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【政府・レギュレーションの動向】GPIFの国連責任投資原則(PRI)署名について 2015/10/28 ESGコラム

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 安倍首相は、9月27日「持続可能な開発のための2030アジェンダ」を採択する国連サミットの演説の中で、貧困の撲滅に向けての「質の高い成長」を追求すること。持続可能な環境・社会づくりの実現に向け、気候変動分野でCOP21におけるすべての国が参加する公平かつ実効的な国際枠組みの構築に積極的に貢献すること。それとともに、世界最大、1兆ドル規模の年金積立金を運用する我が国の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、国連責任投資原則(PRI)に署名し、持続可能な開発の実現にも貢献する、と表明した。

 9月28日には、GPIFが「9月16日、資金運用においてESG(環境、社会、ガバナンス) の視点を反映させる国連責任投資原則の署名機関になった」ことを公表した。

 GPIFが署名機関になるまでの公的年金等をめぐる環境変化およびGPIFの動きについて改めて辿ってみたい。

(1)2013年6月14日「日本再興戦略」-JAPAN is BACK- 閣議決定

 「機関投資家が、対話を通じて企業の中長期的な成長を促すなど、受託者責任を果たすための原則(日本版スチュワードシップコード)について検討し、取りまとめる。【年内に取りまとめ】

 公的・準公的資金について、各資金の規模・性格を踏まえ、運用(分散投資の促進等)、リスク管理体制等のガバナンス、株式への長期投資におけるリターン向上のための方策等に係る横断的な課題について、有識者会議において検討を進め、提言を得る。【本年秋までに結論】」

(2)2013年11月20日「公的・準公的資金の運用・リスク管理等の高度化等に関する有識者会議報告書」公表

① 運用目標・方針は国内債券を中心とする現在のポートフォリオの見直しが必要
② 運用対象の多様化を図り、分散投資を進めることを検討。アクティブ運用比率を高めることを検討すべき。ベンチマークの選択に工夫を凝らすこと等でリターンの向上を目指す。
③ 利益相反にも配慮した常勤の専門家が中心的な役割を果たす合議制により実質的な決定を行う体制
④ 日本版スチュワードシップ・コードに係る検討を踏まえた方針の策定・公表を行い、運用受託機関に対して、当該方針にのっとった対応を求めるべき。

(3)2014年2月26日「責任ある機関投資家」の諸原則 ≪日本版スチュワードシップ・コード≫ ~投資と対話を通じて企業の持続的成長を促すために~の策定

 2014年5月30日時点で受け入れを表明した機関数は127、うち年金基金は12だが、GPIFはそのうち1つとして受け入れを表明している。

 日本版スチュワードシップ・コードの受入れについて、「コード受入れの基本的な考え方およびコードの各原則への対応」を公表している。

 GPIFは2014年度のスチュワードシップ責任実施状況は、第1四半期の運用受託機関における活動を把握するため、ヒアリング等を実施し、その結果を「日本版スチュワードシップ・コードへの対応状況及び株主議決権行使状況の概要」として2015年1月30日公表した。なお、各年度の通期の状況については、業務概況書に記載されている。

(4)2014年3月31日「積立金基本指針に関する検討会報告書」公表

被用者年金制度の一元化に伴う積立金の運用にかかる積立金基本指針を定める。

株式運用において、財務的な要素に加えて、収益確保のため、非財務的要素である「ESG(環境、社会、ガバナンス)」を考慮することについて、各管理運用主体において個別に検討すること。」

(5)2014年6月24日「日本再興戦略」改訂2014 –未来への挑戦- 閣議決定

 「企業統治(コーポレートガバナンス)の強化

〇 「コーポレートガバナンス・コード」の策定

持続的成長に向けた企業の自律的な取組を促すため、東京証券取引所が、新たに「コーポレートガバナンス・コード」を策定する。上場企業に対して、当該コードにある原則を実施するか、実施しない場合はその理由の説明を求める。 【来年の株主総会のシーズンに間に合うよう策定】

〇 公的・準公的資金の運用等の見直し

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の基本ポートフォリオについて、財政検証結果を踏まえ、長期的な経済・運用環境の変化に即し、年金財政の長期的な健全性を確保するために、 適切な見直しをできるだけ速やかに実施する。

あわせて、GPIF のガバナンス体制の強化を図るため、運用委員会の体制整備や高度で専門的人材の確保等の取組を速やかに進めるとともに、今後の法改正の必要性も含めた検討を行うなど必要な施策の取組を加速すべく所要の対応を行う。

(6)2014年8月6日、伊藤レポート 「持続的成長への競争力とインセンティブ ~企業と投資家の望ましい関係構築~」プロジェクト 「最終報告書」を公表

(7)2014年10月31日、GPIFの基本ポートフォリオの見直しについて厚生労働大臣の認可

 GPIFは2014年10月31日から、第2期中期計画を変更し、基本ポートフォリオを次のように定め、2015年4月1日からスタートした第3期中期計画においても継続している。

