Sustainable Japan QUICK ESG研究所

【機関投資家】年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の平成26年度運用状況 2015/08/12 ESGコラム

【機関投資家】年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の平成26年度運用状況

 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、2015年7月10日、平成26年度運用状況について「平成26年度 業務概況書」を公表した。今回の業務概況書は、平成25年度までのものとは内容が一新され、3部構成で、「第1部 年金積立金管理運用独立行政法人について」、「第2部 平成26年度の運用状況」および「第3部 資料編」からなっている。

 平成26年度は、日本銀行の追加緩和、内外株式市場の上昇に加えて、外国為替市場における対ドル円安の影響もあり、収益率は12.27%、収益額15兆2,922億円とそれぞれ過去最高を更新した。また、年金積立金の自主運用を開始した平成13年度から平成26年度までの14年間の累積収益額は、50兆7,338億円となり、平成26年度末のGPIFの運用資産額は137兆4,769億円となった。

 平成26年度は、運用成果が好調であったことが注目されるが、その一方で、財政検証結果を受けた基本ポートフォリオの変更、ガバナンス体制の強化、中期目標・中期計画の策定、投資原則・行動規範の策定およびスチュワードシップ・コードの署名ならびにCIOの設置および投資委員会の設置等のさまざまな動きがあったことも注目したい。

 以下の通り、平成26年度の業務の概況について「業務概況書」に沿って確認していくことにする。

 

第1部       年金積立金管理運用独立行政法人について

1. 基本ポートフォリオの変更とガバナンス体制の強化

(1)  財政検証結果の公表と基本ポートフォリオの見直し

 平成26年6月年金制度について5年に一度実施される財政の現況および見通し(いわゆる「財政検証」)が公表され、併せて、基本ポートフォリオの見直しを進めた。その結果、平成26年10月31日に変更案が厚生労働大臣の認可を受けた。

(2)  運用委員会によるガバナンス体制強化の建議等

 平成26年10月運用委員会の下に「ガバナンス会議」を設置し、GPIFの「投資原則」および「行動規範」の策定およびその遵守状況の監視を行うこととした。また、今回の基本ポートフォリオの見直しに併せて、運用委員会から理事長に対し、ガバナンス体制の強化について、建議がなされた。

①    内部統制の強化

②    リスク管理体制の強化

③    専門人材の強化

(3)  運用委員会の建議への対応

①    内部統制の強化

 平成26年10月にコンプライアンス・オフィサーを任命した。さらに、平成27年1月管理運用業務に係る投資決定を統括するCIO(最高投資責任者)を設置するとともに、CIOを委員長とし、理事長および理事長が指名する者を委員とする投資委員会を設置した。

②    リスク管理体制の強化

 平成27年1月投資戦略部に運用リスク管理課を設置し、さらに平成27年5月各部から独立した運用リスク管理室に格上げした。

③    専門人材の強化

 平成27年1月運用に係る専門人材を理事に任命し、併せて、CIOを兼務させるなど組織体制を強化。平成27年2月オルタナティブ運用担当職員および運用リスク管理責任者等の公募を行った。

 

2. 中期目標・中期計画

(1)中期目標管理法人

 平成27年4月1日に施行された独立行政法人通則法により、独立行政法人は、「中期目標管理法人」、「国立研究開発法人」および「行政執行法人」の3類型に分類され、GPIFは「中期目標管理法人」に分類された。

(2)中期目標・中期計画

 主務大臣(GPIFの場合は厚生労働大臣)は、3年以上5年以下の期間において中期目標を定め、中期目標管理法人に指示する。指示を受けた法人は、当該目標を達成するための計画(中期計画)を作成し、主務大臣の認可を得なければならない。

(3)中期目標期間

 第1期はGPIFが設立された平成18年度から平成21年度、第2期が平成22年度から平成26年度、そして第3期が平成27年度から平成31年度の5年間である。いずれも最終年度は、年金制度について5年に一度実施される財政検証の年となっている。

(4)年金積立金の管理および運用の基本的な方針

 年金積立金の運用は、厚生年金保険法第79条の2および年金積立金管理運用独立行政法人法第20条第2項等に規定される「専ら厚生年金保険の被保険者の利益のために、長期的な観点から安全かつ効率的に行うことにより、将来にわたって年金事業の運営の安定に資することを目的とし、年金積立金の管理および運用の具体的方針を策定して行う」こととされている。

