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【政府・レギュレーションの動向】GPIFの組織等の見直しについて (年金改正法案 国会提出) 2016/03/30 ESGコラム

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 2016年3月11日に「公的年金制度の持続可能性の向上を図るための国民年金法等の一部を改正する法律案」(以下、「年金改正法案」という。)が、開催中の第190回国会に提出され、衆議院で審議が開始された。

 2016年3月14日には「社会保障審議会年金部会」(厚生労働大臣の諮問機関 部会長:神野直彦東京大学名誉教授 事務局:厚生労働省年金局総務課)の第38回会合において、年金改正法案について報告が行われた。その概要は次の通りである。

法律改正の趣旨

 公的年金制度について、制度の持続可能性を高め、将来の世代の給付水準の確保等を図るため、持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律に基づく社会経済情勢の変化に対応した保障機能の強化、より安全で効率的な年金積立金の管理及び運用のための年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の組織等の見直し等の所要の措置を講ずる。

概要

1.短時間労働者への被用者保険の適用拡大の促進(2016年10月実施)
 500人以下の企業も、労使の合意に基づき、企業単位で短時間労働者への適用拡大を可能とする。(国・地方公共団体は、規模にかかわらず適用とする。)
※ 501人以上の企業等を対象に、2016年10月から適用拡大を実施することは既に法定化。

2.国民年金第1号被保険者の産前産後期間の保険料の免除(2019年4月施行)
 次世代育成支援のため、国民年金第1号被保険者の産前産後期間の保険料を免除し、免除期間は満額の基礎年金を保障。 この財源として、国民年金保険料を月額100円程度引上げ。

3.年金額の改定ルールの見直し((1)は2018年4月施行、(2)は2021年4月施行)
 公的年金制度の持続可能性を高め、将来世代の給付水準を確保するため、年金額の改定に際して、以下の措置を講じる。
(1) マクロ経済スライドについて、年金の名目額が前年度を下回らない措置を維持しつつ、賃金・物価上昇の範囲内で前年度までの未調整分を含めて調整。
(2) 賃金変動が物価変動を下回る場合に賃金変動に合わせて年金額を改定する考え方を徹底。

4.年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の組織等の見直し(2017年10月(一部公布日から3月以内)施行)
 合議制の経営委員会を設け、基本ポートフォリオ等の重要な方針に係る意思決定を行うとともに、執行機関の業務執行に対する監督を行うほか、年金積立金の運用に関し、リスク管理の方法の多様化など運用方法を追加する措置を講ずる。

5.日本年金機構の国庫納付規定の整備(公布日から3月以内施行)
 日本年金機構に不要財産が生じた場合における国庫納付に係る規定を設ける。
 
 
 以下、上記4.の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の組織等の見直しについて詳しく説明する。

(1)国民から一層信頼される組織体制の確立を図るため、合議制による意思決定の導入などのガバナンス改革を実施する。(2017年10月施行)
① 独任制から合議制への転換を行い、基本ポートフォリオ等の重要方針は合議制の「経営委員会」が決定する。
  経営委員会は、委員長並びに監査委員である委員及びそれ以外の委員8名以内並びに理事長で組織する。
  監査委員会を設置し、監査委員3名以上で組織する。
② 「意思決定・監督」と「執行」を分離し、執行部を経営委員会が監督し、執行部の責任と権限を明確化する。

(2)年金積立金の安全・効率的な運用のため、リスク管理方法を多様化、短期資金の運用方法を追加する。(2017年10月施行。短期資金の運用方法の追加については、公布日から3月以内の政令で定める日に施行)
① リスク管理の方法の多様化として、利用可能なデリバティブ取引の方法を拡大。利用目的をリスク管理に限定し、利用額制限等リスク管理に限定するための各種措置(厚生労働大臣認可)を設定。更に常勤の監査委員が執行状況を監視する。
② 短期資金の運用方法の追加として、コール資金の貸付等を追加する。

(注)検討規定:GPIF法の施行の状況、その運用についての国民の意識、スチュワードシップ責任を巡る動向等を勘案し、GPIFの運用が市場や民間活動に与える影響を踏まえつつ、運用の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、施行後3年を目途に、必要な措置を講じる。

 また、情報公開の充実の観点から、現行GPIF法第26条に規定する「業務概況書」の他、厚生労働省令で定める運用実績(個別銘柄の保有状況等)、経営委員会の議事録について、市場等に影響を与えないよう留意しつつ、一定期間経過後に公表することになる見込みである。
 
 
 注目を集めた「株式のインハウス運用」や「オルタナティブ資産への投資」の課題については、今般の「年金改正法案」の施行から3年後を目処に検討を行い、必要に応じ措置を講じることとなった。

 年金改正法が成立した後、GPIFの新組織によるガバナンス体制が十分機能していることを精査したうえで、国民年金法および厚生年金保険法に規定される「運用の目的」である「積立金の運用は、積立金が国民年金/厚生年金保険の被保険者から徴収された保険料の一部であり、かつ、将来の給付の貴重な財源となるものであることに特に留意し、専ら国民年金/厚生年金保険の被保険者の利益のために、長期的な観点から、安全かつ効率的に行うことにより、将来にわたって、国民年金事業/厚生年金保険事業の運営の安定に資することを目的として行うものとする。」を念頭に置いて、今後の運用の在り方について十分に時間をかけて議論されることを期待したい。

【参考資料】
衆議院議案審議経過情報
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/keika/1DBF7A6.htm

社会保障審議会年金部会(第38回)(2016年3月14日)配布資料
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000116227.html

年金積立金管理運用独立行政法人法(現行)
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H16/H16HO105.html

QUICK ESG研究所 菅原晴樹

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