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【企業情報開示(ディスクロージャー)】日本弁護士連合会が「海外贈賄防止ガイダンス(手引)」を採択 2016/08/12 ESGレポート

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 2016年7月15日に日本弁護士連合会は、経済産業省「外国公務員贈賄防止指針」を補完する日本企業及び弁護士向けの実務指針として「海外贈賄防止ガイダンス(手引)」を採択した(20日公表)。

 同ガイダンスは、日本弁護士連合会の弁護士業務改革委員会にあるCSRプロジェクトチームが中心となって取りまとめており、CSRプロジェクトチームには、海外贈賄防止をはじめとするコンプライアンス・CSRについて第一線で取り組む弁護士が所属している。採択にあたり、QUICK ESG研究所は、同チーム副座長の高橋大祐弁護士に取材し、回答を得た。そこには、贈賄リスクを企業価値に直結するものと認識し、企業に積極的なガイダンス実践の表明を望む弁護士の姿があった。

「海外贈賄防止ガイダンス(手引)」作成の経緯と目的

 「海外贈賄防止ガイダンス(手引)」は、海外贈賄防止研究の第一人者である麗澤大学の髙巌教授及び藤野真也氏の監修の下、2015年3月から会議を重ね、作成した素案について経済産業省、グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンに加盟る多数の日本企業、国際協力機構(JICA)、日本貿易振興機構(ジェトロ)、アジア経済研究所「新興国市場におけるビジネスと人権」研究会等の関係者と対話し、完成させた。

 海外贈賄防止とESGは関係が深い。ガイダンス前文にも記載があるとおり、贈賄リスクが企業価値に直結するものとして認識され、また、海外贈賄防止がCSRの中核的な取組として位置付けられている現在、企業は海外贈賄防止の取組状況を、投資家などステークホルダーに対し積極的に開示することが強く求められつつある、と私達は分析している。2014年にEUで採択された非財務情報開示指令においても、企業が直面する贈賄リスクの状況とその対処方針・状況を開示することが要求されている。

 本ガイダンスは、日本企業に対し、ガイダンスに沿った海外贈賄防止対策を実践することを社内外において公表するよう推奨している。ステークホルダーに対する透明性を高め、企業に対する社会的な信頼を向上させるためにも、日本企業においては、積極的にガイダンス実践の表明を検討してほしい。

 ガイダンスの策定経緯、目的、概要は以下のとおり。

1.経済産業省「外国公務員贈賄防止指針」の改訂

 近年、インフラ部門などの海外市場の拡大に伴い、我が国企業が外国公務員等から贈賄要求を受けるケースが増加している。一方、世界的に外国公務員贈賄罪に対する摘発は急速に強化されつつあり、海外では1000億円にも上る制裁金が課される事例も見られる。

 さらに、米国の海外腐敗行為防止法(FCPA:Foreign Corrupt Practices Act)および英国の贈収賄法(UKBA:Bribery Act)などの外国規制が我が国企業に適用される危険性も高まっている。

 こうした中、我が国企業の対応は、海外での正当な営業関連活動まで萎縮する事例がみられる一方で、特に有効な対策を講じていない現地法人も多いとの指摘がある。このため、アジアなど海外市場の活力を我が国に取り込むため、我が国企業が、企業グループとして、贈賄リスクを適切に制御したうえで、正当な営業関連活動を行う環境整備を行う必要がある。

 2015年6月10日「外国公務員贈賄の防止に関する研究会」(座長 山口厚 早稲田大学大学院法務研究科教授、 事務局 経済産業省経済産業政策局 知的財産政策室)が設置され、計3回開催、「外国公務員贈賄防止指針」の改訂案について議論が行われた。

 その結果を踏まえて、2015年7月30日に経済産業省が我が国企業の海外展開を支援するため、不正競争防止法第18条に規定される外国公務員贈賄罪に関する指針である「外国公務員贈賄防止指針」を改訂した。

2.「外国公務員贈賄防止指針」の改訂のポイント

 (1)法解釈の明確化

 (2)企業における体制強化(ベストプラクティス)

