Sustainable Japan QUICK ESG研究所

【機関投資家】スチュワードシップ活動とESG投資の最前線〜(3)T&Dアセットマネジメント〜 2015/10/27 ESGレポート

[080616] T&D和文横1(株なし)

 「日本版スチュワードシップ・コード」の適用が本格化する中、機関投資家はスチュワードシップ責任を具体的にどのように遂行しているのだろうか。T&D保険グループの資産運用会社であるT&Dアセットマネジメントに責任投資の最新状況を聞いた。

 T&Dアセットマネジメントは、太陽生命保険、大同生命保険およびT&Dフィナンシャル生命保険の3社を中核とするT&D保険グループの資産運用関連事業を担っている。運用資産残高は1兆7235億円(2015年3月31日現在)、責任投資原則(PRI:Principles for Responsible Investment)には2012年に署名。また、T&D保険グル―プは「T&D保険グループCSR憲章」に基づき、グループ各社が協力して、事業活動を通じて社会的課題の解決に貢献する取り組みを進めている。

 山中清執行役員運用統括部長と瀬尾周一運用統括部調査企画担当部長に、T&DアセットマネジメントのESG投資と日本でのスチュワードシップ活動についてインタビューした。山中氏は同社のESG運用戦略を統括している。

 同社のESG投資とスチュワードシップ活動の特徴として、次のような点があげられる。

◆「できることから始める」というスタンスで、ESG投資の実践に備えた検討準備に4年前から着手。検討の成果として、具体的には今年7月から「T&D 日本株式ESGリサーチファンド」を立ち上げ、T&D保険グループの資産運用向けの日本株運用を開始。

◆非財務情報に基づくESG投資は中長期の時間軸でその成果を評価。

◆現在、3名のESGアナリストが、約50銘柄の日本企業について非財務情報の角度から分析調査し、ESGレーティングを5段階で総合評価。調査レポートの作成には1銘柄あたり2ヵ月程度要している。

◆企業との対話(エンゲージメント)は、株主総会前に議案の説明を受けたうえで、自分たちの考えを伝える時もあるが、議決権行使後に議案への反対票を投じた理由を伝え、善処を促すことが少なくない。

◆CSRレポートなどの公開情報は実態をよく見せようとする一種の企業アピールの色彩が強いが、その点も踏まえて読み込み、エンゲージメントの材料にしている。

以下、インタビュー内容をQ&A形式でまとめた。

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(写真)向かって右側が山中氏、左が瀬尾氏

質問

1. 歴史/経緯

(Q)責任投資を巡る大まかな歩み(例えば、PRI署名など)や取り組みと、その背景・狙いを具体的に教えてください。また、日本版スチュワードシップ・コードの受け入れにおいて、特徴や独自性を教えてください。

(A)当社はT&D保険グループの資産運用会社であり、太陽生命・大同生命がグループとして一体化するのに先立ち各保険会社の傘下にあった運用会社が合併して設立された。保険会社の資金を一部運用するとともに年金資金を運用している。資産規模は1兆7000億円で、日本株は2500億円程度。パッシブとアクティブの比率は約半々で、バリュー株運用を得意とする。最小分散投資(低ボラティリティ運用戦略)などのクオンツ運用が全体の約10%、ESG投資の資産規模は全体の数%である。

 責任投資は、当社CIOのチャールズ=ヤン(元CFA Institute[1]の理事会議長)が「ESG」の考え方を運用に取り入れることを提案したことがきっかけとなり、推進してきた。手始めに米国の大手SRI運用会社のDomini Social Investments社(以下、ドミニ社)と2011年にアドバイザリー契約を結び、ESGのノウハウを学んで蓄積してきた。その過程で、2012年にはPRIに署名している。ESG投資を十分に検討しないで実行に移すことはせず、ドミニ社との月に一回の定期的な会議を通して、ESGに対する考え方を確立し、独自の方針を見定め、今年ESG投資を開始するに至った。