 これを受けて、中期計画では、分散投資を基本として、長期的な観点からの基本ポートフォリオを策定することが定められている。なお、第3期中期計画では、平成27年10月の厚生年金一元化を踏まえて、基本ポートフォリオの策定に当たっては、管理運用主体(GPIFおよび3共済)が共同して定めるモデルポートフォリオを参酌することになっている。

(5)運用の目標、リスク管理、透明性の向上等

 第3期中期目標では、原則としてパッシブ運用とアクティブ運用を併用すること、ただし、アクティブ運用については過去の運用実績も勘案し、超過収益が獲得できるとの期待を裏付ける十分な根拠を得ることを前提に行うこと、株式運用においては収益確保のため非財務的要素であるESG(環境、社会、ガバナンス)を考慮することについて検討することなどが定められた。

(6)基本ポートフォリオ

 平成26年10月31日から、第2期中期計画を変更し、基本ポートフォリオを次のように定め、第3期中期計画においても継続している。

 国内債券35%(±10%)、国内株式25%(±9%)、外国債券15%(±4%)、外国株式25%(±8%)

(注)( )内の数字は、乖離許容幅を表す。

(7)年金積立金の管理および運用に関し順守すべき事項

 株主等の長期的な利益の最大化を目指す観点から、株主議決権の行使等の適切な対応を行うこと、また、その際、日本版スチュワードシップ・コードを踏まえ、スチュワードシップ責任を果たす上での基本的な方針に沿った対応を行うこと、また、企業経営等に与える影響を考慮し、株式運用において個別銘柄の選択は行わないことが定められている。

(8)管理および運用能力の向上、業務運営の効率化等

 高度で専門的な人材の受入れに伴う環境整備を図ることとした。オルタナティブ投資に関するリスク管理を含めたポートフォリオ全体のリスク管理システムについて、費用対効果を勘案した上で、自ら開発することを含めて検討することとした。

 

3. 投資原則・行動規範

 GPIFでは、運用委員会からの建議を踏まえ、内部統制の強化の一環として、平成27年3月に「投資原則」および「行動規範」を策定した。

(1)投資原則

① 年金事業の運営の安定に資するよう、専ら被保険者の利益のため、長期的観点から、年金財政上必要な利回りを最低限のリスクで確保することを目標とする。

② 資産、地域、時間等を分散して投資することを基本とし、短期的には市場価格の変動等はあるものの、長い投資期間を活かして、より安定的に、より効率的に獲得し、年金給付に必要な流動性を確保する。

③ 基本ポートフォリオを策定し、資産全体、各資産クラス、各運用受託機関等のそれぞれの段階でリスク管理を行うとともに、パッシブ運用とアクティブ運用を併用し、資産クラスごとにベンチマーク収益率(市場平均収益率)を確保しつつ、収益を生み出す投資機会の発掘に努める。

株式投資においては、スチュワードシップ責任を果たすような様々な活動を通じて被保険者のために中長期的な投資収益の拡大を図る。

(2)行動規範

① 社会的な使命

② 受託者としての責任

③ 法令等の遵守と高い職業倫理の保持

④ 秘密保持義務の遵守と保有財産の保護

⑤ 自己または第三者の利益追求の禁止

⑥ 公正な取引

⑦ 適切な情報開示

⑧ 個人の働きと組織の発展

⑨ 違法行為、不正行為の報告

 

4.組織

(1)2015年5月9日現在、役員は理事長、理事2名(総務・企画等担当、管理運用業務担当兼CIO)および監事2名、職員は79名。

(2)組織は、管理部、企画部、運用リスク管理室、情報システム部、投資戦略部、運用部、インハウス運用室および理事長直属の監査室。

(3)前年度の業務概況書に記載された組織と比較すると、理事が1名増、運用リスク管理室および投資戦略部が新設されている。また、運用部内にオルタナティブ投資課が設けられた。

 

第2部 平成26年度の運用状況

1.資産全体

(1)運用実績

① 収益率:全資産においてプラスとなり、12.27%となった。

② 収益額:全資産においてプラスとなり、15兆2922億円となった。

③ 累積収益額:自主運用を開始した平成13年度から平成26年度までの14年間の累積収益額は、50兆7338億円となり、平成26年度末の運用資産額は137兆4769億円となった。

