Sustainable Japan QUICK ESG研究所

【北米コラム】地球温暖化対策の今後 (カリフォルニア情勢) 2016/05/23 ESGコラム

california

 2015年12月パリで開催された国連の第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)において、2020年以降の気候変動対策の新たな法的枠組みとして「パリ協定(Paris Agreement)が全会一致で採択された。産業革命前からの気温上昇を2℃未満とすることを長期目標とし、これを実現するべくすべての国が計画的に気候変動対策に取組み、その進捗を報告・検証する仕組み造りについて合意した。画期的な一歩を踏み出したわけだが、ここからは国別の具体的な目標を達成していかなければならない。

 各国が「約束する」目標値は、国際社会の文脈で見たときに公平であり、かつ野心的、意欲的であることが求められる状況である。政府の下では、さらに自治体、業界団体などが実際の対策実行を担うことになる。そんな中で、中国の首都北京はスモッグのために学校や建設現場を閉鎖し、自動車の走行制限を実施したと報道された[1]。一方、炭素排出量世界第二位の全米の中で地球温暖化対策に最も真剣に取り組んでいるカリフォルニア州は、ブラウン知事の強い指導のもと2030年までに温室効果ガスの40%削減(対1990年比)を目標とし、主に6分野に集中的に注力する方針を表明している[2]。

  1. 再生エネルギーの生産を全体の50%まで伸ばす。
  2. 自動車の石油使用を50%削減する。
  3. 既存の建物の省エネ率を倍増する。
  4. 森林、牧草、沼地その他の自然環境からの温室効果ガスの排出を削減する。
  5. 短命の気候汚染物質(主にブラックカーボン、フッ素化ガス、メタン)の排出を削減する。
  6. 地球温暖化の影響で起こる山火事、地崩れ、洪水等の自然災害対策を進める。

 多方面に渡る地球温暖化対策を一目で分かる地図を公表するなど[3]、公共政策を一般にも分かりやすいように努力していることは評価に値する。

 では、カリフォルニアの一般市民の意識や行動はどうか。このエリアに長く住む一人として、住民の環境への取り組みや意識は着実に変化していることを実感する。たとえば、サンフランシスコ近郊の私の住むマリン郡ではようやく「環境に優しい」商品やサービスに目覚め、人の集う場所では 、リサイクル用、コンポスト(堆肥)用、それ以外のゴミ用のゴミ箱を必ず見かけるようになった。また、家庭用消費財の購入に当たっても、体に良いかはもちろん、環境に優しいかどうか、そして製造に当たる労働者の安全を考慮しているか、地域に貢献しているのか等々の社会要因も評価する習慣が少しずつ身についてきたように感じられる。

 先日、健康・環境・社会の各方面から家庭用消費財の格付けをする企業の起業メンバーと話す機会に恵まれた。サンフランシスコに本社を置く GoodGuide, inc. ( グッドガイド社) は、25万の食料品、玩具、家庭消費財、化粧品等の格付けをしており、米国では携帯アプリでバーコードをスキャンすれば瞬時に商品の格付けを確認でき、場合によってはより格付けの高い代替品を推薦してくれる仕組みを提供している。グッドガイド社は、数年前に安全基準を評価する老舗であるグローバル企業 Underwriters Laboratories (UL社) に買収された。便利なアプリのおかげで、ESG優良品の購入も楽になってきている。

 また、非営利組織もこの分野で活躍している。サンフランシスコとその近郊のオークランド、バークレー、パロアルトを含むベイエリアには2001年からCity CarShareという非営利組織が活動を開始しており、炭素排出量削減のために車の相乗りをできる制度を作った。2009年には車の相乗りのおかげで、全世界で48万トン以上の炭素排出量削減を達成したという[4]。驚くべきは2015年にUber同様スマートフォンから予約のできるアプリを開発したCarma(カーマ社)と提携、非営利組織の作りだしたコンテンツはアプリ会社を通じて継続的に提供され、ユーザー目線の使いやすさを追求したことにある[5]。

 カリフォルニア州ではグローバルの環境政策と呼応する、積極的な環境目標と実施のための政策が掲げられる。民間レベルでは、市民の間に醸成されてきた高い環境意識と、常にイノベーションを目指す新サービスの開発力が相まって、さまざまな進化を続けている。このエリアにおける行政の環境対策、ビジネスおよび市民の意識が、今後も独自の発展を続ける土壌としての役割を担っていると言えるだろう。

執筆:QUICK ESG研究所 Mari Kawawa
編集:QUICK ESG研究所 松川 恵美、宝本 美佐、鈴木 敦史

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