 日本版スチュワードシップ・コードの受け入れ時にまず考えたのは、当社は150名規模の会社であり、運用人員が限られているため、「できることから始めていく」ということだ。そして、経験を積みながら徐々に望ましい方法を考え、実践を重ねていくことが重要だと考えている。今はまさに、この1年の実績を踏まえてスチュワードシップ責任を果たすための方針と体制の見直しを図っているところだ。

2. 調査業務の体制

(Q)責任投資に関わる調査業務の全体像を教えてください(具体的には、組織、体制、専任担当者の配置や役割、トレーニング、調査手法、PRIネットワークへの参加姿勢など)。

(A)ESGの調査業務の体制は4年前に発足した。現在は運用統括部内にESG専任アナリスト3名が従事し、スチュワードシップ活動は別の議決権行使担当者2名が中心となり実施している。

 ESGアナリストは企業分析には詳しくても、ESG調査を始める段階で全ての産業や業界を知り尽くしている訳ではない。そのため、調査対象企業が決定すると、その業界全体に対する理解を深め、独自のアプローチで企業を調査している。調査から評価レポートにまとめるまでの期間は1企業につき2ヵ月程度を要している。

 日本版スチュワードシップ・コード受け入れを表明したことで、議決権行使やエンゲージメントなどの活動を統合し、包括的なスチュワードシップ活動として展開している。

 ESGアナリストとは別に、財務など企業を掘り下げて分析するアナリストもいる。例えばグローバル株式運用部のアクティブ運用グループ内では日本株アナリストを3名配置して調査活動を行っており、その中で必要に応じたエンゲージメント活動も行っている。

3. ESG情報の具体的な投資への活用

(Q)責任投資において、ESG情報および非財務情報について、その活用方法を教えてください。その中で、企業の経営戦略・理念、ESG・非財務情報全般などの区別と分類が明確になっていますか。財務情報と関連付けした活用(インテグレーション)などについて、具体的にその内容を教えて下さい。

(A)ESG投資の対象は日本企業であり、株式が中心だが、社債についても調査を開始した。社債投資では、ESGを取り入れたクレジット運用を試験的に検討しているところだ。

 株式について具体的には、まず東証に上場している銘柄を財務基準でスクリーニングにかけ、次に定性的な基準で調査対象を絞り込んでいく。定性的な基準とは、例えば企業の強みがどこにあるか、財務的な安全性や収益の根源がどこにあるかなどだ。絞り込んだ企業の中で、ESGの観点で投資可能と位置付けられる企業に評価レーティングを付与していく。ESG評価対象企業はそれほど多くはなく、昨年度で約30銘柄、今年度で累計50銘柄強を評価した。

 ESGの評価手法は完全に定性評価であり、「ビジネスモデル評価」と「ステークホルダーリレーションシップ評価」という2つの軸で見ている。
 「ビジネスモデル評価」では、ESGの観点からビジネスモデルをA~Eの5段階で評価している。企業が属する産業基礎評価を実施しており、GICS[3]に準ずる独自の産業分類で区分し、該当産業のビジネスモデルがESGからみてプラスなのかマイナスなのか評価している。例えばタバコなどは除外し、環境に被害を与えるビジネスはマイナス評価する。ヘルスケア関係で言えば、アンメットメディカルニーズ[2]や新興国のニーズに対応できるかなどを注視している。

 「ステークホルダー リレーションシップ評価」では、ステークホルダーとの関係が良好に保たれているのかどうか、ESGの切り口から1~5の5段階で評価する。評価項目には「従業員」と「消費者」に関する項目があるが、産業・企業ごとにフォーカスするポイントが異なるため、ドミニ社の考え方をもとに、ESGアナリストが独自に評価項目を決めている。この2つの評価に加え、体制よりも質を重視した「ガバナンス体制評価」をあわせて、A~Eの5段階の総合評価としている。総合評価がAに近いほど評価が高く、A~Cが投資推奨銘柄の扱いとなる。

 ESGアナリストは、総合評価と調査内容を記載したレポートを作成する。加えて、企業ごとの重要テーマを絞り込み、ビジネスモデル評価項目やステークホルダー・リレーションシップ評価項目の中から優先順位をつけ、注目事項としていくつかの項目をピックアップしている。運用責任者のファンドマネージャーはそのレポートを参考に、自身の判断でポートフォリオに反映するかどうかを決める。

