取引所 東証ホールで「CDP 2016 日本報告会」が開催された。CDPエグゼクティブチェアマン、ポール・ディケンソンが来日し、東京は、世界の他の都市に先立つ報告解禁後、第一番目の開催都市となった。CDPは世界の機関投資家(827機関、運用資産総額100兆米ドル)が、企業に対して環境課題に関連する情報開示を求めるイニシアチブで、今回は4分野のうち、署名機関投資家数、回答企業数で最大規模の「気候変動」の結果が報告された。パリ協定が予測よりも早く発効し、温暖化対策が必達の課題であると世界が合意した今、個々の企業の取り組み状況は、機関投資家が「投資対象」として企業を評価する上で、その重要性を増している。

 プログラムの中でも、企業からの参加者が熱心に聞き入っていたセッションの一つは「投資家によるパネルディスカッション」である。アムンディ・ジャパン、りそな銀行、MSCIなど責任投資に積極的な投資家がパネリストとして登壇、QUICK ESG研究所からも広瀬所長が世界の投資家の気候変動の方針や具体的な行動を説明した。パネル全体のディスカッションで特徴的だったことは、直接的・財務的なリターンではない「インパクト(影響)」をより重視する姿勢だろう。CDPに関連する動きとして「ポートフォリオにおけるカーボンフットプリント」を測定する投資家も増えていることからも、CDPに回答することに加えその内容開示も大切な要素だ。日本企業は回答していながらデータを公表しない「非公開」が全体の約4分の1を占める。今後の検討課題として挙げたい。

 後半の注目セッションである「優秀企業発表」を前に会場が熱気を帯びる中、当日まで「シークレット」であったゲスト、東京都知事の小池百合子氏が登壇した。
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 小池都知事は誰から見てもご多忙なのは明らかである中、予定時間を超えてスピーチされたが、元環境大臣や金融政策にも関わられた見識の深さがあってこそ可能な、本質的な論点を語った。CDPは「シティ」も対象にしているが、東京都が掲げる三つの「新しい東京」のメッセージである「セーフシティ、ダイバーシティ、スマートシティ」は金融市場へも有効であり、グリーンボンドを発行するなど、東京都の政策がわかりやすく解説された。東京オリンピックの開催に向けて、今後も東京都の積極的なアクションには期待が高まるだろう。

 小池都知事のお話に引き込まれた直後、続くセッションも目が離せないものだった。毎年報告会では、優秀企業(Aリスト:全世界で193社。文末【参考】参照)に選出された企業がショートスピーチを披露する場があるが、今年は18社から代表取締役会長、社長、副社長、専務など、役員クラスが登壇した。CDPへの回答を基に採点されるアセスメントにおいて優秀なスコアを獲得することによって、企業としての投資価値をアピールできることにもなり、経営戦略においてもこれまでになく重視する企業が増えたと言えるだろう。今年のスピーチでは、Aリスト入りの名誉を感謝する役員たちの言葉に、もちろん温度差はあるものの、熱意と真意はこれまでと異なる印象を与えるものが多かった。またアサヒグループホールディングスの泉谷直木代表取締役会長兼CEOは、気候変動対応をより拡大し「ESG」を重視する方針に言及した。このように企業におけるCDP対応は進展しているが、一方で世界全体から見ると、日本企業の回答率は対象企業の53%で、ようやく今年半数以上となった。毎年向上してはいるものの、他地域との比較ではグローバル500(世界の時価総額上位500社)が76%、英国FTSE350が63%、米国S&P500が65%と、日本との差は未だ大きい。

 日本での批准を前にパリ協定が発効するが、来年は企業により具体的なアクションが期待され、それは長期間にわたって続く。気候変動だけでなく、ウォーター(12月5日日本報告会予定)、森林、サプライチェーン、と CDPが掲げる他の課題も深刻度は年を追うごとに高まる。企業の対応や努力を、投資家が支える、という良い循環が機能しない限り、グローバルな課題は解決できない。

【参考】
CDP 気候変動 レポート 2016: 日本版 (CDP Climate Change Report 2016, Japan edition) pp.18-20 「気候変動 Aリスト 2016」

(10月27日)画像、参考リンクを追加掲載いたしました。

QUICK ESG研究所 プリンシパル 松川恵美

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