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【政府・レギュレーションの動向】金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」報告 2016/05/11 ESGコラム

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 2016年4月中旬に、金融庁金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」より、現在の企業情報開示制度下で生じている様々な課題や、より一層の情報開示の充実に必要となる施策についてまとめた報告書が提示・公表された。その内容について概観する。

 2015年10月23日に開催された金融審議会総会・金融分科会の合同会合において、麻生金融担当大臣から金融審議会岩原会長に対し「企業と投資家の建設的な対話を促進する観点も踏まえつつ、投資家が必要とする情報を効果的かつ効率的に提供するための情報開示のあり方等について幅広く検討を行うこと」について諮問がなされた。

 この諮問に基づき、金融審議会の下に「ディスクロージャーワーキング・グループ(座長:神田秀樹 東京大学大学院法学政治学研究科教授  事務局:金融庁総務企画局企業開示課)」が設置された。第1回会合は2015年11月10日に開催され、以降5回にわたり現在の企業情報開示制度における開示内容、開示日程、手続きのあり方ならびに非財務情報の開示の充実等の課題について審議が行われた。2016年4月13日の第5回会合において、検討内容を取りまとめた「金融審議会 ディスクロージャーワーキング・グループ報告(案)-建設的な対話の促進に向けて-」が事務局より提示され、了承された。

 その後、18日に金融庁から「金融審議会 ディスクロージャーワーキング・グループ報告-建設的な対話の促進に向けて- 平成28年4月18日」が公表され、19日に開催された金融審議会総会・金融分科会の合同会合において報告された。

 企業情報開示については、2015年6月30日に公表された「『日本再興戦略』改訂2015」において、企業が持続的にその価値を高めるために、企業と投資家・株主が建設的な対話を行うことが重要であり、そのため、企業の情報開示の見直しについて検討し、実効的で効率的な仕組みを構築することが掲げられている。投資家が必要とする情報を効果的かつ効率的に提供するため、会社法、金融商品取引法および証券取引所上場規則に基づく開示を検証し、重複排除や相互参照の活用などを検討し、今年度中(2015年度中)に総合的に検討を行って結論を得るということが日本再興戦略で閣議決定されている。

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参照1<「『日本再興戦略』改訂2015」(抄)>(企業情報開示部分 抜粋)

 ③持続的成長に向けた企業と投資家の対話促進

 企業が稼ぐ力を高め、持続的に企業価値を向上させるためには、企業と投資家・株主が、共に中長期的な成長に向けて価値を創造する関係にあることを念頭に置いて、建設的な対話を行うことが重要である。こうした観点も踏まえつつ、資本市場の機能の十全な発揮や投資家・株主の保護など幅広い観点から、企業の情報開示、株主総会プロセス等を取り巻く諸制度や実務を横断的に見直し、全体として実効的で効率的な仕組みを構築する。

 ア)統合的開示に向けた検討等

 企業の情報開示については、投資家が必要とする情報を効果的かつ効率的に提供するため、金融審議会において、企業や投資家、関係省庁等を集めた検討の場を設け、会社法、金融商品取引法、証券取引所上場規則に基づく開示を検証し、重複排除や相互参照の活用、実質的な監査の一元化、四半期開示の一本化、株主総会関連の日程の適切な設定、各企業がガバナンス、中長期計画等の開示を充実させるための方策等を含め、統合的な開示の在り方について今年度中に総合的に検討を行い、結論を得る。

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 また、2015年6月1日に東京証券取引所上場規則に折り込まれた「コーポレートガバナンス・コード ~会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために~」において、上場会社は、会社の財政状態・経営成績等の財務情報や経営戦略・経営課題、リスクやガバナンスに係る情報等の非財務情報について、法令に基づく開示を適切に行うとともに法令に基づく開示以外の情報提供にも主体的に取り組むべきであるとの考え方が示されている。

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参照2<「コーポレートガバナンス・コード ~会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために~」(抜粋)>

 【基本原則3】適切な情報開示と透明性の確保

 上場会社は、会社の財政状態・経営成績等の財務情報や、経営戦略・ 経営課題、リスクやガバナンスに係る情報等の非財務情報について、法令に基づく開示を適切に行うとともに、法令に基づく開示以外の情報提供にも主体的に取り組むべきである。 その際、取締役会は、開示・提供される情報が株主との間で建設的な対話を行う上での基盤となることも踏まえ、そうした情報(とりわけ非財務情報)が、正確で利用者にとって分かりやすく、情報として有用性の高いものとなるようにすべきである。

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 日本再興戦略に掲げられた上場企業のコーポレートガバナンスの強化に向けて、スチュワードシップ・コードが策定され、さらにコーポレートガバナンス・コードが適用開始されたが、今後、更なる充実を図っていく必要がある。