 このようなESG投資スタイルは当社独自のものであり、ドミニ社との提携は、ESG投資を開始するまでのスピードを速めることにつながった。欧米流のESG投資は経営者が不祥事を起こさないよう牽制し、かつ投資によって世の中が環境・社会的に良くなることをモニタリングするものであり、日本版スチュワードシップ・コードは経営者に適切なリスクをとるようにモニタリングする「攻めのガバナンス」である。当社では現在、両方をうまく統合している最中だ。

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出所:T&Dアセットマネジメント株式会社

4. エンゲージメントなどの対応

(Q)責任投資において、日本版スチュワードシップ・コード受け入れへの対応、特に、企業とのエンゲージメントをどのように実践していますか。具体的な内容をできれば事例に即して教えてください。

(A)当社のエンゲージメントは、株主総会前に議案の説明を受けたうえで、自分たちの考えを伝えるケースもあるが、議決権行使後に議案への反対票を投じた理由を伝え、善処を促すことが少なくない。

 株主総会後にエンゲージメントを行う理由は、企業は議案への反対に敏感だからである。例えば、買収防衛策は反対票が多いから取り下げることを検討する企業が増えてきている。株主総会後は、このような企業との対話がしやすい。

 エンゲージメント内容の具体例として、取締役会の評価を自社で開始した会社に、第三者からの評価を取り入れることが一般的であることを提言したケース、社外取締役について提言したケース、社外取締役がCSRレポートやアニュアルレポートにメッセージを掲載する、あるいは決算説明会に臨席してもらい、何らかの形で企業の説明をして欲しいことを伝えたケースなどもある。エンゲージメントをする立場からすると、社外取締役がどういう形で企業と株主に貢献しているかを知りたい。中小型株企業では社長と直接エンゲージメントすることが多い。

 株式投資の時間軸は短期ではなく長期に重点を置いている。これは「ESGの運用」と呼ばずに「ESGの投資」と呼んでいることにも表れており、「投資」するなら5年程度は保有し続けるつもりで銘柄を評価しなければいけないと考えている。長期というのは中期経営計画よりも先の長い期間を見据えることと同義であり、非財務情報の重要性が増す。このような中長期の時間軸ではESG投資が活かされ、この時間軸の考え方は保険会社の資産運用方針と親和性があると感じている。

5. 議決権行使基準

(Q)責任投資において、日本版スチュワードシップ・コード受け入れへの対応、特に、議決権行使に関する実践方法を教えてください。
(A)昨年から今年にかけて、会社法の改正や日本版スチュワードシップ・コード、コーポレートガバナンス・コードが施行され、このような改正や方針に沿うように、2015年5月に議決権行使方針を刷新し、今年は新基準に則って議決権を行使した。

 例えば、今年の6月から監査委員会等設置会社形態が認められている。基本的には賛成姿勢なのだが、同時に抱き合わせのようにして、取締役への重要業務の委任などが提案されている。こういう場合、賛否どちらで投票すべきかなどを企業の事情を調べ、議決権を行使している。

 今年は社外取締役に関する問題意識を高くし、企業と対話しながら議決権を行使した。社外取締役の適切な人数として、会社法では最低1人、コーポレートガバナンス・コードに従うと2人以上とされているが、企業としては実際に適切な人材が見つけにくいなど個別の事情もあるため、実態に即した賛否の判断をしている。他に、社外取締役が機能するためのインセンティブが正常に働いているか、不適切な報酬が定められていないかも検討対象だ。当然、社外取締役の経営陣からの独立性がしっかり確保されているかは重要であり、過去の経歴を詳しく調査して、疑わしいと判断した場合には反対票を投じる。

 独立性に関して、賛否のボーダーライン上にある案件は継続検討していく必要がある。例えば、銀行業を離れて数年は経っているものの、元メインバンクの出身者が社外取締役候補だった時、これを独立性があるとみなすかなどだ。500社程度の保有株のうち、ボーダーライン上の案件は来年度の行使時期のピークに向けて持ち越し、検討を継続していく。規制などの外部環境や事業会社の対応など周囲の話も取り入れながら検討する。

