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【国際】気候変動が及ぼす期待経済損失額は2.5兆米ドル、LSE教授が試算 2016/04/15 ESG

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 英紙ガーディアンは4月4日、気候変動の分野で新たに発表された研究論文2本を紹介し、昨年12月のCOP21で世界中の国々により合意された地球の気温上昇を2℃未満に抑えるという目標は、金融の観点からも正当性・妥当性をもつことが明らかになったとした。そのうち1本は経済モデルを適用させた初の試算だという。

 ロンドン・スクール・オブ・エコノミックス(LSE)のSimon Dietz教授らが執筆した論文、“‘Climate value at risk’of global financial assets”によると、現状のまま2100年までに2.5℃上昇するとなると、二酸化炭素排出量レベルに対して資産価値が負うリスク「気候による価値リスク(climate value at risk: climateVaR)」の算出では、金融資産損失額の期待値は世界の金融資産の1.8%、2.5兆米ドルに相当するという。しかし一般的な銀行ストレステストなどで用いられる99パーセンタイル値で算定した最悪シナリオでは、金融資産損失額は世界全体の金融資産の16.9%、24.2兆米ドルにまで増加し、多大なリスクが伴うことが示された。損失は、極端な高温、干ばつ等、気候変動による資産への直接的な被害に加え、関連分野の従業員の収入減も考慮に入れられている。

 一方、パリ協定の合意に基づいて気温上昇を2℃未満にするように二酸化炭素排出量を抑えた場合、金融資産損失は0.6%減少、99パーセンタイルシナリオでも7.7%減少に留まると見積られる。この場合、世界の金融資産価値は、排出量削減コストを加味しても対処しない場合に比べて3,150億米ドル高くなるという。これは、世界の金融資産の0.2%に相当する。また、99パーセンタイルシナリオでは9.1%の増加が見込まれる。こうして、パリ協定で決定した数値目標を裏付けらる結果となった。

 当然のことながら、2℃未満を維持するためには全体的な時価総額が約5兆米ドルの化石燃料企業の石炭、石油、ガスはそのまま地下に放置されることになり、その財政的な影響も大きい。今回の研究結果に関してSimon Dietz教授は長期の取引を行っている投資家間での危機意識の低さを指摘しつつ、すでに石炭関係企業からダイベストしているノルウェー政府年金基金のような迅速な対処が必要であることを強調している。

 ガーディアン紙が紹介した2本目の論文“The ‘2C capital stock’ for electricity generation: Committed cumulative carbon emissions from the electricity generation sector and the transition to a green economy”はオックスフォード大学マーティンスクールの研究者、Alexander Pfeiffer氏らが執筆したものだ。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)による炭素予算(炭素排出上限)と第5次評価報告書(AR5)のシナリオを基に電力関連の二酸化炭素排出量を算出したところ、電力以外からの排出量が2℃未満の目標に沿っているという前提でも、現状の発電増加ペースのままだと2017年以降横ばいペースに持ち込めなければ、50%の確率で2℃以上気温が上回る結果となってしまう。本気で2℃未満を目指すのであれば、炭素回収貯留技術(CCS)なしの火力発電所は世界中で一切新設してはいけないというほどの深刻さだ。

 このような気候変動におけるビジネスシミュレーションは、今後も数多く出てくると見られる。すでに研究者たちの間では、今回算出されたよりも経済損失は悪くなるだろうという見方も登場しており、パリ協定で掲げた目標の達成に向けては、政府と企業の多大なるコミットメントが要求されるということが徐々に明らかになってきた。

【参照記事】Climate change will wipe $2.5tn off global financial assets: study
【参照論文】‘Climate value at risk’ of global financial assets
【参照論文】The ‘2°C capital stock’ for electricity generation: Committed cumulative carbon emissions from the electricity generation sector and the transition to a green economy

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