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【機関投資家】GPIF「平成27年度業務概況書」について <第1部 平成27年度の管理及び運用状況> 2016/08/31 ESGコラム

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 年金積立金管理運用独立行政法人(以下、「GPIF」という。)は、2016年7月29日に「平成27年度 業務概況書」を公表した。

 今回の業務概況書は、昨年のものとは体裁、内容ともに一新され、「第1部 2015(平成27)年度の管理及び運用状況」、「第2部 年金積立金管理運用独立行政法人について」、「第3部 法人設立10年のあゆみ」および「第4部 資料編」の四部構成となっている。

 2015(平成27)年度の資産運用状況は、中国の景気減速懸念、原油価格の下落、新興国景気への懸念と世界的な景気後退懸念から国内債券を除いては軟調に推移したため、収益率▲3.81%、収益額▲5兆3,098億円と前年度に比べて、大きく下回る結果となった。また、市場運用を開始した2001(平成13)年度から2015(平成27)年度までの過去15年間の累積収益率は+2.70%、累積収益額は45兆4,239億円となり、平成27年度末の運用資産額は134兆7,475億円となった。

 一方、運用体制に焦点を当てると、2015年9月 国連責任投資原則(UNPRI)への署名およびCIOがUNPRIのアセットオーナーアドバイザリーコミッティーの委員に就任したのをはじめとして、市場のベータ向上を通じた運用収益の拡大を目指して、スチュワードシップ責任を果たす取組みを推進した。また、理事2名体制ならびにリーガル・オフィサーおよびオルタナティブ投資室の設置など、管理運用体制の強化・充実が図られた1年となった。

 以下の通り、2015(平成27)年度の業務概況について、「業務概況書」に沿って、「第1部 2015(平成27)年度の管理及び運用状況」、「第2部 年金積立金管理運用独立行政法人について」そして、「第3部 法人設立10年のあゆみ」および「第4部 資料編」の3つのパートに分けて確認していくことにする。

第1部 2015(平成27)年度の管理及び運用状況

1.資産全体

(1)運用実績

① 収益率:▲3.81%

② 収益額:▲5兆3,098億円

③ 累積収益額・運用資産額:市場運用を開始した2001(平成13)年度から2015(平成27)年度までの累積収益率は+2.70%、累積収益額は45兆4,239億円となり、平成27年度末の運用資産額は134兆7,475億円となった。

④ 年金財政上求められる運用利回りとの比較:市場運用開始した2001(平成13)年度からの「実質的な運用利回り(累積)」は2.60%と、「財政計算上の前提である実質的な運用利回り」0.23%を上回っている。

(注)「実質的な運用利回り」は、名目運用利回りから名目賃金上昇率を差し引いたもの

(2)市場環境と投資行動

① 各四半期の市場環境、投資行動および各四半期末の資産構成割合を開示している。

② 各四半期末の資産構成割合において、国内外株式および外国債券は基本ポートフォリオに対して低い割合(アンダーウエイト)となった。

(3)運用資産額・構成割合(年金積立金全体)

① 基本ポートフォリオ

  • 運用目標:実質的な運用利回り(運用利回りから名目賃金上昇率を差し引いたもの)1.7%を最低限のリスクで確保すること
  • 想定運用期間:積立金の水準が最も高くなり、継続的に低下が始まる前までの25年間としている

② 運用資産額・構成割合

  • 国内債券 528,010億円(37.55%)  35% (±10%)
  • 国内株式 305,809億円(21.75%)  25% (±9%)
  • 外国債券 189,388億円(13.47%)  15% (±4%)
  • 外国株式 310,714億円(22.09%)  25% (±8%)
  • 短期資産  72,351億円(5.14%)   -% (-%)

(注)各アセットクラスは2014年10月31日付で変更された上記右欄の基本ポートフォリオに対して各資産においてアンダーウエイトであるが、許容限度の範囲内に収まっている。
(注)オルタナティブ資産の年金積立金全体に占める割合は0.06%(基本ポートフォリオでは上限5%)

(4)複合ベンチマーク収益率との乖離の要因分析

① 運用資産全体の収益率▲3.81%

② 複合ベンチマーク収益率▲3.81%

③ 超過収益率0.00%

④ 資産配分要因0.21% 個別資産要因▲0.15%

(5)管理運用委託手数料

① 383億円で平均残高比0.03%(平成26年度は291億円で、平均残高比0.02%)

(6)基本ポートフォリオの検証

① 現行の資産構成割合は効率的で、目標利回りを概ね満たしていることが確認されている。

(7)債券運用

① 国内債券市場

  • 10年国債利回りは、前年度末の0.04%から今年度末は▲0.04%へ低下(債券価格上昇)
  • 超過収益率は▲0.23%(アクティブ運用▲1.49%、パッシブ運用+0.02%)