 他にも社外取締役に関する検討項目は多い。社外監査役が社外取締役に横滑りしたパターンなどはそのまま否とは評価せずに、その社外監査役の会社との付き合いの長さなどを判断材料としている。ボーダーライン上の人は、経営者であれば経営している企業のHPなど開示資料から情報を集めたりする。社歴の長い社外取締役であっても、対話時に会社に必要な理由を社長自身が明確に答えられる方は賛成している。また、社外監査役の在任年数が多少オーバーしていても、その理由がはっきりしていれば賛成できる。対話時に「社外取締役として適任者は引く手あまたなので、取締役会の出席比率が低くなる場合があるが、それは認められるか?」などの質問を受けたが、常識的な出席率を望むと回答した。このようなやり取りを通して投資家と企業の間で、社外取締役に対する認識が共有化できる。

 特に今年はコーポレートガバナンス・コード施行に対する企業側の関心が非常に高く、1月、2月くらいから企業側から議決権行使方針に関するヒアリングの打診を受け始めた。企業の総務部や企画部で実際にコード対応を検討する担当者は投資家が何をどういった基準で評価するのかを気にかけており、多くの対話を行った。当社もちょうど議決権行使方針を見直しているタイミングであったため、投資家と企業、双方の考え方を共有できたと感じている。

 実際、コーポレートガバナンス・コードを巡る対話が、経営方針に対して具体的な影響を及ぼした事例もある。株主総会前に役員の選任議案や候補者をあげてもらった際に意見を述べたところ、候補者が変わったケースがあった。会社法やコーポレートガバナンス・コードによる影響としては、取締役の役割や選任などを投資家がより詳細に吟味するになったことが挙げられるであろう。

6. 日本版スチュワードシップ・コード受け入れ後の変化

(Q)上記のESG情報の調査、活用、エンゲージメント、議決権行使において、昨年の日本版スチュワードシップ・コード受け入れの前後で、注力点など何か特徴的な変化はありますか。また、特に企業とのエンゲージメントにおいてESGそれぞれの観点の変化があれば教えて下さい。

(A)受け入れ後、企業との対話を強く促進できる環境となった。ESGアナリストや議決権行使担当者のみならず、アクティブ運用の財務アナリストも企業との対話を行うが、企業側が以前よりも積極的に対応してくれるようになった。

7. アセットオーナーについて

(Q)責任投資を対象とした現在の資産運用の委託者(国内、海外のアセットオーナー)層を、企業年金基金、金融機関などの区分で教えてください。また、最近のアセットオーナーにおいて、ESGをはじめとする責任投資の考え方に変化は見られますか。あるとすればどのような変化ですか。

(A)アセットオーナー側には責任投資で大きな進展はまだ見られない。ごく少数のアセットオーナーは大きな関心を持ち、投資先企業のE、S、Gすべてについて、エンゲージメントした結果を提示して欲しい、というような要望を受けることもある。しかし、こういう事例は非常に限定的である。

 年金運用の世界では、ESG投資のパフォーマンスへの影響が現段階で目に見えないため、関心がまだ高まっていないように感じる。アセットオーナーには、専門的にESGを調査している人は少ないので、パフォーマンス以外のESGの意味合いに関心を持つのは、なかなか難しいのかもしれない。

 ただ、日本版スチュワードシップ・コード、コーポレートガバナンス・コードも政府のトップダウンで始まったことであり、年金運用も変わり始めるだろう。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)など公的年金も動いてくるため、これからはアセットオーナーも徐々にESG重視の方向に変わっていくのではないだろうか。

8. 企業のディスクロージャーについて

(Q)責任投資に関して、企業が発行しているコーポレート・ガバナンス報告書、統合報告書や年次(アニュアル)レポート、CSRレポート、環境報告書などの活用状況や注目点を教えてください。現在の活用状況のみではなく、今後の活用の方向性に関する何か見通しのようなものはありますか。例えば、今年6月以降のコーポレートガバナンス・コード適用後のコーポレート・ガバナンス報告書の扱いなど。