④ 年金財政上求められる運用利回りとの比較:名目運用利回りから名目賃金上昇率を差し引いた「実質的な運用利回り」は、自主運用を開始した平成13年度以降、14年間で平均3.11%となっており、財政上の前提である実質的な利回りを0.25%上回っている。

⑤ 運用手数料:291億円で平均残高比0.02%

 

(2)資産構成割合の管理

① 基本ポートフォリオ

  ア. 運用目標:実質的な運用利回り(運用利回りから名目賃金上昇率を差し引いたもの)1.7%を最低限のリスクで確保すること。

  イ.  想定運用期間:積立金の水準が最も高くなり、継続的に低下が始まる前までの25年間としている。

② 運用資産額・構成割合(平成26年度末)

資産区分 時価総額 構成割合

基本ポートフォリオ

構成比

国内債券 56兆7037億円 39.39%

35%(±10%)

国内株式 31兆6704億円 22.00% 25%(±9%)
外国債券 18兆1815億円 12.63% 15%(±4%)
外国株式 30兆 772億円 20.89% 25%(±8%)
短期資産 7兆3181億円 5.08% –%(–%)
合計 143兆9509億円  100%  –

(注)1. 各アセットクラスは2014年10月31日付で変更された上記右欄の基本ポートフォリオに近づきつつあり、許容限度の範囲内に収まっている。

(注) 2. 平成26年度中の資金の増減は、国内債券▲15.2兆円、国内株式+3.9兆円、外国債券+2.3兆円、外国株式+5.6兆円

 

③  債券運用

  ア. 国内債券運用におけるベンチマークに対する超過収益率は、-0.04%(アクティブ運用+0.11%、パッシブ運用-0.06%)となった。

  イ. 外国債券運用におけるベンチマークに対する超過収益率は、+0.03%(アクティブ運用+0.32%、パッシブ運用-0.09%)となった。

④  株式運用

  ア. 国内株式運用におけるベンチマークに対する超過収益率は、-0.21%(アクティブ運用-1.13%、パッシブ運用-0.08%)となった。

  イ. 外国株式運用におけるベンチマークに対する超過収益率は、-0.04%(アクティブ運用-0.44%、パッシブ運用-0.00%)となった。

     ウ. スチュワードシップ責任については、日本版スチュワードシップ・コード(以下「コード」という。)を実施するため、「スチュワードシップ責任を果たすための方針」を策定し、2014年5月30日に公表。2014年度のスチュワードシップ責任実施状況は、第1四半期の運用受託機関における活動を把握するため、ヒアリング等を実施し、その結果を「コードへの対応状況及び株主議決権行使状況の概要」として2015年1月30日、公表した。また、スチュワードシップ責任およびESG投資のあり方について、外部の調査研究機関に委託することにより、調査研究を実施した。

 

第3部 資料編

1.パッシブ運用およびアクティブ運用の割合(市場運用分)

資産区分 パッシブ運用 アクティブ運用(前年度末比)
国内債券 86.10% 13.90% (+4.03%)
国内株式 86.71% 13.29% (+0.98%)
外国債券 69.85% 30.15% (+1.85%)
外国株式 88.05% 11.95% (1.32%)
合計 83.91% 16.09% (2.09%)

 前年度末に比べて、各アセットクラスとも若干アクティブ比率が高くなり、合計ベースで約2%アップしている。

 

2.パッシブ運用およびアクティブ運用別ファンド数

資産区分 パッシブ運用 アクティブ運用
国内債券 6ファンド 9ファンド
国内株式 10ファンド 17ファンド
外国債券 6ファンド 7ファンド
外国株式 6ファンド 15ファンド
合計 28ファンド 48ファンド

 前年度末に比べて、国内株式のアクティブファンドが3ファンド増加した以外は他のアセットクラスはファンド数に変動なし。

 

出所: GPIF 平成26年度 業務概況書

【関連サイト】年金積立金管理運用独立行政法人

執筆:QUICK ESG研究所 菅原 晴樹

Facebookコメント (0)

ページ上部へ戻る