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【アメリカ】米労働省、ETIsおよびESG投資戦略に関するIB 2015-01を公表 2015/11/15 ESG

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 米労働省のEBSA(Employee Benefits Security Administration:従業員給付保障局)は10月22日、ETIs(Economically Targeted Investments:経済的目的投資)およびESG要因を考慮した投資戦略に関する新たな解釈公報(IB 2015-01)を公表した。IB 2015-01は、米国の企業年金や福利厚生制度に関する連邦法のERISA法(従業員退職所得保障法)下における、ETIs・ESG投資戦略と受託者責任に関する米労働省の見解をまとめたものだ。ETIsとは受益者の利益最大化と同時に社会・経済への利益創出も目指す投資のことを指す。

 米労働省はIB 2015-01の中で、ESG要因は投資の経済的・財務価値と直接的な関係性がある可能性があり、その場合ESG要因は運用の際に考慮すべき適切な要素となるとの見解を示した。また、受託者は受益者の利益を守るために期待リターンが低い投資やハイリスクな手法を取るべきではないとしつつ、受益者の利益を損なわない限りにおいてESG要因を考慮に入れてよいとしている。さらに、慎重な検討の上でESG投資が純粋に投資リターンの観点から考えても正当化されるという結論に達した場合、運用益の最大化と経済・社会の利益最大化を天秤にかける必要はないとの解釈を提示している。

 もともと米労働省は1994年に公表したIB94-1の中で、当時一般的に認識されていた「ETIsに基づく投資はERISA法の定める信託義務に反する」という誤解を正すための解釈を示していた。しかし、同省は2008年10月に新たにIB94-1に代わってIB2008-01を公表し、受託者が投資判断の際にESG等の非財務要因を考慮することは稀であるべきであり、もしそれらの要素を考慮する場合はERISA法の受託者義務に違反していないことを明確に記述するべきだとの解釈を示し、方針を転換した。

 このIB2008-01の公表から7年が経過し、今回労働省は改めてIB2008-01は過度にETIsやESG要因の考慮を抑制しており、それらの投資が運用益最大化の観点から考えても適した手法だと認められる場合においてもETIsやESGを考慮することを妨げてきたという認識を示した上で、IB 2015-01を公表するに至った。

 IB 2015-01の公表にあたり、責任投資を推進するPRI(国連責任投資原則)はこの動きを米国の責任投資にとって大きなブレークスルーとなる動きであり、米労働省がESGの重要性を認識しているという明確なメッセージの発信だとして歓迎の意を示した。

 PRIおよびUNEP FIは今回の公表に先立って10月1日に、ニューヨークのMorgan Stanley Institute for Sustainable Investing(モルガンスタンレー・サステナビリティ投資研究所)において責任投資と受託者義務に関する報告書、”Fiduciary duty in the 21st century“を公表している。同報告書は、長らく議論されてきた「受託者義務が投資家によるESG要因の統合の法的な障壁になるか」という問題についての議論を終焉させることを目的として発行されたものだ。報告書の中で、PRIらは投資家や法律家、政策立案者らに対するヒアリングをベースに、ESG課題を含む長期的な投資価値要因を考慮しないことこそが受託者義務に反することだとの結論を示している。

 また、PRIは同レポートの中で機関投資家や証券取引所、政策立案者らに加えて米国を含む8カ国に対し、その国固有の課題に立ち向かうための行動をとることを提案していたが、その中でも米国に対する提案として、米労働省は年金受益者が公平な方法で持続可能な退職後の所得を受け取れるよう、受託者義務として運用機関にはリスクを考慮した長期的なアプローチが求められることを明示すべきだと指摘していた。また、運用機関は投資判断の際にESGも含む長期的用意に関心を向けるべきであり、投資先の会社に対しては積極的なエンゲージメントを行うことが期待されていることも明示すべきだとしている。

 今回のIB 2015-01公表により、今後米国においてはさらにESG投資が加速することが予想される。日本においても先日GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がPRIに署名し、ESG投資を運用戦略に据えることを公表したばかりだが(参考記事:【日本】GPIF、国連責任投資原則(PRI)に署名)、既に世界ではESGの考慮は運用益の最大化とトレードオフなのではなく、受益者の利益最大化のために不可欠な要素だという考え方がスタンダードになりつつある。

【公報ダウンロード】IB 2015-01
【参照リリース】U.S. Department of Labor Employee Benefits Security Administration
【参照リリース】US Department of Labor clarifies ERISA fiduciaries’ ability to consider ESG factors

株式会社QUICK ESG研究所

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