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【機関投資家】ブラックロックが企業経営者に送ったレター 2016/04/27 ESGレポート

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 日本では2014年にスチュワードシップ・コード、2015年にコーポレート・ガバナンス・コードが策定され、企業と投資家の対話に注目が集まっている。

 本年、対話につながる注目すべきアクションがあった。米国最大の運用会社であるブラックロック会長兼CEOのラリーフィンク氏は毎年、企業経営者に長期的な企業価値創出を求めるメッセージを送っており、2016年2月に送ったメッセージについて、QUICK ESG研究所は、ブラックロック・ジャパンに取材し、回答を得た。そこには、企業が短期的な成果に偏重することで、長期的な成長力が損なわれかねないことを懸念する投資家の姿があった。

 なお、レターは、米国のS&P500採用企業、ならびに日本も含め全世界の同社主要投資先企業の経営者に送っている。

 メッセージの全文はこちら

レターをお送りしている背景と目的

 企業経営者に対して短期的な成果を要求する株主による圧力が従前以上に強まっています。このような傾向を看過すれば企業の長期的な成長力が損なわれかねないと、強い危機意識を抱いています。そのため、短期主義の圧力に屈することなく長期的な企業価値創出に注力される企業経営者の皆様を微力ながら支援させていただきたいとの思いのもと、レターをお送りしています。なお、このような趣旨のレターをお送りするのは今回が4回目です。

レターの要旨

  • 適切な株主還元策の実施は支持するものの、事業成長や技術革新等に本来不可欠と考えられる設備、研究開発、人材等への投資が十分になされないような事態に陥ることがあれば、株主としての観点から強い懸念を抱かざるを得ない 
  • 長期経営戦略の策定においては、最適な経営指標を設定の上、長期的視野に基づいた進捗状況の説明をいただきたい。また、取締役会の厳しい審議を経て決議したことを明示していただきたい
  • 企業が長期的な成長戦略の枠組みを明確に示すことで、主に米国において実施されている四半期ごとの一株あたり利益(EPS)予想を開示する必要性は薄れるので、そのような場合、EPSガイダンスの公表を企業がやめることを支持する。また、企業が四半期ごとの決算発表を長期戦略における進捗確認の「ツール」ととらえ、そのような理解のもと業績を説明することを期待する

 そして、持続可能な経済成長を実現のためには、世界的な潮流となりつつある環境、社会、ガバナンス(ESG: Environment/ Social/ Governance)についても意識的に取り組む枠組みを示していただくことも重要であると考えている。

 本件はPRI等 外部団体との連携を前提としたものではなく、あくまでもブラックロックがスチュワードシップ活動の一環として積極的に実施している。

 なお、ESG研究所はブラックロックのエンゲージメントの方針、COP21を受けて注目を浴びている気候変動の方針を公開資料から確認した。

▼ブラックロックのエンゲージメント/気候変動方針

項目

内容

エンゲージメントの方針

✔企業の経営陣との対話は、特に長期保有の規模の大きい機関投資家にとってポジティブな変化をもたらす効果がある。

✔Fiduciary Dutyの一環として、また長期的に顧客の資産を守るため、ESG観点での企業との対話に取り組んでいる

✔「21st Century Engagementガイド」を発行

気候変動の方針

✔Global Investor Statement on Climate Changeに署名済み(2014年)

✔機関投資家にとって、気候変動リスクの管理は顧客に対するFiduciary dutyの一環であり、以下3つの要素を含んでいる

  • ローカーボンエコノミーに向けた資本の投資
  • 低炭素投資機会を明らかにすること
  • 投資先の企業に対し気候変動リスクに対する情報開示を促すこと

✔ESGの要素は金融的な分析とは切り離せない

✔ESGで成果を上げている企業は、気候や社会的なトレンドに素早く対応でき、・罰金や社会的な評判などのリスクにさらされる危険性が小さいと考えている

✔二酸化炭素を多く排出する企業は、代替エネルギーに投資しており、将来的・な削減要素は非常に大きいと考えられ、そのような企業との対話が重要である

✔二酸化炭素削減のため、Green Bond促進に力を入れている

<出所>以下資料からESG研究所 作成

 このような長期投資家の行動がインベストチェーンに与える影響は大きいと考える。引き続き、注視したい。

【関連サイト】

QUICK ESG研究所 中塚一徳 真中克明

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