 そのためにも、企業と株主・投資家との建設的な対話の基盤となる企業情報の開示制度の見直しは必要不可欠である。

 今回のディスクロージャーワーキング・グループ報告の提言内容の中で、取引所規則に基づいて、企業が決算発表時に開示する決算短信の簡略化について、東京証券取引所は必要な制度改正を行い、2017年3月の決算期から適用を開始するとのことである。

 しかしながら、事業報告と有価証券報告書の開示内容の整理等、6月に集中している3月決算先企業の株主総会を7月以降に遅らせるなどの開示日程の自由度の向上およびESG情報を含む非財務情報の開示の充実など解決すべき課題は多い。

 企業および株主・投資家ならびに関係者が、会社の持続的成長と中長期的な企業価値の創出のために、提言内容の実現に向けて引き続き検討を進めることを期待したい。

<ディスクロージャーワーキング・グループ報告の概要>

Ⅰ.はじめに

Ⅱ.建設的な対話の促進に向けた開示のあり方

1. 基本的な考え方

  • 現在、我が国の企業情報の開示に関して、証券取引所規則、会社法、金融商品取引法に基づく3つの制度が整備されている
  • 現在の開示制度を見直し、全体として、より適時に、かつ、より効果的・効率的な開示が行わられるよう、開示に係る自由度を向上させることが重要である。また、対話に資する開示内容の充実が図られることが適当である

2. 開示内容の整理・共通化・合理化

(1)整理・共通化・合理化についての考え方

  • それぞれの開示書類の間で、記載内容の整理、記載項目・内容の共通化、合理化を図る

(2)具体的な見直しの方向性

①決算短信および四半期決算短信

  • 投資者の投資判断に重要な情報を迅速かつ公平に提供する目的・役割に即し、整理・合理化を行うことが適当

②事業報告・計算書類

  • 株主・債権者に対して、権利行使のための情報提供で、その記載事項の多くは有価証券報告書と同種の事項である
  • 事業報告・計算書類と有価証券報告書の記載内容の共通化や一体化を目指し、継続的な取り組みを行っていくことが望まれる

③有価証券報告書

  • より体系だった分かりやすい開示が行われるよう、現時点での開示の要請を踏まえ、整理・合理化を行うとともに、対話に資する開示内容の充実を図ることが適当

3. 対話の促進に向けた開示の日程・手続きのあり方

(1)対話の促進に向けた開示・株主総会日程の在り方

  • 上場会社は、株主との建設的な対話の促進や、そのための正確な情報提供等の観点を考慮して、株主総会関連の日程を適切に設定すべきである
  • 例えば、株主総会の開催日を7月にする、株主総会前に有価証券報告書を開示するなど

(2)株主総会日程の柔軟化のための開示の見直し

(3)事業報告・計算書類等の電子化の促進

Ⅲ.非財務情報の開示の充実

  • 非財務情報には、経営方針・経営戦略およびMD&A(Management Discussion and Analysis)などのほか、ガバナンスや社会・環境に関する情報等さまざまな情報が含まれる
  • 近年、非財務情報に対する関心が更に高まっている
  • ESG情報をはじめとする非財務情報の開示を任意開示の形で充実させるとともに開示を義務化すべき情報についての考え方を整理しておくことも重要である

Ⅳ.その他

(1)単体財務諸表におけるIFRSの任意適用

  • 金融商品取引法上、IFRSの任意適用会社でも単体財務諸表は日本基準に基づいて作成する必要があるが、今後、単体財務諸表におけるIFRS任意適用について検討する必要

(2)情報の公平・構成な開示についてのルール

  • フェア・ディスクロージャー・ルール導入に向けた検討を実施する必要

(3)中長期的な視点からの投資判断

  • 機関投資家による投資先企業との対話や議決権行使のあり方等に関する議論
  • 個人投資家のリテラシー向上に向けた取組みにおいて、中長期的な視点からの投資に関する教育の拡充

【参考資料】

「金融庁 ディスクロージャーワーキング・グループ報告-建設的な対話の促進に向けて-」(2016年4月18日 金融庁公表)
http://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20160418-1.html

『日本再興戦略』改訂2015(2015年6月30日 閣議決定)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/pdf/dai2_3jp.pdf

コーポレートガバナンス・コード ~会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために~(2015年6月1日 東京証券取引所公表)
http://www.jpx.co.jp/equities/listing/cg/tvdivq0000008jdy-att/code.pdf

「持続的成長に向けた企業と投資家の対話促進研究会」報告書(2015年4月23日 経済産業省公表)
http://www.meti.go.jp/press/2015/04/20150423002/20150423002.html

QUICK ESG研究所 菅原晴樹

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