Sustainable Japan QUICK ESG研究所

【PRI・CDP活動報告】PRI:7300兆円の資産運用に適用される原則 2015/06/25 ESGコラム

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 "PRI (Principles for Responsible Investment:国連責任投資原則)" が、全署名機関の元で管理されている資産運用残高の総計として、2015年6月2日に発表した数字が「$59 trillion(59兆ドル)」、これを日本円に換算するとおよそ「7300兆円」 となる。あまりに巨大な金額で、にわかにはその規模をイメージする事が難しい数字だ。実際に、「7300兆円」は、全世界で運用されている機関投資家の資産総額(株式、債券、融資を含む)の半分を上回る規模である1。これは世界のGDP(2013年)73兆ドルの8割に相当し、東証一部の時価総額およそ600兆円と比較すると約12倍にあたる。

 PRIは、2006年発足当時の国連事務総長であるコフィー・アナン氏が世界の金融業界に向けて提唱したイニシアティブである。機関投資家が、投資の意思決定プロセスにおいて、ESG課題(環境、社会、企業統治)を考慮することを中心とした6原則から成るものだ。その6原則は次の通りである。

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 PRI は世界のアセットオーナー(Asset Owners)、運用機関(Investment Managers)、およびサービスプロバイダー(Professional Service Providers)にこの原則に対する署名を呼びかけ、2015年6月24日現在、機関投資家287、運用機関907、サービスプロバイダー194、総計1388の機関(うち、日本は33機関)が参加している。図1が示すように、署名機関数とその運用資産残高は増加の一途をたどり、現在運用資産残高が冒頭の数字7300兆円に至っている。また、最近の動きとしては、関心が薄いように思われている米国でも大手金融機関の数社が署名したり、2016年の国際的な年次総会開催場所がシンガポールに決まり、またつい先頃、ボードメンバーに日本の社会的責任投資フォーラム(JSIF:Japan Sustainable Investment Forum)会長荒井勝氏2がアジア諸国として初めて選出されるなど、数の増加と共に地理的な広がりも進んでいる。ここに至り、PRI が持つ影響力はマジョリティとなり、投資対象となる企業にとってはPRIの原則を基盤とした投資家の視線をしっかりと認識しなくてはならない状況になったのだ。

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出所:PRI

 6原則の中心となる考え方は、ESGを投資判断に組み込むことにある。ではなぜESGを重視した投資を推進するのだろうか。言い換えると、この原則に従った投資判断は、企業のどこを評価するのだろうか。そして目指すゴールは何だろうか。前提となっているのは、「中長期投資」だ。今後将来にわたり良い業績を生み出していける企業の価値を判断し、投資する、当たり前のことだが、企業業績を表す貸借対照表および損益計算書に基づく財務分析だけでは判断材料として不十分だ。そこに加えていく要素は財務以外の情報であり、各運用機関の投資方針によってさまざまなアプローチで分析されていく。何を重視するか、当然運用機関によって異なるが、世界の原則として共有された指標、それがESGだ。ESGが表そうとするのは、現在世界が直面しているグローバルな課題に対する個々の企業の対応力である。また、もしある企業がESG課題へのマイナス要素を放置し続けると、それは世界全体のサステナビリティを脅かす存在となる。逆に考えると、単に良識に基づいた活動指針であるだけでなく、企業の業績そのものを悪化させうる要素をESGとして体系化しているのだ。数百〜千以上の銘柄を保有する機関投資家の立場から見ると、ESG課題は個々の企業が対応していく事柄でありながら、影響範囲はサプライチェーンや、気候変動による自然資産の崩壊といったグローバル経済全体に及ぶものである。反対に、グローバル課題を解決するソリューションを生み出す力をどれだけ持つか、はプラス面の評価につながる。

 PRI は署名機関に対して、6原則に則ったこういった専門的な分析と投資活動を支援するため、さまざまな情報やツールを提供している。署名機関は提供されたプラットフォームを活用して、より効果的、効率的な投資判断ができることを目指す。具体的には、共同エンゲージメント支援、学術的研究、共通認識の普及などである。

 もうひとつのヒントは、PRIより遡る事6年、2000年7月26日にニューヨークの国連本部で正式に発足した国連グローバル・コンパクト(UNGC:United Nations Global Compact)の主旨にたどりつく。発端は1999年の世界経済フォーラム(ダボス会議)の席上でコフィー・アナン国連事務総長(当時)が提唱した事に始まる。UNGCのウェブサイトによると「当時、グローバル化が急速に進む中、グローバル化の「負」の側面が顕著になってきており、もはや国家や国際機関だけではグローバルな課題を解決できなくなってきていました。」と発足に至る問題意識が記されている[3]。現在では世界約145カ国で1万を超える団体(そのうち企業が約7000、日本の署名機関は227:2015年6月現在)が署名し、「人権」、「労働」、「環境」、「腐敗防止」の4分野・10原則を軸に活動を展開している。「人権」、「労働」、「環境」、「腐敗防止」はまさにESGと重なる要素だ。企業は既にUNGCという指標を持って活動し、またその活動や考え方を「開示」するレポーティング方法も継続的な改善が進展している(GRI[4]、統合報告、CDP[5]などの開示など)。資金供給元である資本市場が、それを認識、評価してこそ、効果は増大するのである。

 この1年の間に、日本株を取り巻く環境には大きな変化が起こっている。日本の企業に投資する多くの機関投資家が、スチュワードシップ・コードの受け入れを表明し、責任ある投資家として活動する方針を公表している。企業側にはコーポレートガバナンス・コードが適用となり、企業統治の体制やESG課題への対応やその開示が見直されている。PRIとスチュワードシップ・コードは重なる要素が多く、PRIはスチュワードシップ・コードの上位概念であるとも言える。企業の経営トップは、自社の長期的な理念を投資家に対してしっかりと説明できる準備を整え、透明性を維持するために積極的に開示し、それを受けて投資家は経営レベルの視点を持って企業の持続的な成長価値とリスク管理・統治能力を評価し、必要があれば助言する。PRIの原則やスチュワードシップの枠組みを理解した両者の間に、建設的な対話が可能となり、サステナブルな企業が支えるサステナブルな社会が実現する。

 企業と投資家の経済活動は、これより先の社会全体が持続することをおいては成立しない事を、前提として忘れてはならない。

 

 * 次回のコラムでは、PRIに署名している機関投資家の実際の活動事例をご紹介する予定です。
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QUICK ESG研究所について

2014年4月 QUICK ESG研究所設立。年金基金および運用機関にESG要因を考慮した投資が行われる仕組み、ならびに投資先企業と投資家をつなぐプラットフォームづくりを目指す。

2014年4月 「QUICK EIRIS ESGサービス」の提供を開始。

2014年10月 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の「年金積立金管理運用独立行政法人における スチュワードシップ責任及びESG投資のあり方についての調査研究業務」を受託し、2015年3月に報告書を提出。

2015年2月 企業向けアドバイザリーサービス「QUICK ESGサービス for Corporation」を開始。

2015年5月 ポータルサイト開設

サービスの詳細:QUICK ESG研究所サービス紹介 


株式会社QUICKのESG活動について

  • PRI署名機関
  • CDPゴールドデータパートナー
  • 社会的責任投資フォーラム(JSIF:Japan Sustainable Investment Forum)法人会員
  • RI(Responsible Investor)Asia 2014, 2015 共同スポンサー

関連サイト:プレスリリース

QUICK ESG 研究所 プリンシパル 松川 恵美

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