Sustainable Japan QUICK ESG研究所

【政府・レギュレーションの動向】日本版スチュワードシップ・コードの受入れ表明(第6回)について 2015/09/14 ESGコラム

 「日本版スチュワードシップ・コードに関する有識者検討会」(座長 神作裕之教授)が、2014年2月27日に「『責任ある機関投資家の諸原則』≪日本版スチュワードシップ・コード≫~投資と対話を通じて企業の持続的成長を促すために~」を策定・公表して以来、本コードの受入れを表明した機関投資家のリストの公表も今回で6回目となった。

 2015年8月末までに受入れ表明した機関投資家は197 機関(第5回から+6)となった。 その業態別内訳では、信託銀行等7第(5回から変動なし)、投信・投資顧問会社等 139(第5回から+6 )、生保17(第5回から変動なし)、損保4(第5回から変動なし)、年金基金等23(第5回から変動なし )、その他(議決権行使助言会社)7(第5 回から変動なし)である。さらに、年金基金等をみると公的年金等が15、企業年金が6、海外基金が2と、依然として企業年金基金の数が極めて少なく、2015年5月末から増えていない。

 本コードの策定目的は、機関投資家と投資対象先企業との間で、建設的な目的を持った対話と議決権行使を進めることにより、投資先企業の持続的成長を促し、中長期的な企業価値の向上を図るため、ひいては、アセットオーナー更には、年金制度加入者および受給権者の利益に資することにある。従来、機関投資家と投資先企業との間で、企業理念、経営ビジョン、中長期の視点に立った経営戦略およびそこに内在するコーポレートガバナンスの問題、地球温暖化対策などの環境問題および人権・児童労働、紛争鉱物をはじめとする社会問題、いわゆる「 ESG (環境、社会、統治)」をどう捉えているか、また、今後どのように対処していくのかについて、相互間で十分な議論が行われることはなかったと思われる。

 スチュワードシップ・コード受入れを表明した内外併せた197機関は、コードとスチュワードシップ責任を果たすための方針に基づいて、今まで以上に踏み込んだ対話を目指すべく、エンゲージメントそして議決権行使のための社内体制・教育の確立を含めて対応に努めている。その一つの表れが、 2015年6月8日に発足した新しい投資家団体「投資家フォーラム」で、機関投資家が投資先企業との「目的を持った対話」や、その他のスチュワードシップ責任を適切に果たす実力を備えることを支援し、もって機関投資家と投資先企業との建設的な対話を実現し、企業の持続的成長に貢献することを目的とするものである。

 その際に重要となるのが、対象先企業の公開情報に基づく「ESG情報」「ESG評価」であり、対象企業のどのような項目がセクター内で優位性があり、他方、劣後しているのか、それが今後の経営戦略、事業展開において、プラスなのか、それとも潜在するリスクなのかを念頭に置いて、企業側と「建設的な目的を持った対話」を進め、当該企業の将来の成長を確実にする方向性を確認することが、スチュワードシップ・コードに基づく「エンゲージメント」である。しかしながら、対話が経営戦略等に反映されない場合、機関投資家は、出口戦略としての「議決権行使」により、意思表示を行うことになる。

 2015年6月1日には「コーポレートガバナンス・コード」が東証上場規程に織り込まれ、上場会社は、様々なステークホルダーとの適切な協働を進めるうえで、 ESG問題への積極的・能動的な対応が不可欠であり、今後、「ESG情報」の開示が一層促進されるとともにその情報に対する企業の説明責任が重要な課題となろう。

 機関投資家は、限られた時間、マンパワー、そしてコストの中で、効率的なエンゲージメントを進めなければならない。そのために、機関投資家は、公平な立場で評価された「ESG情報」「ESG評価」を十分に 活用し、質の高い「対話」をすることにより、インベストメント・チェーンの好循環を醸し出す一端を担う主体として重要な役割が期待される。

 次回は、2015年11月30日までの状況について、12月上旬に公表される予定であるが、署名できるアセットマネジャーも飽和状態に近づいており、今後の普及は企業年金基金がどれだけスチュワードシップ・コードを受入れるかにかかっている。現在、主要な企業年金基金10基金程度が「スチュワードシップ・コード」に関する研究会を開催しており、年末には報告書をまとめ、企業年金基金全体に対する啓蒙活動を行うと聞いている。この動きが、企業年金基金がスチュワードシップ・コードを受け入れる契機となるのではないかと期待している。

機関投資家数の推移

【参考サイト】 金融庁 ,  投資家フォーラム

執筆:QUICK ESG研究所 菅原 晴樹

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