【北米コラム】シリコンバレーのCSR 2015/06/02 ESGコラム

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 米国北カリフォルニアのスタンフォード大学を中心に北はサンフランシスコ、南はサンノゼ辺りまでを通称シリコンバレーと呼んでいる。ウィリアム・ヒューレットとデビッド・パッカードがスタンフォード大学で電子工学を専攻し、卒業後間もなくヒューレット・パッカード社を掘っ立て小屋で創立したのが1939年[1]。以来、車庫や地下室から起業し、一攫千金の夢を実現した企業は、アップル社、グーグル社、フェースブック社、YouTube社、ジェネンテック社、セールスフォース社、インテル社、シスコ社、イーベイ社、等々、数え上げれば切りがない。シリコンバレーは、米国のみならず、世界の新経済を担い、新産業を開拓してきた。営利目的で開発された技術や製品の非営利、社会貢献目的の応用も少なからずあり、例えば、スマートフォンを利用して遠隔医療を実現する企業(Medic Mobile)などがある。マイクロソフト社の創始者であるビル・ゲイツ氏のビル&メリンダ・ゲイツ財団は有名だが、イーベイ社の早期創業チームメンバーの創設したスコール財団(Skoll Foundation)や、オミディア・ネットワーク(Omidyar Network)も、世界の貧困問題や環境問題、社会問題の解決に向けて資金とノウハウの支援を行っている。米国税法では、財団への贈与及び財団の資産運用益を非課税としており、財団として活動する誘因があるのも事実だが、大成して世の中に還元するもしくは次世代につないでいくPay-it-forward精神が健在である。

 私財を寄付し、このような偉業を続ける起業家のいる一方で、若くして莫大な私財を手にした起業家たちに対する妬みや批判も話題となっている。20代、30代で莫大な私財を手にした起業家たちは、競ってスタンフォード大学近辺やサンフランシスコその他の近郊に大邸宅を構え、地価高騰に拍車をかけ、一般人はもはやこの一帯では家を持てないほどになり、ひがみ半分あきらめ半分の心境で都心部から遠い地域に移り住み、あるいは、ワシントン、ネバダ、アリゾナなど他州に移住を余儀なくされている人々がいる[2]。若い富裕層が大勢働くグーグル社は、環境への配慮と従業員サービスとして、サンフランシスコとグーグル社のあるマウンテン・ビューを往復するグーグルバスを走らせているが、2013年には停車所に停まるグーグル・バスの窓を割ったり、タイヤを切り裂いたりする嫌がらせが横行した。ヤフー社なども、同様の被害に遭い、以来、社名やロゴをはずした黒塗りバスに乗り換え、注目を引かないようにしている。

 サンフランシスコ市は、税源確保のため、有望なスタートアップ企業や既に成功を収めた企業を誘致している。地域に貢献する代償としてサンフランシスコ市の低所得者層やホームレスの住む特定地域に事務所を構える企業には、税の一部削減が認められている。Twitter社は、サンフランシスコ市のダウンタウンに近いテンダーロイン地区に本社を置き、地域貢献契約を市と締結している。2013年のTwitter社の節税額は210万ドルから260万ドルと推測される[3]。Twitter社の他にも10社ほどがこの特例を利用して2013年には420万ドルの節税を果たしたが、この政策に対しては賛否両論が交錯する。サンフランシスコ市は、ホームレス人口が6500人ほどだが、中には定職を持ちながら家賃が払えないためにホームレス生活をしている人も1割いるといわれている[4]。400万ドル以上もの節税効果を得ている企業が本当に地域に貢献しているのか否か、透明性に欠ける面がある。

 ホームレスと、テスラを乗り回す大富豪が混在するシリコンバレーは実に不思議な所だ。

 

QUICK ESG研究所 Mari Kawawa

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