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【北米コラム】職場における男女平等は達成しうる? 2015/10/28 ESGコラム

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 男女平等という概念があるが、通常これは、女性に対する差別をいかに改善するかというテーマを問うときに使われるようだ。この方面では先進的と自負している米国社会の女性進出に対する偏見を面白おかしく皮肉っているTwitterユーザーがちょっとした話題になっている。その名もmanwhohasitall(@manwhohasitall)「全てを持ち合わせた男」。才色兼備、かつ素敵な夫と行儀の良い子供に恵まれた稀有な女性をWoman who has it allと呼ぶことをもじったユーザーネームだが、コメントがたまらなく面白い。「働くお父さん?働くお父さんにとって最大の敵は罪悪感。罪悪感を克服するには、活け花の茎を下から2センチのところで45度の角度で切るに限る。」とか、「働く夫?子育て、仕事、ヘアやひじの肌荒れを上手にこなすコツ。ジャック(28歳)は、『前の晩にできるだけこなせることはこなしておく』という。参考になる!」とツイートしている。

 日本に比べて女性がキャリアを追求しやすいというイメージの強い米国ではあるが、思いのほか文化的に保守的であるというのが実感だ。ウォール・ストリート・ジャーナル紙の9月30日版は、Women in the Workplace「職場における女性」という特集を組み、米国118社の3万人近い従業員を対象に行った調査の結果を発表した。これによれば、キャリア出発点では、昇進に対する意欲は男女共に同等だったのが、時間の経過に伴い女性は人事やITなど重役レベルへの昇進の見込みの薄いキャリア・パスに進みがちという。いざ、家庭を持つようになっても昇進への意欲は絶えないものの、ストレスやプレッシャーの高いトップの地位を女性は敬遠し始めるという結果となっている。また、高度成長を維持しているハイテク産業は、とりわけ女性が前線で活躍しづらいことも注目されている。そもそも数学・科学・工学・技術(STEM)分野を大学で専攻する女性の割合は少なく、とりわけ工学・技術分野では20%程度と極めて低い(1)。

 その上、Brogrammer風土(男の子同士が兄弟のようにゲームに興じたりしながら長時間職場で働く風土で、BrothersとProgrammerをかけあわせてもじっている)の中で、女性や異文化出身の従業員は除外され孤立することが、グーグルをはじめ、シリコンバレーのハイテク企業で問題として認識され始めている。セールスフォース社は、女性管理職の登用や男女給与格差の排除を全社あげて目標にしており、話題となっている(2)。米国では、同職種でも男性が女性の28%も高い報酬を得ているというが、シリコンバレーでは、この格差はさらに甚だしく、なんと男性は女性よりも61%も高い報酬を得ているという。報酬格差の高い業種は他にもある。ウォール・ストリートで知られる金融でも、女性は男性に比38%から45%も低い報酬を強いられているという(3)。

 冒頭で書いたTwitterのmanwhohasitallも茶化しているように、女性は仕事に子育て、家事、そして「女性らしさを捨てた女」と見られないために多くの努力を払っている。女性らしくあるべき反面で、仕事に真剣に取り組んでいるという姿勢もアピールする必要がある。法定の出産休暇があるのは、全米で4州しかないが、企業が任意で出産・育児休暇制度を設定してもこれをフルに活用しない女性が多い。出産後10日ほどで職場復帰する女性は実に全体の25%にものぼるという(4)。実際にウォール・ストリートの証券会社に勤めながら5年間で4人の子供を産んだ筆者も、出産直前まで働き、10日ほどで職場復帰したが、当時は若くて職場での地位も低かったため、仕事に真剣に取り組んでいるという姿勢を見せるためには、これ以外に策がなかったように思う。産後の母体の肉体的・精神的回復や乳児の健康に重要な授乳に支障をきたすことが研究によって明らかになってきている今でも状況はあまり変わらない。今や米国では一家の大黒柱が女性である世帯が44%だという(5)。

 このような状況では、未だに昇格、給与、職場でのイメージで苦悩している女性がトップを目指さないのも分かる気がする。このような環境を企業や業界レベルで改善するには、女性の立場に深い理解を示す経営者が必須であろう。

QUICK ESG研究所 Mari Kawawa

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