(A)当社のESG調査では、外部の調査会社の情報を使っておらず、公開情報を基に評価している。有価証券報告書、決算発表会資料、CSRレポート、アニュアルレポート、Webサイトの情報を網羅的に読み込み、セルサイド(証券会社)のアナリストにも聞いて、そのうえで企業に質問を投げかける。CSRレポートの内容について対話時に話題にすると「ここまで読み込んでもらえているのか」と喜んでくれる企業が多い。

 一方で、CSRレポートなどの公開情報は実態をよく見せようとする一種の企業アピールの色彩が強く、それだけを信じてしまうと一面だけを見ることになってしまう恐れがある。対話時に公開情報に関して質問すると、都合の悪いことをはぐらかそうとする企業もあるが、正直にありのままを回答して欲しい。公開資料はあくまで対話やコミュニケーションのきっかけである。公開情報が多い方がコミュニケーションをとりやすい。

 統合報告やCSRレポート、アニュアルレポートは読みやすく、取り扱いやすくなることを望んでいる。膨大な量の公開情報を読むため、多くの時間を必要とする。何が優先順位が高いのか、投資家にわかるように記載してほしい。

9. 具体的なファンドの事例

(Q)責任投資をキーワードに掲げて運用しているファンドにはどのようなものがあり、その運用資産規模、アセットオーナーの属性(年金基金、金融機関の資産運用、事業法人の資産運用など)、リスクとリターン特性(配当込みTOPIXまたはTOPIXと比較)を教えてください。

(A)当社のESG投資関連ファンドとしては、2015年4月に開始した年金基金に提供している一任運用と、T&D保険グループの資産運用向けに2015年7月に開始した私募ファンド「T&D 日本株式ESGリサーチファンド」の2本(運用資産規模は計50億円程度)を運用している。

 ESGファンドには、前述の総合評価を付与した50銘柄の中から、現在A・B・Cレーティングが付与されている約30銘柄をすべて組み入れている。ファンド内での組み入れ比率(ウェイト)は、当社が日本株運用全般で使用しているリスク管理ツールによって計算したウェイトを採用している。ESG調査にかかる時間などを踏まえると、投資対象ユニバースは約60銘柄が最大になると考えている。

 両ファンドとも、まだ運用を開始したばかりで、開示できるような運用実績(トラックレコード)はない。長期的に投資するためには、ESGの観点で銘柄選別することが重要と考えて立ち上げたファンドだ。運用成績は中長期で評価されることになる。

 当社が得意とするバリュー株ファンドとこうしたESGファンドは別物だと考えている。バリュー株ファンドは割安に放置されている銘柄、つまり株価から調査を始めるが、ESGファンドは企業の質から調査を始め、中長期の視点で投資を行っていく。この視点が決定的に異なっている。

T&D 日本株式ESG運用の概要

9-1. 運用の概要  

投資対象

国内金融商品取引所上場株式

運用概要

ESGリサーチによるESG評価と個別銘柄レーティングに基づくポートフォリオ構築により、中長期的にベンチマーク(TOPIX)を上回るパフォーマンスの獲得を目指す。

投資プロセス

①定量・定性スクリーニングによる対象銘柄の絞り込み
②ESGリサーチ

・ビジネスモデル評価(事業サステナビリティと成長性)
・ステークホルダー・リレーションシップ評価
・ガバナンス評価

③ESGリサーチに基づく投資銘柄推奨
④ファンドマネージャーによるポートフォリオ構築
⑤必要に応じたエンゲージメント活動の実施(企業との対話)

9-2. 投資プロセス
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出所:T&Dアセットマネジメント株式会社

10. 投資先企業について

(Q)上記に該当するファンド、特に企業とのエンゲージメントをキーワードに掲げたファンドで実際に投資している企業に何か共通点や特徴はありますか。可能な範囲で具体的にお教え下さい。

(A)ESG調査対象企業には中堅企業が多い。大手企業は多角的な事業を行っており、ESGで良い面と悪い面の両面を持ちあわせており評価が難しい傾向がある。このため、どちらかと言うと中小型株や事業が単一でESG面での評価がしやすい、例えば医薬品業界などの企業にフォーカスして調査、エンゲージメントを行うことが多い。

