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【イギリス】気候変動により世界は短期的に45%の資産を失う可能性。ケンブリッジ大学調査 2015/12/04 ESG

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 ケンブリッジ大学サステナビリティ・リーダーシップ・インスティテュート(以下、CISL)は11月12日、 気候変動が金融市場にもたらす短期的な影響についてまとめた報告書、”Unhedgeable risk: How climate change sentiment impacts investment “を公表した。同報告書によると、気候変動に関連する情報が投資家心理に影響を与えることで、世界の投資ポートフォリオは短期間で最大45%の資産を失う可能性があるという。また、この損失のうち約半分はポートフォリオの見直しにより回避できるものの、残りの半分は気候変動対策がシステム全体として機能しない限り、ヘッジ不可能だと警告している。

 気候変動が長期的な経済パフォーマンスに与える直接的・物理的な影響については既にいくつも研究が存在するものの、政策決定や新技術、異常気象など、気候変動に関連する情報に対する投資家の反応が元となって生まれる短期的な投資リスクに焦点をあてた研究は、今回のCISLらによるものが初めてとなる。

 本報告書では、Two Degrees(2度:地球の温度上昇を2度未満に抑える)、Baseline(ベースライン:過去のトレンドがそのまま継続)、No Mitigation(緩和措置なし:経済成長のみを目指し気候変動緩和策をとらない)という3つの市場センチメント・シナリオを想定し、それぞれのシナリオが下記4つのパターンの投資ポートフォリオに対して与える影響について分析されている。

  1. 債券中心型:84%を債券投資、12%を株式投資、4%を現金保有とする保険会社の戦略をモデルとしたポートフォリオ
  2. 保守型:60%を政府および企業発行債券、40%を株式とする年金基金をモデルとしたポートフォリオ
  3. バランス型:50%を株式、47%を債券、3%をコモディティとする年金基金をモデルとしたポートフォリオ
  4. 積極型:60%を株式、35%を債券、5%をコモディティとする年金基金をモデルとしたポートフォリオ

 3つのセンチメント・シナリオはマクロ経済状況を反映させた一連の経済・市場動向と紐づけられており、その影響を各業界にあてはめて動向を分析した上で、それぞれのポートフォリオに反映されている。想定された要因の中には炭素税、化石燃料エネルギーへの投資、環境配慮型の投資、エネルギーおよび食糧価格、エネルギー需要、市場動向および不動産価格などが含まれる。

 研究では、気候変動の市場センチメントは「2度シナリオ」と「緩和措置なしシナリオ」の両方で世界経済の成長を5年から10年の間に押し下げる結果となった。しかし、長期的には「2度上昇シナリオ」が年間3.5%の経済成長を遂げ、「ベースラインシナリオ」の2.9%、「緩和措置無しシナリオ」の2.0%成長を超える結果となった。この結果は英国中央銀行総裁の「気候変動が短期的に与える金融市場への損失リスクは潜在的に非常に大きい」という最近のコメントと合致する。

 気候変動が市場および投資ポートフォリオに与える短期の影響について詳細な分析がなされたことは非常に興味深い。我々の年金や保険の運用も気候変動の影響を被ることになる可能性があるという結果が出ており、12月のパリ会議の成果を踏まえた今後の市場動向には注視が必要だ。

【レポートダウンロード】Unhedgeable risk: How climate change sentiment impacts investment
【参照リリース】Climate change sentiment could hit global investment portfolios in the short term (report)
【団体サイト】University of Cambridge Institute for Sustainability Leadership

株式会社QUICK ESG研究所

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