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【北米コラム】ベネフィット・コーポレーションとBコープ認証 2015/08/07 ESGコラム

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 米国では、「ベネフィット・コーポレーション」という新たな企業形態を創設する動きが進んでいる。2010年にメリーランド州がベネフィット・コーポレーションの法人制度を合法化したのをきっかけに、今では28の州で法制化されている。また、社会や環境への影響に対して企業として責任を持ち、透明性の高い情報開示をすることで、Bコーポレーション認証(Bコープ認証)を取得する企業も増加している。

 ベネフィット・コーポレーションとは営利と社会貢献の両者を追求する株式会社であり、その特性としては、

  1. 営利企業でありながら、社会や環境問題の解決に貢献することを事業活動の目的として明示している。
  2. 株主の利益最大化を目的とする一般の営利企業とは異なり、株主のみならず地域や社会を含むステークホルダーの利益を考慮することが、法的な後ろ盾の基で求められる。
  3. 第三者に対して自社の社会および環境に対するパフォーマンスを公開することが求められるという点があげられる(1)。

 ベネフィット・コーポレーションは、社会的なミッションや環境を考慮に入れた企業活動を進めたいという起業家の要望に沿った形態となっている。企業の社会的責任を問うコーポレート・アカウンタビリティーが強まっている米国では、例えば途上国から原材料の輸入をする際にフェア・トレードをしているか、工場などの製造施設での労働条件を整えているか、地域の食材をできる限り使うローカル・フード運動を採用しているか、等々が、顧客を引き付ける要因となることが多い。ベネフィット・コーポレーションにおいては、取締役や上級管理職が企業を経営する上で、例えばローカル・フード運動の一環でよりコストの高い原材料を購入するなど、株主やオーナーの利益最大化につながる決断を敢えてしなくても、これが企業理念に沿った決断であれば責任を問われることがない。また、創業者の退任や取締役の交代、事業継承などで当初の企業理念が希薄化したり、株主利益が最優先されてしまう事態を避けるために、企業の使命を継続するのに必要な法的枠組みを与えることもできる。株主やオーナー、そして経営陣が企業理念を共有し、さらには、これに共鳴する顧客への宣伝効果を狙ってベネフィット・コーポレーションとして経営をしている企業には、アウトドア用品ブランドのPatagonia(カリフォルニア州)やエコ洗剤ブランドのMethod Products(デアウェア州)など、2015年8月時点で2160社以上ある。(2)

 他方、Bコープ認証は、米国ペンシルバニア州に本拠を置く非営利団体のB Labが運営している制度で、環境、社会に配慮した事業活動を行っており、アカウンタビリティや透明性などB Labの掲げる基準を満たした企業に対して与えられる民間認証である。非営利団体や政府機関以外であれば申請可能であり、現在では米国のみならず、全世界44カ国の1315社がBコープ認証を受けている。2015年8月7日時点(3)。その中には、ベネフィット・コーポレーションとしても有名な米国PatagoniaやMethod Productsの他、ブラジルの化粧品ブランドであるEtsyなど上場企業も含まれている。日本でBコープ認証を受けている企業はまだない。(ベネフィット・コーポレーションとBコープの共通点や違いはこちら

 2014年のBコープ度ランキングのトップは、ハンドクリームやリップクリームを製造販売する米国のBadger。ニューハンプシャー州の大工が手の荒れのひどさに辟易して天然の材料を混ぜて作ったハンドクリームがきっかけで1995年に創業し、現在では40人あまりの従業員を抱えている。取締役会には経営陣ファミリーだけでなく、従業員や地域住民も席を連ね、財務情報は従業員全員と共有している。税引き前利益の10%以上を慈善事業に寄付し、コミュニティー・サービスや緊急医療従事サービスをする。従業員には有給休暇を提供している。従業員には毎日有機農法で育てた食材を使ってランチが支給され、6週間超の有給産休制度や職場に乳児を連れてきても良いという制度を設けている。商品も材料の75%以上は有機農法で育てた材料を使い、材料の仕入れ元の25%超が再生エネルギーや節水システムを導入している。

 ベネフィット・コーポレーションやBコープ認証は、創設されて間もないため今後の成り行きが注目されているが、ミレニアル世代(1980年代から2000年代初頭生まれの世代)の慈善活動や社会貢献に対する取り組み方に合致しているように思える。評判の良い慈善団体にお金を寄付すれば良いとしていた彼らの親の時代と違い、ミレニアルと呼ばれる若い世代は、支援する社会活動や組織と緊密な関係を保ち、積極的に関与を求める。また、晩年になって初めて慈善活動や社会貢献について考えるという姿勢ではなく、若い頃から慈善活動のインパクトを肌で感じたいという。世界の若者を対象にした調査では、若者世代がビジネスに求めることとして、利益の創出(44%がこれを支持)とともに、社会の改善(27%)をあげている。年長の管理職に比べどちらも10%ずつ高い支持率を若者世代は示している(4)。利益の創出と社会改善を矛盾する概念として捉えていないことは興味深い。

 日本においては、税制優遇を受けて公益事業を担う非営利法人(NPO法人)の利点を取り入れながら、利益事業や利益分配の自由度を高めた企業形態として、ローカルマネジメント法人(仮称)という新たな法人制度の検討が開始されている。地方創生の施策として、経済産業省経済産業政策局の有識者会議「日本の『稼ぐ力』創出研究会」により提言され、早ければ2016年に関連法律が制定される見通しである。既存のNPO法人は、介護や福祉など公益性の高い事業を営んでいるが資金調達は寄付金や会費に頼らざるを得えず、また利益は公益事業への補填にしか充てられないなどの制約があり、財政基盤の脆弱な組織も少なくない。特に人口減少や地域経済の衰退が深刻な地域における、公共交通や小売、保育、介護など生活密着型の住民サービス事業への活用が期待されている。(「日本の『稼ぐ力』創出研究会とりまとめ 平成27年6月18日」

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執筆:QUICK ESG研究所 Mari Kawawa 編集:QUICK ESG研究所 小松 奈緒美

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