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【政府・レギュレーションの動向】国産材供給量 2025年1.7倍へ ~「森林・林業基本計画」閣議決定~ 2016/07/12 ESGコラム

timber

 政府は、5月24日の閣議で、「森林・林業基本計画」を決定した。我が国の森林・林業施策の基本方針を定める森林・林業基本計画(以下、「基本計画」という。)は、「森林・林業基本法」に基づき2001年に策定されて以降、森林・林業をめぐる情勢の変化等を踏まえ、おおむね5年ごとに変更することとされている。(前基本計画は2011年7月策定)

 今回の基本計画は、2015年7月から林政審議会(会長:鮫島正浩 東京大学大学院農学生命科学研究科教授 事務局:林野庁林政部)で9回審議され、2016年5月10日の答申を受けて策定されたものである。

 我が国の森林は、国土の約3分の2を占め、国土の保全、水源の涵養、生物多様性の保全、地球温暖化防止および木材等の物質生産等の多面的機能を有している。

 戦後、復旧造林および拡大造林が行われ、1,000万haを超える人工林が造成され、森林面積の約40%強を占めるまでになり、森林の総蓄積は約50億㎥に達するまでに森林資源は充実した。しかしながら、人工林の半数以上が主伐期である10齢級(46年から50年生)以上となり、2020年には約70%に達する見込みである。

 このように更新期が到来した現在、我が国は造成した森林資源を有効活用するとともに、計画的に再造成する時期に来ている。

 今回の基本計画では、本格的な利用期を迎えた森林資源を活かし、需要面においては、木造ビルを可能にする木製の新建材CLT(Cross Laminated Timber:直交集成板)の普及や非住宅建築物および木材チップなどを燃料とするバイオマス発電所の建設等における新たな木材需要の創出、他方、供給面においては、主伐と再造林対策の強化等による国産材の安定供給体制の構築を、車の両輪として進め、林業・木材産業の成長産業化を図ることとしている。

 (2016年5月18日開催の経済財政諮問会議で提示された「経済財政運営と改革の基本方針2016(仮称)(素案)」および「ニッポン一億総活躍プラン」(案)の中で、「攻めの農林水産業の展開」として、「木材需要の創出と国産材の安定的・効率的な供給体制の構築を推進する」と記されている。)

 「平成27年森林・林業白書」によると、林業生産は1980年をピーク(11,582億円)に、逓減傾向にあったが、2014年は前年比6%増の4,515億円となり、2年連続で増加している。しかしながら、ピーク時と比較して40%弱の水準まで低下している。

 国産材の生産量は、2002年の1,509万㎥を底に2014年は1,992万㎥まで回復しているものの、木材自給率は1970年代に40%を割って以来、30%にとどまっている。

 素材価格は、スギ、ヒノキ、カラマツについてそれぞれ1980年をピークに下落してきた。ピーク時と比較し、スギは30%、ヒノキは25%前後、カラマツは60%弱の水準となっている。

 林業経営の動向は、我が国の私有林は保有山林面積の小さい森林所有者が多数であるのが特徴的である。また、森林所有者の高齢化も進み、さらに、不在村者の保有する森林も増加している。

 林業労働者の動向は、1980年には林業従事者は14万人以上であったが、2010年には約5万人、高齢化率(65歳以上)は21%と全産業平均(12%)に比べると高水準。他方、若年者率(35歳未満)は2010年時点で18%と全産業平均(27%)に比べると低水準である。2003年度から実施している「緑の雇用」事業により、新規就業者の累計は約1万5千人となり、2011年度以降は、毎年3千人前後で推移しているが、林業従事者の増加には至っていないのが現状である。

 今回の基本計画にある国産材の安定供給体制の構築には、いかに木材価格の安定化の確保ができるか、そして、就業環境の向上などにより5万人まで減少した林業従事者の増加および若年化が早急に実現できるかにかかっていると言えるのではないか。

今回の基本計画のポイント

1.基本的な方針

(1)資源の循環利用による林業の成長産業化

本格的な利用期を迎えた人工林(育成単層林)において先行的に路網を整備するとともに、主伐後の再造林対策の強化により森林資源の循環利用を進め、林業の成長産業化の早期実現を図る。

