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【ヨーロッパ】ESG統合は受託者責任に反せず。EYが欧州委員会向け最終報告書で結論 2016/01/08 ESG

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 欧州委員会による長期投資およびサステナビリティ投資に関するパブリックコンサルテーションの開始に合わせて、会計コンサルティング大手のアーンスト&ヤング(以下、EY)が欧州委員会の環境総局に代わってまとめた環境・資源効率と投資家の受託者責任に関する報告書の最終版、”Resource Efficiency and Fiduciary Duties of Investors“が公表されている。

 同報告書の目的は、EUにおいて環境・資源効率課題を年金基金や保険会社、運用会社といった機関投資家の受託者責任に統合すべきかどうかについての政策アドバイスをすることにある。

 EYは報告書の中で、ESG要因を投資方針や投資の意思決定プロセスに統合することはEU内の既存の受託者責任に関するあらゆる法的枠組みと共存可能であり、実際にEU内の主要な機関投資家の多くが既にESG要因を投資方針に取り入れているとしたうえで、受託者責任に関する法制度を変更する必要性は見られないと結論付けた。

 その代わりに、EYは機関投資家が投資意思決定プロセスに環境・資源効率性に関する課題を組み入れるよう、投資家コミュニティ全体に対して働きかける必要性を指摘している。欧州委員会に向けた具体的な政策アドバイスとして、下記のようなポイントを挙げている。

  • 各国の財政当局は、欧州委員会の支援のもとで受託者責任および機関投資家がどの程度までESGを投資戦略や意思決定に組み込んでよいかについての公的なガイダンスや解釈の提供するべき
  • 全ての機関投資家に対してサステナビリティ・責任投資方針の開示を義務化するべき
  • 機関投資家が宣言通りにサステナビリティ・責任投資方針を実行しているかをモニタリング・保証するべき
  • 機関投資家は自身が実際に資源効率の高い経済の実現に貢献しているかを確認するために、投資が社会・環境に与えている影響を測定するべき
  • 透明性を高め、投資チェーン全体を通じて受託者責任とESG要因が尊重されていることを確実にするために、運用機関向けスチュワードシップコードの策定するべき

 さらに、同報告書では、機関投資家の多くが実際には何もしていないにも関わらずサステナビリティ投資方針を掲げるだけでそのような投資家だと認識されることで利益を得ているとしたうえで、PRI(責任投資原則)署名機関や一般にサステナビリティ投資家だと認識されている機関については第三者による外部保証も取り入れるという選択肢もありうると提案している。

 今回の報告書は、機関投資家によるESG統合は、それが財務リターンやリスク管理につながっている限りにおいて受託者責任の観点からも現行の法制度上問題はないとしたうえで、むしろ問題は投資家らが掲げる方針と実態との間の乖離やその透明性にあると指摘している。表面的な宣言ではなく、実際にどこまでサステナビリティ投資が実践されているのか。機関投資家はその運用プロセスの中身を問われることになりそうだ。

【レポートダウンロード】Resource Efficiency and Fiduciary Duties of Investors
【参考サイト】Structural Change and the Resource Efficient Economy
【参考サイト】Public consultation on long-term and sustainable investment

株式会社QUICK ESG研究所

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