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【政府・レギュレーションの動向】「新たな株式報酬(いわゆる「リストリクテッド・ストック」)の導入等の手引」公表 2016/06/22 ESGコラム

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 2016年4月28日に、経済産業省(経済産業政策局産業組織課)は『「攻めの経営」を促す役員報酬~新たな株式報酬(いわゆる「リストリクテッド・ストック」)の導入等の手引~』(以下、「手引」という。)を作成、公表した。

 「日本再興戦略」改訂 2015、およびコーポレートガバナンス・コードにおいて、経営陣の報酬について株式報酬や業績連動報酬の導入を促進することは、我が国企業の収益力・「稼ぐ力」を向上させる上で、かつ中長期的な企業価値向上に向けて適切なインセンティブ付けを行う上で重要であるとしている。

 こうした背景のもと、2015年7月24日に「コーポレート・ガバナンス・システムの在り方に関する研究会」(座長 神田秀樹 東京大学大学院法学政治学研究科教授、 事務局 経済産業省経済産業政策局産業組織課、 オブザーバー 法務省大臣官房および金融庁総務企画局企業開示課。以下、「研究会」という。)が、とりまとめた報告書「コーポレート・ガバナンスの実践~企業価値向上に向けたインセンティブと改革~」(以下、「研究会報告書」という。)において、新しい株式報酬の導入に関する会社法上の整理を行った。

1. 新たな株式報酬に関する研究会報告書での記載

 「第3 具体的な施策」の「2.関連する法的解釈の明確化等」に、(1)取締役会の上程事項(2)社外取締役の役割・機能等(3)役員就任条件(4)新しい株式報酬の導入が掲げられているが、具体的な内容については、報告書本体ではなく、次のように別紙に詳述されている。

 「法的論点に関する解釈指針(別紙3)」の「第4 新しい株式報酬の導入」で、取締役会の実効的な監督、社外取締役の役割・機能の活用および中長期的な企業価値向上のためのインセンティブ創出の観点から、以下の事項について法的解釈を整理している。

 我が国企業の役員報酬は依然として固定報酬中心であり、業績連動報酬や株式報酬の割合が低いことが指摘されている。欧米においては、中長期のインセンティブ報酬として、Performance Share(※2)やRestricted Stock(※3)といった株式報酬制度が普及しているが、これと同様の仕組みを我が国で導入するための手続(金銭報酬債権を現物出資する方法)を整理している。

(※2)Performance Share:中長期的な業績目標の達成度合いによって交付される株式報酬

(※3)Restricted Stock:一定期間の譲渡制限が付された株式報酬

(注)本文中、下線はQUICKが付したものです。

2. 手引の概要

(1)施策の位置づけ

「日本再興戦略」改訂 2015において、株式報酬、業績連動報酬の柔軟な活用に向けた仕組みの整備の必要性が謳われている。

また、コーポレートガバナンス・コードにおいても、経営陣の報酬について、中長期的な会社の業績等を反映させたインセンティブ付けを行うべきとされている。

(2)本研究会での整理

 ①役員報酬の国際比較

我が国企業の役員報酬は依然として固定報酬中心であり、英米と比して業績連動報酬や株式報酬の割合が低く、業績向上のインセンティブが効きにくい状況である。

加えて、パフォーマンス・シェア(PS)やリストリクテッド・ストック(RS)といった欧米で一般的に利用されている株式報酬の手法が未発達である。

今後、このような報酬体系の違いが、グローバルに経営人材を獲得し、我が国の有能な経営人材と統一的な管理を行う体制の構築に障害となる可能性がある。

 ②株式報酬の概要

欧米では、ストックオプションに加えて、パフォーマンス・シェア(PS)やリストリクテッド・ストック(RS)といった新しいタイプの株式報酬制度が発展してきている。

 ③株式報酬の会社法上の整理

実務的に簡易な手法(金銭報酬債権を現物出資する方法)を用いて、パフォーマンス・シェア(PS)やリストリクテッド・ストック(RS)を導入するための手続きを整理した。

(3)「攻めの経営」を促す役員報酬等に係る税制の整備(2016年度税制改正)

①役員へ支給した一定の株式報酬(いわゆる「リストリクテッド・ストック」)を、届出が不要となる事前確定届出給与の対象とする等の制度整備が行われた。

②利益連動給与の算定の基礎となる利益の状況を示す指標の範囲について明確化が行われた。

(4)新たな株式報酬の導入・利益連動給与に関する Q&A~平成28年度税制改正を踏まえて~

(5)譲渡制限付株式割当契約書(例)

「特定譲渡制限付株式」の付与にあたって、会社と役員の間で締結する契約書の一例を示している。

(6)株主総会報酬議案(例)

「特定譲渡制限付株式」の付与にあたって、株主総会に付議する報酬議案の一例を示している。

(7)関係法令

法人税法、所得税法の本制度に関連する条文(法律、政令、省令)を掲載している。

3.関係法令での措置・明確化

 上記に併せて、2016年所得税法等の一部を改正する法律(2016年3月29日成立、2016年4月1日施行)において、

①役員へ付与した株式報酬(いわゆる「リストリクテッド・ストック」)を届出が不要となる事前確定届出給与の対象とする等の制度整備

②利益連動給与の算定指標範囲について明確化を行う等

の措置が講じられた。

 これにより、今年4月以降開催される株主総会等の決議による「特定譲渡制限付株式(いわゆる「リストリクテッド・ストック」)の発行が可能となった。ただし、法律改正から準備期間が短いことから、6月の株主総会で導入する企業は限られるものと思われる。

 しかしながら、役員報酬として付与された「特定譲渡制限付株式」を法人税法(第34条第1項第2号)により損金算入の対象とすることができることになったため、今後、制度導入が促進されることが予想される。

 また、利益連動給与の算定指標範囲として、法人税法(第34条第1項第3号)において、損金算入が可能である「利益連動給与」の対象指標の範囲について、純粋な利益指標(営業利益、経常利益等)に加え、ROE、ROA等の一定の利益関連指標が含まれることが明確化(法人税法施行令第69条第8項)された。併せて、役員間(営業担当、管理担当など)で異なる指標を採用することも可能となり、制度導入の柔軟性が確保されたものと思われる。

【関連資料】

『「攻めの経営」を促す役員報酬~新たな株式報酬(いわゆる「リストリクテッド・ストック」)の導入等の手引~』を作成しました(2016年4月28日 経済産業省)
http://www.meti.go.jp/press/2016/04/20160428009/20160428009.pdf

『「攻めの経営」を促す役員報酬~新たな株式報酬(いわゆる「リストリクテッド・ストック」)の導入等の手引~』(2016年4月28日 経済産業省)
http://www.meti.go.jp/press/2016/04/20160428009/20160428009-1.pdf

「コーポレート・ガバナンスの実践~企業価値向上に向けたインセンティブと改革~」(2015年7月24日 経済産業省)
http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/sansei/corporate_gov_sys/pdf/report01_01_00.pdf

別紙3 法的論点に関する解釈指針(2015年7月24日 経済産業省)
http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/sansei/corporate_gov_sys/pdf/report01_b03_00.pdf

参考資料 英米における取組の概要(2015年7月24日 経済産業省)
http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/sansei/corporate_gov_sys/pdf/report01_s01_00.pdf

QUICK ESG研究所 菅原晴樹

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