(2)原木の安定供給体制の構築

大型化する製材・合板工場や木質バイオマスのエネルギー利用の拡大などに対応するため、面的なまとまりをもった森林経営の促進等により原木供給力を増大させ、安定供給体制の構築を図る。

(3)木材産業の競争力強化と新たな木材需要の創出

品質・性能の確かな製品供給や、国産材を使用した横架材等の開発・普及等により木材産業の競争力を強化する。さらに、CLT等の新たな木質部材の開発・普及や、従来木材が利用されてこなかった非住宅建築物等の分野での木材利用を促進し、新たな需要を創出する。

(4)林業および木材産業の成長産業化等による地方創生

(5)地球温暖化防止や生物多様性保全への対応

2.森林の有する多面的機能の発揮ならびに林産物の供給および利用に関する目標

(1)森林の有する多面的機能の発揮に関する目標

集落からの距離が近いなど木材生産に適した森林については育成単層林として整備を進めるとともに公益的機能の一層の発揮を図るため自然条件等を踏まえつつ育成複層林への誘導を推進するため、5年後(2020年)、10年後(2025年)、20年後(2035年)の目標とする森林の状態を提示する。

(2)林産物の供給および利用に関する目標

10年後(2025年)における国産材と輸入材を併せた総需要量を79百万㎥と見通したうえで、国産材の供給量および利用量の目標として、2014年の実績の約1.7倍に相当する40百万㎥を目指すこととした。(現状、我が国の木材総需要量76百万㎥の約70%弱を欧州諸国等からの輸入材に依存しているが、50%まで引き下げる計画である。)

(注)本文中、下線はQUICKが付したものです。

3.森林および林業に関し、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策

(1)森林の有する多面的機能の発揮に関する施策

 ①面的なまとまりをもった森林経営の確立

 ②再造林等による適切な更新の確保(野生鳥獣による被害への対策等)

 ③適切な間伐等の実施、路網整備の推進

 ④多様で健全な森林への誘導(「グリーンインフラ」としての活用、花粉発生源対策の推進を含む)

 ⑤地球温暖化防止策および適応策の推進(COP21のパリ協定を踏まえて、二酸化炭素の吸収作用を確保等)

 ⑥国土保全等の推進(事前防災・減災対策としての治山事業等)

 ⑦山林の振興・地方創生への寄与(森林資源の活用による就業機会の創出等)

 ⑧社会的コスト負担の理解と促進(環境税、森林吸収量のクレジット化等)

 ⑨国際的な協調および貢献(持続可能な開発のための2030アジェンダにおける目標(SDGs)の実現、違法伐採対策)

(2)林業の持続的かつ健全な発展に関する施策

 ①望ましい林業構造の確立

 ②人材の育成・確保等

 ③林業災害による損失の補填

(3)林産物の供給および利用の確保に関する施策

 ①原木の安定供給体制の構築

 ②木材産業の競争力強化

 ③新たな木材需要の創出(CLT、非住宅建築物、バイオマス発電等)

(4)森林および林業に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項

 ①すべての関係者による主体的な取り組み

 ②施策の進捗管理と評価の適切な活用 

 ③財政措置の効率的かつ重点的な運用

(注)本文中、下線は今後重要となると考えられるテーマをQUICKがピックアップしたものです。

【参考資料】

「森林・林業基本計画」のポイント(2016年5月24日 林野庁)

「森林・林業基本計画」(2016年5月24日 閣議決定)

「全国森林計画」の変更について(2016年5月24日 林野庁報道資料)

「平成27年度森林・林業白書」(2016年5月17日 閣議決定)

「森林・林業基本法」(昭和39年7月9日法律第161号 最終改正:平成20年5月23日法律第38号)

「生物多様性国家戦略2012-2020」の閣議決定について(2012年9月28日 閣議決定)

「持続可能な開発のための2030アジェンダ」(2015年9月25日採択 外務省仮訳)

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QUICK ESG研究所 菅原晴樹

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