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【政府・レギュレーションの動向】GPIFの平成28年度計画について 2016/04/08 ESGコラム

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 2016年3月31日に年金積立金管理運用独立行政法人(以下、「GPIF」という。)は、平成28年度計画を公表した。

 これは、独立行政法人通則法(以下、「通則法」という。)第31条第1項の規定により、認可を受けた中期計画に基づき、その事業年度の業務運営に関する計画を定め、厚生労働大臣に届け出るとともに、公表しなければならないものである。

 なお、中期目標は、通則法第29条第1項の規定に基づき、厚生労働大臣が定めている。現在のGPIFの第3期中期目標期間は、2015年4月から2020年3月までの5年間である。

 中期計画は、通則法第30条第1項の規定に基づき、中間目標を達成するための計画として、GPIFが定め、厚生労働大臣の認可を得ることになっている。現在の中期計画は2015年4月1日に大臣認可(2016年2月22日変更認可)を受けたものである。

 今回公表された平成28年度計画と平成27年度計画を比較すると主な違いは以下の通りである。

1.マネジャーエントリー制度の導入

(1)現状、委託先の運用機関は、毎年度定性および定量の総合評価を行うとともに、原則として各資産の運用スタイルごとに3年間の実績を踏まえて4年目に見直している。
(2)しかしながら、この方法では新しい運用機関を採用するには、4年間待つ必要があり、優秀な運用機関を機動的に採用することができない機会損失が生じていた。
(3)運用機関を常時公募する「マネジャーエントリー制」を導入し、応募した運用機関からは月次で運用データを登録してもらい、スクリーニング評価に外部専門機関の助言を入れ、既存の委託先との競争を促すものである。

2.インハウス運用の検討

(1)「自民党政務調査会 年金に関するプロジェクトチーム」が、2016年2月16日開催され、厚生労働省が提示した「GPIFに関する改革案」を了承した。注目されていた「株式インハウス運用」は先送りされ、運用委員会に代わる「経営委員会」の設置などガバナンス体制の強化を柱とする改革を優先することとなった。
(2)2016年3月11日に「公的年金制度の持続可能性の向上を図るための国民年金法等の一部を改正する法律案」が衆議院に受理された。

3.オルタナティブ投資

(1)GPIFは、2014年からインフラストラクテャー投資を開始し、第3期中期計画において、基本ポートフォリオの5%を上限として、オルタナティブ資産投資を行なうこととしている。
(2)オルタナティブ投資に関して、非上場株式等の取得を通じた直接投資は認められておらず、投資信託証券の取得を通じた投資のみが実施されている。
(3)今後については、有限責任の枠組みで行う方法(LPS(リミテッドパートナーシップ)におけるLP(リミテッドパートナー、有限責任組合)出資)の活用を、法令上の整理に併せて検討するとしている。

4.ESG投資

(1)GPIFとして、ESG投資について具体的な動きがみられるわけではないが、2015年9月に国連責任投資原則(UNPRI)に署名をし、さらにUNPRIが設置したアセットオーナーズ・アドバイザリー・コミッティーのメンバーとして、水野CIOが参加している。

5.透明性の向上

(1)従来、各年度の管理および運用実績の状況については「7月末までに、四半期の運用状況については、8月末、11月末および2月末を目処に」ホームページ等より、情報を公開するとしていたが、平成28年度計画においては、「平成27年度の管理及び運用実績の状況については7月29日(金)に、四半期の運用状況については8月26日(金)、11月25日(金)および3月3日(金)」と日程を明確にした。
(2)GPIFが保有する銘柄に関する情報の開示の在り方についても検討を加え、 その結果に基づいて、市場への影響に留意しつつ、情報公開の充実を図るとした。(本件については、スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議(第6回)における水野CIOの発言を参照していただきたい。)

6.対象の多様化に伴うリスク管理の強化

(1)2016年度から導入するリスク管理ツールによる分析の強化、情報収集・調査機能の強化などにより、フォワード・ルッキングなリスク管理を含む、リスク管理の高度化を進める。

7.研究業務に関する情報管理

(1)2015年7月に制定された「運用受託機関等における情報セキュリティ対策実施規程」(以下、「実施規程」という。)第4条に基づき、委託調査研究の受託者および共同研究の相手方に求めている情報セキュリティベンチマークによる自己診断等について、その結果を評価し、情報セキュリティ委員会および内部統制委員会に報告することとした。また、選定先等候補者に対しても、自己診断等を求め、その結果を選定における評価の要素とする。

8.統制の一層の強化に向けた体制整備

(1)「内部統制の基本方針」に基づいて、2014年10月に任命したコンプライアンス・オフィサーやリーガル・オフィサー(弁護士)を活用し、リスクの管理や法令順守の確保等を的確に実施すると明記した。

9.情報セキュリティ対策

(1)実施規程第4条に基づき、運用受託機関等に求めている情報セキュリティベンチマークによる自己診断等について、その結果を評価し、情報セキュリティ委員会および内部統制委員会に報告することとした。また、選定先等候補者に対しても、自己診断等を求め、その結果を選定における評価の要素とする。