 国内債券35%(±10%)、国内株式25%(±9%)、外国債券15%(±4%)、外国株式25%(±8%)
(注) ( )内数字は、乖離許容幅を表す。

(8)2014年11月4日、社会保障審議会年金部会に「GPIFのガバナンス体制に関する検討作業班」設置

(9)2015年3月26日、GPIFでは、運用委員会からの建議を踏まえ、内部統制の強化の一環として、「投資原則」および「行動規範」を策定した。

「投資原則
【1】年金事業の運営の安定に資するよう、専ら被保険者の利益のため、長期的観点から、年金財政上必要な利回りを最低限のリスクで確保することを目標とする。
(途中 略)
【4】株式投資においては、スチュワードシップ責任を果たすような様々な活動を通じて被保険者のために中長期的な投資収益の拡大を図る。」

(10)2015年3月31日 「GPIF第3期中期計画」について厚生労働大臣から認可

 厚生労働大臣が提示した中期目標に基づき、GPIFが策定した第3期中期計画(2015年度から5年間)が厚生労働大臣の認可を受けた。

「第3期中期目標では、原則としてパッシブ運用とアクティブ運用を併用すること、ただし、アクティブ運用については過去の運用実績も勘案し、超過収益が獲得できるとの期待を裏付ける十分な根拠を得ることを前提に行うこと、株式運用においては収益確保のため非財務的要素であるESG(環境、社会、ガバナンス)を考慮することについて検討することなどが定められた。」

(11)2015年4月1日、改正会社法施行

 取締役会の業務執行者に対する監督機能を強化するために、社外取締役をより積極的に活用すべきであるとのことから監査等委員会設置会社制度の創設等

(12)2015年6月1日、東京証券取引所「有価証券上場規則」改正

 東京証券取引所は、「コーポレートガバナンス・コードの策定に関する有識者会議」(座長 池尾和人 慶応義塾大学経済学部教授)が取りまとめた「コーポレートガバナンス・コード原案」(2015年3月5日公表)を受けて、「コーポレートガバナンス・コード」を有価証券上場規程の別添として定めるとともに関連する上場制度の整備を行った。

(13)2015年6月30日「日本再興戦略」改訂2015-未来への投資・生産性革命

 スチュワードシップ・コードの策定、コーポレートガバナンス・コードの策定(本年6月適用開始)を踏まえ、企業の攻めの経営、投資判断を促すためにコーポレートガバナンスをさらに強化・推進。

(14)GPIF「スチュワードシップ責任およびESG投資のあり方」について委託調査研究

 GPIFは2014年度委託調査研究として「スチュワードシップ責任およびESG投資のあり方についての調査研究」を、株式会社QUICKをはじめとして3社の外部の調査研究機関に委託することにより、調査研究を実施した。

(15)2015年9月上旬、ESG投資・国連投資原則勉強会 報告書

 自民党 平将明議員を中心として勉強会を行い、GPIFにESG投資の採用を要請

(16)2015年9月16日、GPIF「国連責任投資原則」署名

(17)2015年10月1日、被用者年金一元化

 三共済(国家公務員共済組合連合会、地方公務員共済組合連合会および私学共済)が厚生年金に一元化された。それに合わせて、GPIFの管理運用の方針を定め、2015年10月1日から適用した。

「(5)株式運用における考慮事項
 株式運用において、財務的な要素に加えて、収益確保のため、ESG(環境、社会、ガバナンス)を含めた非財務的要素を考慮することについても、資金運用について一般に認められている専門的な知見に基づき、検討する。」

(18)2010年12月16日、日本労働組合総連合会(連合)「 ワーカーズキャピタルに関する連合の考え方 および 「ワーカーズキャピタル責任投資ガイドライン」

 企業年金においては、「日本版スチュワードシップ・コード」の受け入れや責任投資の実践であまり進展がみられていないことから、連合は、2015年9月に近年の動向を反映したガイドラインの改訂を行った。

 以上のように、GPIFがPRIに署名し、被用者年金一元化も実現したことから国家公務員共済組合連合会等三共済はもちろんのこと、機関投資家および企業年金基金もPRI署名を積極的に検討開始すると思われる。これらの動きによって、欧州および米国から大きく後れを取っている日本のESG投資もメインストリームとなっていくことが期待される。

(注)本文中、下線はQUICKが付したものです。

【関連サイト】
国連責任投資原則への署名について(GPIFプレスリリース 2015年9月28日)
「スチュワードシップ責任を果たすための方針」を更新(GPIF 2015年9月10日)
日本版スチュワードシップ・コードの受入れについて(GPIF 2014年5月30日)
ESG 投資・国連投資原則勉強会 報告書(平 将明議員HP 2015年9月9日)

QUICK ESG研究所 菅原 晴樹

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