Sustainable Japan QUICK ESG研究所

【コーポレート・ガバナンス】コード施行後1年、報告書エクスプレイン数別 企業財務指標の集計 2016/06/27 ESGレポート

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 東証上場規程が改正された2015年6月1日から1年が経過した。「ガバナンス報告書」を提出した企業にはどのような傾向が見られるのだろうか。QUICK ESG研究所が保有している東証1部、2部上場会社の提出企業2183社のガバナンス報告書と財務指標のデータを元に、エクスプレイン数別に集計した。なお、市場全体と時価総額の大きい企業の傾向をそれぞれつかむため、全企業とTOPIX500に分けて集計した。

 今回、財務指標は、時価総額、配当利回り、配当性向、ROA、ROE、売上高当期利益率、財務レバレッジ、総資産回転率の平均値を集計した。あわせて外国人持株比率の平均値も集計した。

 全企業についての集計値が、図表1である。提出企業は2183社であり、フルコンプライ企業が227社、エクスプレインを1つでもしている企業は1956社だった(フルコンプライ企業の割合は10.40%)。各指標を見ると、フルコンプライ企業はエクスプレイン企業と比較して時価総額が大きく、配当利回り、ROE、売上高当期利益率、財務レバレッジおよび外国人持株比率が高かった。配当性向、ROAおよび総資産回転率はエクスプレインしている企業の方が大きい。

 また、フルコンプライ企業を含めたエクスプレイン数が2つ以下の企業とエクスプレイン数が3つ以上の企業を比較した。基準をエクスプレイン数を2つ以下としたのは、原則別にエクスプレイン数を集計したところ、1-2④(議決権の電子行使の環境づくり、招集通知の英訳)と、4-11③(取締役会の実効性分析・評価の実施と開示)をエクスプレインしている企業数が、それぞれ1200社を超え、約60%前後と高い割合だったため(参考図表)。企業数は全2183社中、エクスプレイン数2つ以下の企業が724社、エクスプレイン数が3つ以上の企業は1459社だった(エクスプレイン数2つ以下の企業の割合は33.17%)。

 前者と後者の各指標を比較したところ、フルコンプライ企業とエクスプレイン企業の比較とほぼ同様の結果であったが、ROEは差が無くなり、ほぼ同じ水準だった。

▼図表1. フルコンプライ企業およびエクスプレイン数別に集計した企業の財務指標(全企業)
 対象:2015年6月1日から、2016年5月31日に報告書を新様式で提出した全企業
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出所: QUICK AstraManagerと日本取引所グループ コーポレート・ガバナンス情報サービスより QUICK ESG研究所作成(データは全て2016年5月31日時点)。集計値は、除外処理をせず単純平均。

 次に、時価総額の大きい企業の傾向をつかむため、対象をTOPIX500に絞った集計値が図表2である。提出企業は472社で、フルコンプライ企業が130社、エクスプレインを1つでもしている企業は342社であった(フルコンプライ企業の割合は27.54%)。

 各指標を見ると、フルコンプライ企業はエクスプレイン企業と比較して時価総額が大きく、配当利回り、売上高当期利益率、財務レバレッジおよび外国人持株比率が高い。配当性向、ROA、ROEおよび総資産回転率はエクスプレインしている企業の方が大きかった。

 また、フルコンプライ企業を含めたエクスプレイン数が2つ以下の企業とエクスプレイン数が3つ以上の企業を比較した。企業数は全472社中、エクスプレイン数が2つ以下の企業が290社、エクスプレイン数が3つ以上の企業は182社だった(エクスプレイン数2つ以下の企業の割合は61.44%)。

 前者と後者の各指標を比較したところ、今までの結果と異なり、配当性向、ROA、ROE、売上高当期利益率および総資産回転率はエクスプレイン数が多い企業の方が高い傾向が強くあらわれた。配当利回り、財務レバレッジおよび外国人持株比率はエクスプレイン数が2つ以下の企業の方が高い。

▼図表2. フルコンプライおよびエクスプレイン数別に集計した財務指標(TOPIX500)
 対象:2015年6月1日から、2016年5月31日に報告書を新様式で提出したTOPIX500採用銘柄
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出所: QUICK AstraManagerと日本取引所グループ コーポレート・ガバナンス情報サービスよりQUICK ESG研究所作成(データは全て2016年5月31日時点)。集計値は、除外処理をせず単純平均。

 最後に、業種別のフルコンプライの割合を集計したところ、全企業では、保険業、銀行業、証券商品先物業の順に割合が高かった(図表3)。TOPIX500では、証券商品先物業、卸売業、銀行業の順にフルコンプライの割合が高い。

