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【政府・レギュレーションの動向】台風シーズン到来~雨水(あまみず)の利用の推進に関する法律~ 2015/08/21 ESGコラム

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 本格的な台風シーズンの到来である。今年は7月までに既に13個の台風が発生し、8月26日時点で16個となっている。気象庁の台風統計資料によれば、2005年から2014年までの過去10年間の8月までの平均台風発生件数は12件であり、早いペースと言える[1]。その影響によるものか、九州、北海道等では降水量も平年を大きく上回っている。貯水量を見ても、東京の水源の8割を占める利根川水系および荒川水系と2割を占める多摩川水系の貯水率は90%前後であり、流域の7月の降水量も平年以上である。

 しかしながら、東京で1994年、1996年は給水制限が行われたことを思い起こせば、今後いつ起こるとも限らない水不足に対して常日頃から節水を意識しなければならない。

 2014年5月に「雨水の利用の推進に関する法律」が施行された。この法律は、近年の気候変動等に伴い水資源の循環の適正化に取組むことが課題となっていることを踏まえ、その一環として雨水の利用が果たす役割に鑑み、雨水の利用の推進に関し、国等の責務を明らかにするとともに、基本方針等の策定その他の必要な事項を定めることにより、雨水の利用を推進し、もって水資源の有効な利用を図り、あわせて下水道、河川等への雨水の集中的な流出の抑制に寄与することを目的としたものである。

 「雨水の利用の推進に関する法律」のポイントは次のとおりである。

(1)目的(第1条)
 雨水の利用を推進し、もって水資源の有効な利用を図り、あわせて下水道、河川等への雨水の集中的な流出の抑制に寄与。

(2)定義(第2条)
 「雨水の利用」とは、雨水を一時的に貯留するための施設に貯留された雨水を水洗便所用、散水その他の用途に使用することをいう。

(3)基本方針(第7条~9条)
 国土交通大臣が、雨水の利用の推進に関する基本方針を定める(第7条)。
 都道府県は都道府県方針(第8条)を、市町村は市町村計画を定めることができる(第9条)。

(4)目標(第10条~11条)
 国は、国及び独立行政法人等が建築物を整備する場合における自らの雨水の利用のための施設の設置に関する目標を定め(第10条)、地方公共団体及び地方独立行政法人は建築物を整備する場合における自らの雨水の利用のための施設の設置に関する目標を定め、公表するよう努めるものとする(第11条)。

<参考1>

 その後、2015年3月に「雨水の利用の推進に関する法律」第7条に基づいて、国土交通大臣は、「雨水の利用の推進に関する基本方針」(以下「基本方針」という。)を定めた。この基本方針では、次の事項を定めている。

(1)雨水の利用の推進の意義に関する事項
(2)雨水の利用の方法(これに係る雨水の貯留の方法を含む。以下同じ。)に関する基本的な事項
(3)健康への悪影響の防止その他の雨水の利用に際し配慮すべき事項
(4)雨水の利用の推進に関する施策に係る基本的な事項
(5)その他雨水の利用の推進に関する重要事項

<参考2>

 また、併せて「雨水の利用の推進に関する法律」第10条に基づいて、国は、国および独立行政法人等が建築物を整備する場合における自らの雨水の利用のための施設の設置に関する目標を定めた。

 国及び独立行政法人等は、建築物を新たに建設するに当たり、その最 下階床下等に雨水の一時的な貯留に活用できる空間を有する場合、雨水利用施設の設置率を原則100%とする。

<参考3>

 この法律に基づいて、雨水の利用のための施設(集水施設、貯留施設、処理施設、給水施設等)を設置するに際しては、いくつかの留意点がある。

・集水場所の選定に当たっては、集水面の汚濁を回避する手立てが必要である。

・貯留施設は、防水性、耐久性が求められ、外部からのごみ等の侵入を防止するほか、清掃等の維持管理が容易な構造となるようにしなければならない。

・処理施設は、水質の確保、コスト、維持管理等を勘案しなければならない。

・給水施設は、飲料水の設備と区別した専用の設備でなければならない。

 さらに、衛生的環境への配慮も必要であり、昨年、東京都立代々木公園等で感染事例が発生したデング熱は国内では生息していないネッタイシマカおよび日本のほとんどの地域(秋田県および岩手県以南)に分布するヒトスジシマカ等の蚊が媒介するものであり、その幼虫は溜まった水などに発生する。維持管理ができない不用意な集水および貯留等は避けなければならない。

 この法律は、国および独立行政法人が自らの雨水の利用を推進するものであり、地方公共団体および地方独立行政法人は、基本方針を参考として、雨水の利用の推進に努めるものとしている。事業者および国民は、基本方針を参考として、自らの雨水の利用に努め、国等の推進施策に協力するよう努めるとある。雨水の利用は積極的に取り組まなければならないが、維持管理の難しさを十分理解したうえで対応する必要がある。

執筆:QUICK ESG研究所 菅原 晴樹

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