② 外国債券市場

  • 米国10年国債利回りは、前年度末の1.93%から今年度末は1.77%へ低下(債券価格上昇)
  • ドイツ10年国債利回りは、前年度末の0.18%から今年度末は0.16%へ低下(債券価格上昇)
  • 外国為替市場においては、ドル/円は前年度末の119.93円から今年度末は112.40円となった。ユーロ/円は前年度末の128.80円から今年度末は128.08円となった
  • 超過収益率は▲0.58%(アクティブ運用▲0.86%、パッシブ運用+0.04%)

③ 自家運用

  • 国内債券パッシブ運用の一部、外貨建て投資信託受益証券、引受財投債の全額、短期資産等について自家運用を行っている

④ インフラ投資

  • 年度末の時価総額814億円
  • 収益額+6億円

(8)株式運用

① 国内株式市場

  • 東証株価指数(TOPIX配当なし)は、前年度末の1,543.11ポイントから今年度末は1,347.20ポイントへ下落
  • ベンチマークであるTOPIX(配当込)に対する超過収益率は+0.02%(アクティブ運用+0.92%、パッシブ運用▲0.13%)

② 外国株式市場

  • ダウ平均株価指数は、前年度末の17,776.12ポイントから今年度末は17,685.09ポイントへ下落
  • ドイツDAX株価指数は、前年度末の11,966.17ポイントから今年度末は9,965.51ポイントへ下落
  • 外国株式のベンチマークは、MSCI KOKUSAI(円ベース、配当込み、GPIFの配当課税要因考慮後)、MSCI Emerging Markets( 円ベース、配当込み、税引き後)およびMSCI ACWI(除く日本、円ベース、配当込み、GPIFの配当課税要因考慮後)の複合インデックス(それぞれの運用金額による構成比で加重平均したもの)である。これに対する超過収益率は+0.03%(アクティブ運用 +0.09%、パッシブ運用 +0.04%)

③ スチュワードシップ責任・株主議決権行使

<スチュワードシップ責任>

  • 2014年5月30日「スチュワードシップ責任を果たすための方針」策定・公表
  • 2015年度の実施状況
  • 2015年運用受託機関におけるスチュワードシップ活動の状況報告を求めた
  • 2015年3月にGPIFでは、「投資原則」を策定
  • 2015年9月には国連責任投資原則(UNPRI)の署名、スチュワードシップ専任者採用等の体制強化を実施
  • 2016年3月スチュワードシップ推進グループの設置(2016年7月1日現在7名体制)

<株主議決権行使>

  • 2015年度の株主議決権の行使状況
  • 国内株式運用受託機関の対応状況では、29ファンドすべて議決権行使
  • 外国株式運用受託機関の対応状況では、23ファンドすべて議決権行使

2.主要な取組み

(1)スチュワードシップ責任を果たす取組みの推進

① 2014年5月 スチュワードシップ・コード受け入れ

② 2015年9月 国連責任投資原則(UNPRI)への署名

③ 2016年1月 水野CIOがUNPRIのアセットオーナーアドバイザリーコミッティーの委員に就任

④ 2016年4月 運用受託機関のスチュワードシップ活動に関する上場企業向けアンケート集計結果の公表

(2)マネジャー・エントリー制度導入に向けた検討

① 2016年 マネジャー・エントリー制度の導入決定

(3)管理運用体制の見直し

① 2015年5月 GPIF法改正により、理事2名体制(管理運用業務担当理事および総務・企画等担当理事)

② 2016年1月 リーガル・オフィサーを設置

③ 2015年1月 投資戦略部に運用リスク管理課を設置

④ 2015年5月 運用リスク管理室に格上げ

⑤ 2015年11月 運用管理室およびオルタナティブ投資課を設置

⑥ 2016年3月 オルタナティブ投資室に格上げ

⑦ 2016年4月 運用部を市場運用部に改め、委託運用第一課(国内)と委託運用第二課(外国)を設置

(4)新興国株式投資の分散化(国際金融公社(IFC)等との共同投資)

① IFCと日本政策投資銀行(DBJ)との共同投資協定に基づき、新興国の非上場株式投資を開始。

② 当面、4億ドル(450億円)を想定して、投資から5年程度経過後に資金回収を予定している。

(5)運用受託機関等の選定等

① 運用受託機関構成の見直し

② オルタナティブ資産に係る資産管理機関の選定

(6)運用受託機関等の管理・評価(略)

(7)有価証券報告書虚偽記載に伴う訴訟

① 西武鉄道株式会社:回収額142億円

② オリンパス株式会社:回収額21億円

③ フォルクスワーゲンAG:ドイツ法に基づく集団訴訟手続きに参加中

【参考資料】
平成27年度業務概況書(2016年7月29日 GPIF公表)
平成27年度業務概況書の概要(2016年7月29日 GPIF公表)
平成27年度業務概況書 高橋理事長会見説明資料(2016年7月29日)
平成27年度運用状況(2016.07.29 GPIF公表)

QUICK ESG研究所 菅原晴樹

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