Sustainable Japan QUICK ESG研究所

【アメリカ】Ceres、大手保険会社の投資に対し気候変動リスクを考慮するよう強く要望 2016/06/13 ESG

climate-risk

 サステナビリティ分野の国際アドボカシーNGOのCeresと投資コンサルティング大手マーサー社は5月24日、アメリカの大手保険会社の投資先と気候変動に対応するための方向性を示すレポートを公表した。クリーンエネルギーへの転換や気候変動リスクへの対応が声高に叫ばれている中で、同レポートによると2014年におけるアメリカの上位40社の保険会社の石炭、石油ガス会社、電力・ガス会社への投資額は4,590億米ドル(約48兆6,540億円)に達すると試算した。同レポートでは、(1)化石燃料関連株式のリスク、(2)保険会社の各化石燃料業界への投資バランスの違い、(3)気候変動リスクの対応に向けた投資と当局規制のあり方についてまとめた。

 2015年の初旬から北米69社の石油・ガス生産事業者が倒産しており、Ceresが調査対象とした大手保険会社10社が投資している上位70%の大手石油・ガス会社は、ムーディーズやS&Pの信用格付は下がっている。エクソンモービルでさえ、2016年4月にAAAから格下げとなっている。

 Ceresが調査した大手保険会社40社の石油ガス業界、電力・ガス業界、石炭業界、クリーンエネルギー業界それぞれの株式保有状況については、各社の投資バランスに違いが見られる。

 石油ガス業界においては、Ameriprise社が12.4%、Lincoln National社が11.8%、Voya Financial社が10.9%の株式を保有しており、保険会社全体の石油ガス業界の株式保有率の中央値が5.1%であるのに対して、それらは約2倍の保有率となっている。その他の保険会社においては、4社で2%以下、Progressive社が最も低く0.2%の株式を保有している。

 電力・ガス業界においても石油ガス業界と同様の傾向であり、電力とガスの構成比は区別していないが、John Hancock社が16.8%、 Pacific Life社が16.0%、Lincoln National社が14.4%の株式を保有し、Progressive社が0.5%、QBE社が0%である。また石炭業界への投資額は保険会社全体において最も小さく、18億米ドル(約1,908億円)である。その一方で、再生可能エネルギー業界に対しては石炭の4倍の投資額である72億米ドル(約7,632億円)投資しているが、この再生可能エネルギーに対する投資額は気候変動リスクに対応する必要額を決して満たすものではない。

 2015年のCOP21において提唱された温度上昇摂氏2度を下回るための地球温暖化対策目標に対応していくためには、2010年から2050年までに石油の3割、天然ガスの5割、石炭の8割の使用を制限しなければならない。

 同レポートでは、気候変動リスクに対応するために保険会社と監視機関に対していくつかの提言をまとめた。保険会社の取締役会に対して、投資の意思決定の際に気候変動リスクを勘案することを要望しており、当局に対しては、保険会社に投資先の公表を迫るよう求めている。カリフォルニア州保険局のトップであるDave Jones・カリフォルニア保険コミッショナーは「世界中の国、州、政府は、資産価値が減少ないしはほぼ無くなってしまう可能性がある石炭、石油、ガスに対する投資リスクを踏まえたうえで、気候変動に対応し、低炭素化に向けた政策を採用する必要がある。気候変動リスクを低減させる戦略を実行する前に、各保険会社は気候変動への潜在的影響がある投資を確認、評価する必要がある」と語り、同氏は今年の1月にカリフォルニアの保険会社に対して、二酸化炭素排出に影響がある投資の年次公表を政策として掲げている。また、アメリカの保険関連当局は、気候変動リスクに関わる取り組みに対して、開示要求と検査プロセスを改訂しており、保険会社が気候変動リスクを勘案した取り組みを実施するよう働きかけている。

【参照ページ】New Ceres Report: U.S. insurance sector heavily invested in fossil fuel sectors, despite growing awareness of climate change risks

QUICK ESG研究所

Facebookコメント (0)

ページ上部へ戻る