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【RI 特約記事】あなたのポートフォリオにある企業は、デジタル資産をカバーしているか? 2017/01/19 ESG

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 本稿は、レスポンシブル・インベスターの掲載記事をQUICK ESG研究所が翻訳したものです。

 シリコンバレーは、人類史上、最も著しく富を創造してきた場所の1つとなった。特に最近では、その富の相当な部分は、増加していく新しいタイプの資産、すなわち消費者の情報を収集し蓄積することを可能とした先進技術から生じている。

 この情報には、ユニークで素晴らしい、ある特質がある。 この情報を獲得することには、著しいスケールメリットが働く。すなわち、この現代のゴールドラッシュで金を採掘するには、相対的にわずかな作業員がいればすむのだ。普通に考えると、この情報は「使用すると価値が減る」ようなものではない。なぜなら、多くの場合、同一のものを多くの顧客に販売することができるからである。 さらに、いったん情報収集のための基盤を構築してしまえば、一般的に使用者から更新データを取得するための限界費用(追加的費用)は、比較的少なくて済む。

 しかし、その情報の価値は長くは続かない。

 古くなった消費者情報のどんなに大きなビッグデータを持っていても、誰も大きな利益を得ることはできないし、この情報の新鮮さを保っておくには、様々なレベルで消費者からの同意が必要となる。

 この分野で事業を営む企業(主として、インターネットメディア&サービス企業があたる。ただし、インターネットオブシングス(IOT:Internet of Things)が多くの企業に、彼らが切望する”ハイテク企業”のタイトルを取るチャンスを与えているため、伝統的な業種分類があいまいなものになってきている。)は、鉱山業者と共通する点をもっている。すなわち、事業運営のための公的なライセンスを必要としているのだ。

 もし、その企業が消費者情報を保護することに失敗し、広告に不適切なかたちで利用したり、正当な理由なく規制当局に提供したりすれば、消費者は、企業がこの資産を利用することを制限するかもしれない。

 情報セキュリティーは、課題と機会の両方を提示する。企業のこの課題への取り組みの巧拙は、そのブランド価値や消費者からの要求に影響しうるし、また、投資家やアナリストの注意をひきつける。 機会の側面としては、企業の消費者情報の革新的な利用による、明らかな経済的利益がある。最近のPWCのレポートによると、インターネット広告~広大で空虚なデジタル空間で叫ぶのではなく、特定の消費者にターゲットを絞ったもの~は、2015年に$596億の産業となり、2014年比で20.4%の増加であった。リスクの側面としては、消費者のプライバシーを不適切に取り扱ったことで、陳謝する企業の報道をみつけることが決して難しくないことを挙げることができる。

 例えば、2014年のFacebookが、$220億でメッセージングサービスのWhatsAppを買収した事例がある。(前年の同社の売上は、$1020万に過ぎなかった。)Facebookは、あきらかにWhatsAppの顧客層を自分のものにしたかった。 このメッセージングサービス会社は、その厳格なプライバシーポリシーで表彰を受けており、当初、Facebookはそのプライバシーポリシーを変更する意図はなかった。しかし作年の初め(2016年)、その姿勢を転換し、その後、同社はユーザや欧州の規制当局による厳しい監視にさらされることになった。

 2016年11月、ドイツのプライバシー規制当局は、Facebookに対してドイツ国民の情報削除と情報の収集停止を求め、Facebookは欧州全域のWhatsAppユーザ情報の収集を停止した。これをきっかけに、どのくらいのユーザがサービスの使用を停止したのか、予測は容易ではないが、全顧客情報へのアクセスを失ったことは、収益とFacebookの潜在的な資産の消失を招いたことは明らかである。

 TRUSTeとNational Cyber Security Allianceによる最近の調査によると、アメリカの消費者は主な収入源を失うよりも、個人情報がオンライン上でどのように収集されているかを気にしている。89%の回答者は、もしも企業が彼らの情報を適切に扱っていないと感じると、その企業を避ける、と回答した。この傾向は増加しており、45%の回答者は1年前に比べ、オンライン上のプライバシーをより気にするようになったと答えた。

 企業は顧客の個人情報により焦点を当てたサービスの提供を始めることで、これら懸念に対応している。先日、Wall Street JournalはMozillaがFirefoxの新バージョンであるFirefox Focusをリリースしたと報道した。このブラウザは、厳重なプライバシー制御機能を有しており、企業のウェブサイトは訪問者の履歴情報へのアクセスやその保管ができない。このサービスは増加する顧客からの要望からだけではなく、将来、顧客のプライバシー対策は標準化されることを想定して作られた。

 プライバシーは企業価値評価にも影響する。先日IPO申請したSnapchatの評価額は$250億と噂されているが(申請は公となっていない)、この評価の大部分は、同社が顧客のHyper specific data(超特定情報)をマーケティング担当者に提供し続けていることが基になっている。私は投資家として、同社がS-1申請(※1)(そして続く10-K(※2))で、どのようにこの資産を管理し、顧客へのサービスの提供を継続させるかの計画を示してほしいと願っている。

 投資家は、40社以上が提供している透明性報告書(transparency report)情報に関心を寄せている(例えばGoogleの事例(※3))。さらに、New America社のOpen Technology Instituteは、これに適合するTransparency Reporting ToolkitとRanking Digital Rightsプロジェクトという2つのサービスを提供しており、企業のプライバシーに関する情報開示内容を分析し、投資家がこの課題で他社を凌いでいる企業の選定を可能としている。

 保有資産の長期的な持続可能性を求める投資家は、環境およびガバナンス・スチュワードシップと共に、企業のデジタル・スチュワードシップについて調べ、企業価値にどのような影響を与えているか考慮すべきである。

(※1)S-1申請とは、米国において、IPOを目的とした企業がその最初の申請ステップで米国証券取引委員会(SEC:US Securities and Exchange Commission)に提出するもので、申請企業の基本的な事業や財務に関する情報を含む。
(※2)10-Kとは、米国における年次報告書のことで、企業の年次報告書。事業概要、財務データ、コーポレートガバナンスデータなどが記載される。
(※3)Googleでは、インターネットユーザーとオンライン情報の自由な流通に対して法律や政策が及ぼす影響を明らかにするための様々なデータを公開する専用のWebページを用意している。
(QUICK ESG研究所 補足)


 レスポンシブル・インベスターは、第6回RIアジアを2017年4月25日、26日、東京証券取引所にて開催いたします。

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【関連ページ】
SASB Speaks: Are companies in your portfolio covering their digital assets?

Responsible Investor, Quinn Underriner 2016年12月9日 (翻訳:QUICK ESG研究所)

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