11. 今後の方向性

(Q)他に、責任投資に関し、何か独自の取り組みや考え方がありますか。

(A)我々は普段、排気ガスが少ない方がいい、食品には添加物が少ない方がいい、などと日常では気をつけながら生活をしている。しかし、投資になるとその意識がどこかに飛んでしまい、何をおいても株価リターンの高い企業がいい、ということになってしまう。そのような投資姿勢に対する反省として、ESG投資の流れが欧米で始まったのではないか。この流れは日本でも一般的になるのではないかと考えている。

 当社はESGの観点は投資パフォーマンスを上げるうえでも必要だと考え、ESG調査に関するコストを負担するのは、将来報われると信じている。例えば、CO2規制を国の規制ギリギリで守っている企業Aと、国の規制以上に排出を抑える技術を開発している企業Bがあるとする。国の規制は現在の基準であり将来より厳しくなる可能性がある。先んじて取り組んでいる企業Bの方が、将来の投資パフォーマンスが良くなるはずと考えている。

 ESGの視点の重要さについて触れたい。世の中では、食品添加物や抗生物質が出回っており、日本は総じて基準が厳しいと言われている。企業によっては、日本では先進国基準で販売しているが、新興国では基準が緩いので、新興国基準で販売している会社がある。これはなぜなのだろうか。健康懸念があって日本で販売できないのであれば、新興国でも販売しないのが自然なのではないか。今は新興国で規制されていなくても、いつかは規制されるだろう。最初から新興国でも先進国基準で販売している企業を当社は高く評価するし、将来的なパフォーマンスにも良い影響があるのではないか、と考えている。今はまだそうした事例に乏しいが、今後はそうなっていくと信じている。

 当社のESGファンドは、こういった自然な考えを実践してくれそうな企業に投資するし、そのような企業とは実りある対話ができると感じている。

12. その他

(Q)他に、貴社からのメッセージがありますか。

(A)ESG志向の考え方が、資産運用の世界、アセットオーナー、一般的な個人投資にも広がることが望まれる。ESG投資のパフォーマンスがまだ多くは実証されていないので、受け入れられるのには時間がかかるかもしれないが、当社もESGの視点がなぜ重要なのか情報を発信しながら、投資先企業とエンゲージメントを行っていく中で、ESGが浸透していくことが望ましいと考えている。ESGが根付くために、ESGファンドの運用リターンを上げるよう、一層前向きに取り組んでいきたい。エンゲージメントも、質をより高めて対話していきたいと考えている。

◇ プロファイル(会社概要)
 T&Dアセットマネジメントは、太陽生命、大同生命およびT&Dフィナンシャルの生命保険会社3社を中核とするT&D保険グループの資産運用会社。2002年7月にT&D太陽大同投資顧問と大同ライフ投信の2社が合併して設立された。
◇PRI署名
 2012年に署名:PRI Public Transparency Report 2014/15
◇日本版スチュワードシップ・コード受け入れ内容:日本版スチュワードシップ・コード
◇運用資産の概要
 預かり資産総額:1兆7,235億円(2015年3月末日時点)
 資産別内訳:国内債券 30.1%、外国債券 34.7%、マネーマーケット1.0%、国内株式 13.0%、バランス型 10.2%、外国株式 4.5%、オルタナティブ 6.5%

[1] CFA Institute(=Chartered Financial Analyst Institute)
国際的な投資プロフェッショナル資格の認定機関。日本では、日本CFA協会(CFA Society of Japan)がこの支部の役割を担う。

[2]アンメットメディカルニーズ(Unmet Medical Needs)
致死率の高い癌、認知症や難病など、治癒するために有効となる医薬品や治療法がいまだ確立していない疾患に対する医療面のニーズ。

[3]GICS(Global Industry Classification Standard )
企業の世界標準での産業、業種分類。米大手格付機関のS&P社と指数提供会社のMSCI社が開発した。

取材日:2015年9月9日

執筆:QUICK ESG研究所 (聞き手:高瀬浩、菅原晴樹、真中克明)

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