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【国際】政府の気候変動対応によりエネルギー産業の利益は減少、機関投資家らの報告書 2016/06/02 ESG

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  気候変動に関心を寄せる欧米の先進的な機関投資家10社で構成するInvestment Leaders Group(ILG)は5月12日、パリ協定で合意された2℃目標への達成に向けた法規制の変化が、各業界に与える財務インパクトの規模を試算した報告書「Feeling the heat -An investors’ guide to measuring business risk from carbon and energy regulation」を発表した。報告書は、スイス財務相が主催した会議の場で発表された後、今年中国が議長を務めるG20のグリーンファイナンス研究グループに提出された。ILGは、この報告書を通じ、世界の投資家コミュニティに対する、銘柄選定と企業へのエンゲージメント促進の指針としたい考えだ。

 2013年に設立されたILGを構成している企業は、独アリアンツ・グローバル・インベスターズ、英ファーストステート・インベストメンツ、米ルーミス・セイレス、仏ナティクシス・アセット・マネジメント、北欧のNordea Life & Pensions、英オールド・ミューチュアル、デンマークのPensionDanmark、英スタンダード・ライフ・インベストメンツ、米年金基金TIAA Asset Management、スイスのチューリヒ保険の10社で、日本でも知られた有名企業が多数参加している。10社の運用資産総額は4兆米ドル(約440兆円)に及ぶ。また、同ネットワークの事務局は、ケンブリッジ大学のサステナビリティ・リーダーシップ研究所が務めている。

 報告書では、気候変動対応に向け法規制が発効されるシナリオ(第1シナリオ)と、それに加えて二酸化炭素1トン当たり45ユーロの炭素税が世界的に導入されるシナリオ(第2シナリオ)という2種類のモデルを用意。各国の法規制がそれぞれのシナリオ時でどのような法規制が導入されるかをまず検討した。その後、各国の石油・ガス・電力関連の主要企業の現在のエネルギー需要や二酸化炭素排出量を把握し、各国の法規制導入が与える財務インパクトを企業ごとに算出した。さらに企業ごとの財務インパクトを国単位に集約し、国ごとの財務インパクトを割り出した。また、各シナリオ時に各企業が負のインパクトを軽減させる措置をとった後の財務インパクトも集計した。

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(出所)Feel the heat

報告書のまとめ

エネルギーと炭素規制による電気・石油・ガス産業への影響

 第1シナリオにおいて、スペインの電力産業の利益インパクトは、再生可能エネルギー導入が進んでいるため、kWh当たり1.9ユーロセントの利益増が見込める一方で、英国の電力産業はkWh当たり3.5ユーロセントの利益減に陥り、再生可能エネルギーの割合が電力産業の収益性に大きな影響を与える。また、他の産業の収益性も第2シナリオの下では、現状維持のままだと、カナダのアルバート州や米国のカリフォルニア州、ドイツ、スペインの石油精製所でのガス生産は10%以上の利益を失う可能性がある。

企業間の影響差

 同じくの同産業でも、規制の影響は企業の技術導入やエネルギー効率によって大きく変わる。分析よれば同じ国内であっても最大で30%も差がつくことが確認された。

リスク低減と利益向上

 影響軽減措置を打つことで企業は利益影響を大きく好転させることができる。例えば、試算では英国とスペインの電力産業は軽減措置により50%以上の利益増影響があった。このように投資家は企業へのエンゲージメントを強化することで、資産を守ることができる。

 ILGは、より正確で説得力のある分析を実施していくためにより多くのデータを活用できるよう働きかけていく。今後は、事業活動からのフットプリントを踏まえた新たなモデルの開発や、化学産業や交通産業に関するモデルの開発も手がけていく予定だ。

【参照ページ】Investors Quantify “Winners” and “Losers” from Climate and Energy Regulation
【報告書】Feel the heat

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