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【政府・レギュレーションの動向】GPIF「株式インハウス運用」見送り 2016/03/30 ESGコラム

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 「自民党政務調査会 厚生労働部会 社会保障制度に関する特命委員会 年金に関するプロジェクトチーム」が2016年2月16日に開催され、厚生労働省が提示した「年金積立金管理運用独立行政法人(以下、「GPIF」という。)に関する改革案」を了承した。

 注目されていた「株式インハウス運用」の導入は見送られ、運用委員会に代わる「経営委員会」の設置などガバナンス体制の強化を柱とする改革を優先することとなった。

 GPIFの在り方については、2014年11月4日に社会保障審議会年金部会の下に設置された「GPIFのガバナンスの在り方検討作業班」で6回議論が行われた。

 2015年1月23日「社会保障審議会年金部会第30回会合」では、検討作業班で議論された「年金積立金の管理運用に係る法人のガバナンスの在り方検討作業班(議論の要約)」が示されたが、その後審議は中断されていた。
 その後ようやく2015年12月8日に年金部会が再開され、ガバナンス体制の強化と併せて運用の在り方についても議題として取り上げられた。

 GPIFの資金運用に関しては、2013年11月20日、「公的・準公的資金の運用・リスク管理等の高度化等に関する有識者会議報告書」が公表された経緯がある。

 この報告書は、市場・運用環境が高度化・複雑化する中、さらに、デフレ脱却を図り、適度なインフレ環境に移行しつつある経済環境においては、国内債券中心の運用では必要な運用利回りの確保が困難となる。そのため、運用対象の多様化等による分散投資を促進し、合議制による重要な方針の決定、監督機能と業務執行機能の分離を進めるといった内容であった。

 年金部会は再開後2か月間で7回集中的に実施され、2016年2月8日に厚生労働省から「GPIF改革に係る議論の整理」が公表された。

 内容としては、「更なる改革の方向性」が打ち出され、ガバナンス体制の強化として、合議制の意思決定機関の機能を持つ「経営委員会」を設け、執行機関と分離すること。運用の見直しとして、株式のインハウス運用(パッシブ/アクティブ)、オルタナティブ資産への投資およびデリバティブ取引を活用することが織り込まれた。

 ただし、改革の進め方については4つの考え方が示され、「ガバナンス改革を中心に実施し、運用については、早急に手当てが必要なデリバティブの規制緩和やコール市場の活用を行う。」という意見が多数を占めた。また、運用の改革については、今般の改革の施行から一定期間(3年)、状況を見て検証し、見直すといった措置を講ずべきとの意見があった。

 審議期間中、株価急落、急速な円高という環境変化もあったが、民間企業の経営に対する直接的な介入および議決権行使の課題もあり、最終的には、上述のとおり、ガバナンス体制の強化を改革の柱とする案に沿った「年金積立金管理運用独立行政法人法」をはじめとする関連法の改正を進めることとなった。

 (なお、2016年3月14日開催の年金部会第38回会合において、厚生労働省から「公的年金制度の持続可能性の向上を図るための国民年金法等の一部を改正する法律案要綱」が提示された。)

 GPIFが第33回年金部会において提示した資料を見ると、株式インハウス運用の効果の一つに、運用委託手数料が引き下げられるとあるが、運用コストの長期的な低減イメージとして、現在の60億円が50億円へと10億円程度の減少に留まる見込みであることが示されている。

 他方、オルタナティブ投資については、一般的な運用委託手数料は「基本2%程度+成功報酬20%」であることから、基本ポートフォリオ上の上限(5%)の7兆円まで運用すると、基本手数料のみで1,400億円の手数料が発生することもありうる。

 (因みにGPIF全体資産に係る平成26年度の運用手数料実績は292億円である。)

【参考資料】

2015年1月23日「社会保障審議会年金部会第30回会合」
「年金積立金の管理運用に係る法人のガバナンスの在り方検討作業班(議論の要約)」等

2013年11月20日
「公的・準公的資金の運用・リスク管理等の高度化等に関する有識者会議報告書」

2016年2月8日厚生労働省公表
「GPIF改革に係る議論の整理」

2016年3月14日「社会保障審議会年金部会第38回会合」
公的年金制度の持続可能性の向上を図るための国民年金法等の一部を改正する法律案要綱

2016年1月12日「社会保障審議会年金部会第33回会合」
「GPIFの運用の現状と課題(GPIF提出資料)」12ページおよび14ページ

2015年7月10日GPIF公表
「平成26年度 業務概況書」24ページ

QUICK ESG研究所 菅原晴樹

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