 (3)その他(現地日本大使館等に設けられた「日本企業支援窓口」等への相談)

で、外国公務員贈賄防止体制の有効性の向上を図るための方策として、「経営トップの姿勢・メッセージの重要性」「リスクベース・アプローチ」「子会社における対応の必要性」「有事における対応の必要性」などの新たな視点が盛り込まれた。

3.日本弁護士連合会「海外贈賄防止ガイダンス(手引)」のとりまとめ

 外国公務員贈賄罪に対する摘発が強化される中、経済産業省が「外国公務員贈賄防止指針」を改訂し、さらに、中小企業庁が2016年3月14日に公表した「中小企業のための海外リスクマネジメントガイドブック」(独立行政法人中小企業基盤整備機構)において贈収賄がリスクとして挙げられており、弁護士および会計士の活用を奨めている。

 今般、日本弁護士連合会は、改訂された指針を補完する形で、我が国企業および我が国企業に助言する弁護士を対象に、海外贈賄防止を推進するうえでの実務指針に関する現時点での『ベストプラクティス』として、海外贈賄防止ガイダンス(手引)(以下、「本ガイダンス(手引)」という。)を取りまとめ、発表したものである。

4.本ガイダンス(手引)の目的

 (1)内部統制システム整備義務を果たす上で必要な贈賄防止体制の要素を明確にする

 (2)処罰の減免にも一助となり得る内部統制システムの要素を明確にする

 (3)企業及び弁護士における海外贈賄防止のための実務対応の在り方を明確にする。

5.本ガイダンス(手引)の性格・活用方法

 本ガイダンス(手引)は現時点での海外贈賄防止対策に関するベストプラクティスを取りまとめたものである。

 企業サイドは本ガイダンス(手引)に基づき、海外贈賄防止を実践するとともに、弁護士サイドは本ガイダンス(手引)に基づき、海外贈賄防止に関する法的助言を行うことが期待される。

6.本ガイダンス(手引)の実践表明の推奨

 本ガイダンス(手引)は、日本企業に対し、本ガイダンス(手引)に沿った海外贈賄防止対策を実践することを社内外において公表するよう推奨している。

7.海外贈賄防止ガイダンス(手引)の構成

 第1章 海外贈賄防止体制の整備
  第1条 経営トップがとるべき姿勢と行動
  第2条 リスクベース・アプローチ
  第3条 基本方針及び社内規定の策定
  第4条 組織体制
  第5条 第三者の管理
  第6条 教育
  第7条 モニタリングと継続的改善
  第8条 ファシリテーション・ペイメント
  第9条 記録化
 第2章 有事の対応(危機管理)
  第10条 有事の定義
  第11条 外国公務員等から賄賂の不当要求を受けた場合の有事対応
  第12条 外国公務員等に賄賂を供与・申込み・約束した事実を把握した場合(その可能性を把握した場合を含む)の有事対応
  第13条 有事対応(危機管理)体制
  第14条 記録化
 第3章 子会社管理・企業買収
  第15条 親会社による子会社の海外贈賄
  第16条 企業買収
 第4章 その他
  第17条 情報開示
  第18条 本ガイダンス(手引)の実践表明

【参考資料】

海外贈賄防止ガイダンス(手引)(2016年7月15日 日本弁護士連合会)

中小企業のための海外リスクマネジメントガイドブック(2016年3月14日 中小企業庁)

不当競争防止法(1993年5月19日法律第四十七号 最終改正:2015年7月10日法律第五四号)

外国公務員贈賄防止指針改訂(2004年5月26日策定 2015年7月30日改訂 経済産業省経済産業政策局 知的財産政策室)

外国公務員贈賄の防止に関する研究会(第3回)‐配布資料(2015年7月13日)

国際商取引における外国公務員に対する贈賄の防止に関する条約(OECD外国公務員贈賄防止条約)(1997年採択 1999年2月発効)(日本語訳)

国際商取引における外国公務員に対する贈賄の防止に関する条約(OECD外国公務員贈賄防止条約)ウェブサイト

QUICK ESG研究所 菅原晴樹、真中克明

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