▼図表3. 業種別のフルコンプライ企業の割合
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出所:日本取引所グループ コーポレート・ガバナンス情報サービスよりQUICK ESG研究所作成(2016年5月31日時点)

 QUICK ESG研究所では、今回集計して確認した結果が今後どのように変化していくか、引き続きガバナンス報告書に注視し、集計、分析を行っていく。

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▼参考図表. 原則別エクスプレイン数
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出所:日本取引所グループ コーポレート・ガバナンス情報サービスよりQUICK ESG研究所作成(2016年5月31日時点)

エクスプレインされている原則の説明(太字は重要開示項目)

1-1 株主の権利の確保
1-1① 反対票が多い議案の分析、その後の対応の方針開示
1-1② 総会決議事項の委任時における取締役会の体制の確認
1-1③ 株主、特に少数株主の権利行使における妨害要素の排除

1-2 株主総会における権利行使
1-2① 株主総会にむけた適切な情報開示
1-2② 招集通知の早期発送、電子開示
1-2③ 株主総会開催日の適切な設定
1-2④ 議決権の電子行使の環境づくり、招集通知の英訳
1-2⑤ 信託銀行名義で株式保有する機関投資家の株主総会における議決権行使

1-3 資本政策の基本的な方針

1-4 政策保有株式

1-5 いわゆる買収後防衛策

1-6 株主の利益を害する可能性のある資本政策

1-7 関連当事者間の取引

2-1 中長期的な企業価値向上の基礎となる経営理念の策定

2-2 会社の行動準則の策定・実践
2-2① 取締役会による行動準則の実践度合いのレビュー

2-3 社会・環境問題をはじめとするサステナリビティーを巡る課題
2-3① 取締役会によるサステナビリティ―課題に対する積極的な対処

2-4 女性の活躍促進を含む社内の多様性の確保

2-5 内部通報
2-5① 経営陣から独立した内部通報窓口の設置

3-1 情報開示の充実 
3-1① ひな形的および具体性の欠く情報開示の回避
3-1② 英語での情報開示

3-2 外部会計監査人
3-2① 監査役会の対応(外部会計監査人への評価・確認)
3-2② 取締役会及び監査役会の対応(外部会計監査人の内部アクセス確保等)

4-1 取締役会の役割・責務(1)
4-1① 取締役会の判断・決定、経営陣に対する委任の範囲の開示 
4-1② 中期経営計画の実現努力、未達の場合の分析
4-1③ 最高経営責任者の後継者計画に対する監督

4-2 取締役会の役割・責務(2)
4-2① 経営陣の報酬(中長期業績連動、現金報酬、自社株報酬との割合)

4-3 取締役会の役割・責務(3)
4-3① 経営陣幹部の選任・解任に関する透明性の高い手続きによる適切な実行
4-3② コンプライアンスや内部統制、リスク管理体制の適切な構築や実行の監督

4-4 監査役及び監査役会の役割・責務
4-4① 監査役の実効性と社外取締役との連携確保

4-5 取締役・監査役等の受託者責任

4-6 経営の監督と執行

4-7 独立社外取締役の役割・責務

4-8 独立社外取締役の有効な活用
4-8① 独立社外取締役会合の定期開催
4-8② 筆頭取締役の互選、経営陣・監査役および監査役会との連携

4-9 社外取締役の独立性判断基準および資質

4-10 任意の仕組みの活用
4-10① 独立取締役による指名・報酬委員会の検討

4-11 取締役会・監査役会の実効性確保のための前提条件
4-11① 取締役の選任方針等の開示
4-11② 取締役のほか上場会社の役員兼任状況の開示
4-11③ 取締役会の実効性分析・評価の実施と開示

4-12 取締役会における審議の活性化
4-12① 会議運営に関する審議の活性化

4-13 情報入手と支援体制
4-13① 社外を含む取締役および監査役の情報追加要求
4-13② 取締役・監査役の必要時における外部専門家の助言の考慮
4-13③ 内部監査部門と取締役・監査役の連携の確保

4-14 取締役・監査役のトレーニング
4-14① 社外を含む取締役および監査役の知識と役割・責務の理解促進
4-14② 取締役・監査役のトレーニング方針の開示

5-1 株主との建設的な対話に関する方針
5-1① 株主との対話に対する経営陣幹部または取締役の参加
5-1② 株主との建設的な対話の際に気を付けるべき事項
5-1③ 株主構造の把握

5-2 経営戦略や経営計画の策定・公表

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QUICK ESG研究所 真中克明

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