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【政府・レギュレーションの動向】「CGシステムの在り方に関する研究会」報告書の公表について-その3(終) 2015/08/11 ESGコラム

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 その3.2015年7月24日 「コーポレートガバナンスの実践~企業価値向上に向けたインセンティブと改革~」報告書の公表

 「コーポレート・ガバナンス・システムの在り方に関する研究会」(座長 神田秀樹 東京大学大学院法学政治学研究科教授、事務局 経済産業省経済産業政策局産業組織課、オブザーバー 法務省大臣官房および金融庁総務企画局企業開示課。以下「本研究会」という。)は、2014年12月15日より検討を再開し、近時のコーポレートガバナンスに関する新たな実務上または法制上の問題等を踏まえ、8回の会合を経てた後、2015年7月24日、報告書「コーポレートガバナンスの実践~企業価値向上に向けたインセンティブと改革~」を取りまとめ、公表した。

 1.検討の背景

 我が国では、本格的なグローバル競争時代を迎える中、我が国企業の「稼ぐ力」の向上のために、中長期的な収益性・生産性を高めることが重要となっている。こうした背景の中で、近時、スチュワード・シップコードの策定(2014年2月26日)、社外取締役の確保に向けた改正会社法の施行(2015年5月30日)、コーポレートガバナンス・コードの策定(2015年6月1日、適用開始)等の取組がなされた。

 2015年6月30日に閣議決定された「日本再興戦略」改訂2015においても、我が国企業の「稼ぐ力」の更なる向上のために、コーポレート・ガバナンスの強化が引き続き重要な課題として位置づけられており、近時のコード策定等の制度整備等を踏まえ、コーポレート・ガバナンスの実践を後押しする環境整備を行うことが要請されている。

 こうした状況を踏まえ、本研究会は、2014年12月15日検討再開以降8回にわたる議論を行い、形式的にガバナンス体制を整えるだけでなく、中長期的な企業価値向上に向けたコーポレート・ガバナンスの実践を実現するための検討を行ってきた。この度、中長期的な企業価値向上のためのインセンティブ創出、取締役会の監督機能の活用および監督機能を担う人材の流動性の確保と社外取締役の役割・機能の活用という基本的な考え方の下で、次のとおり、本研究会において報告書の取りまとめを行った。

 報告書においては、中長期的な企業価値を向上させるために必要となるコーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方を示し、そのために報酬、保険や補償条件等の役員就任条件を適切に活用することにより、優秀な人材を内外から確保し、経営者を含む業務執行者等のインセンティブを創出することが可能であるとし、また、取締役会の監督機能の活用により、経営者の果断な意思決定を後押しすることが可能であるとして、それを実践するための具体的な施策を取りまとめた。

2.本研究会の具体的な成果

 報告書本体の構成は、大きく3つに分かれており、

 「第1 取り巻く環境の変化とこれに対する対応の必要性」として、1.我が国企業を取り巻く環境の変化、2.今後の方向性、および「第2 基本的な考え方」として、1.中長期的な企業価値向上のためのインセンティブ創出、2.取締役会の監督機能の活用、3.監督機能を担う人材の流動性の確保と社外取締役の役割・機能の活用、4.具体的な取組(プラクティス)と制度の双方を踏まえた検討の必要性について総論的な記述がなされている。「第3 具体的な施策」として、1.企業における実務(プラクティス)の整理(1)新しいボードプラクティス(2)報酬設計や会社役員賠償責任保険の活用に関する実務上の工夫および2.関連する法的解釈の明確化等(1)取締役会の上程事項(2)社外取締役の役割・機能等(3)役員就任条件((4)新しい株式報酬の導入が掲げられているが、具体的な内容については、報告書本体ではなく、次のように別紙に詳述されている。

(1) 我が国企業のプラクティス集(別紙1)

 コーポレートガバナンス・コードの適用が開始されたことを踏まえて、各企業における主体的な検討や取組を行う際の参考となることを期待して、我が国企業等に対するヒアリングにより得られた我が国企業の取締役会実務の具体例(ボードプラクティス)を取りまとめた。
具体的には、各社における取締役会の付議基準や、社外取締役の選任を踏まえた議論の状況などの事例を紹介している。

(2) 英米における取組の概要(参考資料)

 英米各国の企業における開示資料を調査し、我が国企業がガバナンスに関する取組を検討するに当たって参考となり得る取組の概要を紹介している。

(3) 会社役員賠償責任保険(D&O保険)の実務上の検討ポイント(別紙2)

 役員が過度にリスクを回避しないようにするためには、訴訟リスクに対応するD&O保険の更なる活用が必要である。このため、D&O保険の検討に際して、実務上確認することが有益と思われる点を整理している。

(4) 法的論点に関する解釈指針(別紙3)

 取締役会の実効的な監督、社外取締役の役割・機能の活用および中長期的な企業価値向上のためのインセンティブ創出の観点から、以下の事項について法的解釈を整理している。

① 上程事項

 取締役会への上程事項の範囲を決定する上での考慮要素を示し、一定の場合には、その範囲を限定的に考えることができる旨を示している。

② 社外取締役の役割・機能等

 社外取締役のさらなる活用に向けて、社外取締役が行った場合に社外性を失う「業務執行」にあたらない行為の例示や、社外取締役の監視義務の範囲に関する考え方を示している。

③ 役員就任条件

 役員就任条件の一つである会社補償(※1)について、社外取締役を活用した一定の要件の下で、活用が可能なことを明らかにしている。また、D&O保険については、実務上、保険料の一部について役員が個人で負担しているが、社外取締役を活用した一定の要件の下、会社が保険料全額を負担してもよいことを明らかにしている。

(※1)会社補償:役員が損害賠償責任を追及された場合に、会社が当該損害賠償責任額や争訟費用を補償すること

④ 新しい株式報酬の導入

 我が国企業の役員報酬は依然として固定報酬中心であり、業績連動報酬や株式報酬の割合が低いことが指摘されている。欧米においては、中長期のインセンティブ報酬として、Performance Share(※2)やRestricted Stock(※3)といった株式報酬制度が普及しているが、これと同様の仕組みを我が国で導入するための手続(金銭報酬債権を現物出資する方法)を整理している。

(※2)Performance Share:中長期的な業績目標の達成度合いによって交付される株式報酬

(※3)Restricted Stock:一定期間の譲渡制限が付された株式報酬

出所: 「コーポレート・ガバナンス・システムの在り方に関する研究会」報告書 を取りまとめました より、QUICK ESG研究所編集

 

【関連資料】

「コーポレート・ガバナンス・システムの在り方に関する研究会」報告書 を取りまとめました

コーポレート・ガバナンスの実践 ~ 企業価値向上に向けたインセンティブと改革 ~

別紙1 我が国企業のプラクティス集

別紙2 会社役員賠償責任保険(D&O 保険)の実務上の検討ポイント

別紙3 法的論点に関する解釈指針

参考資料 英米における取組の概要

 

執筆:QUICK ESG研究所 菅原 晴樹

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