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【政府・レギュレーションの動向】自由民主党日本経済再生本部提言書 「『新しい経済社会システム』の構築 -600兆円経済の実現-」 2016/05/20 ESGコラム

tokyo

 2016年4月19日、自由民主党日本経済再生本部は、「『新しい経済社会システム』の構築 -600兆円経済の実現-」をとりまとめた。
安倍首相は、2015年9月の自民党総裁再選時の記者会見において、アベノミクス第2ステージとして「新三本の矢」を打ち出した。その中で「名目GDP600兆円の実現」という目標を掲げている。

 安倍政権発足から3年以上が経過し、日本経済はアベノミクスの成果が現れているものの、中国経済の減速および石油価格の下落といった海外におけるリスクの高まりや、少子高齢化および民需の弱さなど多くの国内経済の課題を抱えている。

 今回の提言書は、一億総活躍社会の実現のため、所得の増加を消費の増加につなげ、さらに投資を呼び、更なる成長や分配につながる「新しい経済社会システム」の構築に向けて内外の諸課題を整理・検討し、対応策を取りまとめたものである。
提言書では、600兆円経済実現に向けた7つの基本方針を掲げ、それに基づいて重点的に取り組むべき政策10本柱を示し、さらにその下に23の個別分野の政策の推進に取り組むとしている。

(1)基本方針

①日本の景気回復の腰折れを回避し、日本経済を再びデフレに戻さない。
②世界経済の回復のための国際協調に向け、適切に対処する。
③平成29年4月の消費税引き上げを控え、環境を整備する。
④少子化などの構造問題に正面から取り組み、働きたいとする者の希望を実現し、一億総活躍社会を構築する。
⑤サプライサイドの強化により所得や需要を増加させ、所得や需要の増加を持続的成長に結び付けるとともに、ローカル・アベノミクスを深化させることで「成長と分配の好循環」を一層強化する。
⑥「経済・財政再生計画」に掲げる歳出改革等を着実に実行し、国・地方を通じたワイズ・スペンディングを徹底し、的確な資源配分を行うことで、持続的・健全な発展につなげる。
⑦新三本の矢に関する政策について、政府はロードマップの作成やKPIの設定等により、工程管理を行い、政策を着実に実行していく。

(2)具体的な重点政策10本柱

①イノベーションと人材育成で切り開く第4次産業革命
②新しい時代に適応するための働き方改革
③成長資金の十分な供給
④経済の大黒柱である個人消費の拡大
⑤潜在需要の顕在化と新たな有望成長市場の創出・拡大
⑥好循環に繋がる分配
⑦女性の活躍推進
⑧規制改革等の制度改革
⑨地方創生
⑩海外経済の取り込み

(3)23の個別分野の政策

①第4次産業革命
②人づくり・人材育成
③イノベーション(Society 5.0)
④働き方改革 
⑤成長資金の十分な供給
⑥コーポレートガバナンス
⑦個人消費の拡大
⑧潜在需要の顕在化 
⑨健康医療
⑩エネルギー・環境
⑪住宅
⑫スポーツ・文化
⑬サービス産業
⑭中小・小規模事業者
⑮ベンチャー 
⑯農林水産業
⑰観光
⑱女性の活躍推進
⑲規制改革
⑳地方創生の推進
㉑社会インフラ整備
㉒TPPの活用
㉓インフラシステム輸出

個別分野の政策の中で、ESGに関連する主な政策は以下の通り。

「②人づくり・人材育成」

  • 業界の状況に応じた重点的な人材育成の支援
  • 労働者の主体的なキャリア形成の支援

「④働き方改革」

  • 非正規雇用労働者の待遇改善を徹底する必要から同一労働同一賃金の実現に踏み込む。
  • 名目GDPを2020年ころに向けて600兆円に増加させていく中で、最低賃金を全国加重で時給1,000円を目指す。
  • 65歳定年や65歳以降の雇用継続を行う企業等への支援等を行うとともに、企業における高齢者の再就職の受入れを促進する。
  • 長時間労働を是正する仕組みを作る。

「⑥コーポレートガバナンス」

  • 実効性の高い取締役会の機能の発揮に向けた取組みを促す。
  • 取締役会が経営戦略や業績評価等を決定するガバナンス体制について、実務的指針の策定
  • 企業と株主・投資家との建設的な対話を充実させるため、機関投資家に実質的な対話を促すとともに、企業による経営方針、経営戦略等に関する開示を充実させる。
  • ESGを含む企業の中長期的な成長力や収益力の強化に向けた取り組みが積極的に行われるよう、企業と投資家との対話を促す。
  • 監査法人のガバナンス・コードの策定の要請
  • 株主総会の招集通知添付書類の電子提供について促進する。

「⑩エネルギー・環境」

  • 産業競争力の向上に向けた省エネルギー投資の拡大
  • 民生分野の省エネルギーの推進
  • 地産地消型エネルギーシステムの導入拡大
  • 水素社会の実現に向けた取り組みの推進
  • 循環産業(廃棄物処理・リサイクル産業)の海外展開の推進

「⑯農林水産業」

  • 50億㎥の森林資源を活用し、林業の成長産業化を図るとともに地球温暖化防止に資する森林吸収源対策を推進する。
  • 水産日本の復活を目指し、水産業の成長産業化を推進する。

「⑱女子の活躍推進」

  • 女性が指導的地位に占める割合を3割程度まで引き上げることを目指した「女性活躍推進法」に基づき、女性参画の拡大に向けた取り組みを推進する。
  • 仕事と家庭の両立支援の取り組みへの助成。
  • 子育て支援の量的拡充および質的改善を図る。

 今回取りまとめられた提言書「『新しい経済社会システム』の構築 -600兆円経済の実現-」は、政府が打ち出す成長戦略や7月に予定されている参議院選挙に向けて自由民主党の公約等に反映するように働きかけていくものと思われる。今後の動向に注視していきたい。

【参考資料】
「新しい経済社会システム」の構築<600兆円経済の実現>(2016年4月19日 自由民主党日本経済再生本部)
http://jimin.ncss.nifty.com/pdf/news/policy/132182_1.pdf

『日本再興戦略』改訂2015(2015年6月30日 閣議決定)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/pdf/dai2_3jp.pdf

QUICK ESG研究所 菅原晴樹

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