<GPIF平成28年度計画:抜粋>

平成28年度計画より、平成27年度計画と比較して記述が追加・変更となっている章を抜粋。
なお、下線部分が、平成27年度計画と異なる記述となっている箇所。

第1 国民に対して提供するサービスその他の業務の質の向上に関する目標を達成するためとるべき措置

2.運用の目標、リスク管理及び運用手法
(3)運用手法
マネジャー・エントリー制を活用して、各資産の運用受託機関構成を適時に見直し、その結果を踏まえ、これに伴う資産の移管を実施する。
⑥ 運用実績等を定期的に評価し、資金配分の見直しを含め、運用受託機関を適時に見直すこととし、見直しにあたっては、マネジャー・エントリー制を活用する。
⑦ 運用コストの低減や運用に関する知識・経験等の蓄積の観点から、法令で認められる範囲でインハウス運用の活用を委託調査研究等の結果も参考として検討する。

(4)運用対象の多様化
オルタナティブ投資において、個別の投資判断を行わず、有限責任の枠組みで行う方法(LPS(リミテッドパートナーシップ)におけるLP(リミテッドパートナー、有限責任組合)出資)の活用を、法令上の整理に併せて検討する。

(5)株式運用における考慮事項
株式運用において、財務的な要素に加えて、収益確保のため、ESG(環境、 社会、ガバナンス)を含めた非財務的要素を考慮することについても、運用受託機関の総合評価 の視点に加えることを検討する。
また、外国株式運用におけるマネジャー・エントリー制の活用に際して、過去の運用実績も勘案し、超過収益が獲得できるとの期待を裏付ける十分な根拠を得ることを前提として、ESGの考慮を投資方針に含む運用受託機関の採用を検討する。

3.透明性の向上
(3)平成27年度の管理及び運用実績の状況(運用資産全体の状況、運用資産ごとの状況及び各運用受託機関等の状況並びに新たな運用対象を追加する場合を始めとする年金積立金の運用手法、運用管理委託手数料、運用受託機関等の選定過程・結果を含む。)については7月29日に、四半期の運用状況については8月26日、11月25日及び3月3日にホームページ等により情報を公開する。
併せて、平成27年度の管理及び運用実績の状況の公表に当たっては、当法人設立(平成18年度)からの10年間の歩みを振り返り分析し公表するとともに、保有する銘柄に関する情報の開示の在り方についても検討を加え、その結果に基づいて、市場への影響に留意しつつ、情報公開の充実を図る。

6.管理及び運用能力の向上
(2)運用対象の多様化に伴うリスク管理の強化
基本ポートフォリオの乖離許容幅の中での機動的な運用を行うことなどを踏まえ、平成28年度から導入するリスク管理ツールによる分析の強化、情報収集・調査機能の強化などにより、フォワード・ルッキングなリスク管理を含む、リスク管理の高度化を進める。

7.調査研究業務
(2)調査研究業務に関する情報管理
共同研究者又は委託研究機関等に求めている情報セキュリティベンチマークによる自己診断等について、その結果を評価し、情報セキュリティ委員会及び内部統制委員会に報告する。
また、選定先等候補者に対しても、情報セキュリティベンチマークによる自己診断等を求め、その結果を選定における評価の要素とする。

第9 その他主務省令で定める業務運営に関する事項

1.内部統制の一層の強化に向けた体制整備
(3)コンプライアンス・オフィサーやリーガル・オフィサー等を活用し、リスクの管理や法令遵守の確保等を的確に実施する。

3.情報セキュリティ対策
情報セキュリティポリシー(基本方針)に基づく情報セキュリティマネジメントを厳格に実施するとともに、法人における情報セキュリティ対策の有効性を評価し、当該対策が十分に機能していることを日常的に確認を行う。
運用受託機関等に求めている情報セキュリティベンチマークによる自己診断等について、その結果を評価し、情報セキュリティ委員会及び内部統制委員会に報告する。
また、運用受託機関等の候補者に対しても、情報セキュリティベンチマークによる自己診断等を求め、その結果を選定における評価の要素とする。

【参考資料】
平成28年度計画
http://www.gpif.go.jp/public/activity/pdf/plan_h28.pdf

平成27年度計画
http://www.gpif.go.jp/public/activity/pdf/plan_h27.pdf

第3期中期目標
http://www.gpif.go.jp/public/activity/pdf/midterm_target_03.pdf

第3期中期計画
http://www.gpif.go.jp/public/activity/pdf/midterm_plan_03.pdf

内部統制の基本方針
http://www.gpif.go.jp/about/pdf/philosophy_01.pdf

運用受託機関等における情報セキュリティ対策実施規程
http://www.gpif.go.jp/public/policy/pdf/security_measure.pdf

スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議(第6回)議事録
http://www.fsa.go.jp/singi/follow-up/gijiroku/20160218.html

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QUICK ESG研究所 菅原晴樹

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