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【RI 特約記事】ジョン・ケイ 教授インタビュー:ドイツ銀行の危機に見るドイツ式コーポレート・ガバナンスの欠点 2017/03/19 ESG

 本稿は、レスポンシブル・インベスターの掲載記事をQUICK ESG研究所が翻訳したものです。

 イギリスの経済学者ジョン・ケイ(John Kay)教授は、ドイツ銀行に対する投資家の信頼が失なわれ、株価が数十年来のレベルに急落したことは、ドイツ式のコーポレート・ガバナンスが大企業の「傲慢な経営」には機能しないという欠点の表われである、と述べた。

 ケイ教授は、英国政府からの要請で、イギリスの株式市場における短期志向(Short-termism)について考察したケイ・レビュー(Kay Review)を取りまとめた経験を持つ。ドイツ式のコーポレート・ガバナンスモデルについては、中小企業の経営には上手く適合する一方で、昨今のガバナンスに関わるスキャンダルにより、このモデルはドイツ銀行やフォルクスワーゲン(VW)のような大企業では機能しないことが明らかとなった、と述べた。

 「ドイツにおけるコーポレート・ガバナンスは現職マネージャーの立場を強化させるため、自由度を持たせて効率的に発展する中小企業に適したものである。」「しかし、このモデルでは大企業の傲慢な経営に対応できないことも分かってきた。VW然り、また、現在のドイツ銀行も同様である。」とケイ教授はRIのインタビューで述べた。

 ドイツ最大の金融業者であるドイツ銀行の株価は、アメリカ司法省が、金融危機以前に住宅ローン担保証券(RMBS)を不正に販売していたとする調査に決着をつけるために同行に140億米ドルの支払いを求めているというニュースを受け、急落した(2016年10月第1週)。その後、同行は72億米ドルという支払額で和解したという報道により、株価は持ち直した。

 投資家からの信頼の喪失は、同行の不安定な立ち位置を浮き彫りにしたが、銀行のマネジメント・ボードやスーパーバイザリー・ボード(*)の怠慢に対して、投資家は長年懸念を抱いてきた。

 2016年5月の年次株主総会では、米国の年金基金大手CalPERSおよびCalSTRS、カナダ公的年金積立運用(Canadian Pension Plan Investment Board)、オランダの年金基金運用会社APGを含む大手年金基金が、ドイツ銀行におけるマネジメントおよびスーパーバイザリー・ボードの独立監査実施に関する株主議案を支持した。最終的には53.6%の株主が反対票を投じたため、わずかな差で否決されたが、このことは、投資家の銀行に対する懸念の深さを物語っている。

 ある英国機関投資家は匿名で、「ドイツ銀行および同行のやり方に対してこのところ懸念を抱いている」と述べた。また、「同行は透明性や開示情報のレベルに関する投資家の懸念への対処をしてこなかった。それゆえ、言うなれば太陽に照らされていた(業績が良かった)時も決して株主に信頼されていたという事はなく、結果として、嵐に見舞われた(業績が悪化した)時には、投資家に対しさらに弱い立場に立たされたのだ」と加えた。

 ケイ教授は前進するための方策としては、同行を解体、縮小し、特化した金融機関とすることだと言っている。「我々には現在のような手広く展開する銀行は不要である。もしもドイツ銀行が解体されれば、生き残れない金融ビジネスと、存続し続けるビジネスがあるだろう」と加えた。

 その影響力からすると、ドイツ銀行はリテール、コマーシャルバンクを併せ持つ大手ヘッジファンドのような存在であった。世界におけるデリバティブのエクスポージャーはおよそ600~700兆米ドルあり、ドイツ銀行とJPモルガンは、全体の10%に相当するエクスポージャーを各々に保有している」とケイ教授は述べた。

 今年、ドイツ銀行の株価は半減し、2016年10月第1週の時点では過去30年で最低レベルに下落、一時10ユーロを下回った。ヘッジファンドがドイツ銀行株を空売りしていると報道されており、金融情報サービスを提供するMarkit社によると、実際に機関投資家の貸株比率は9月30日の5.3%から、10月3日には今年最高である5.6%に上がった。ケイ教授は「少し遅れた反応であるが、機関投資家の視点からは、これは現代の資本市場において理にかなった行動である。つまり、『何が起きているのか分からないから、その株式には近づかない』という事だ」と述べた。

 こうしたことから、ドイツ銀行の株主の先行きは益々厳しいものとなるであろう。クレディ・スイスのアナリストであるJohn Peace氏は、たとえアメリカにおける訴訟が合理的な水準に落ち着いたとしても、(ロシアやFXを含む)その他の課題が2018年まで「新たなリスクや自己資本の増加に重荷となる」と言う。

 同氏は、「たとえ2016/2017年を無配当とし、また昨今の売却益を織り込んだとしても、ドイツ銀行が独自でその資本調達を達成することは困難だろう」と付け加えた。

(*)マネジメント・ボードとスーパバイザリー・ボード:ドイツのコーポレートガバナンスコードは、ドイツの上場企業にマネジメント・ボードとスーパーバイザリー・ボードの二層を設定することを求めている。
(QUICK ESG研究所 補足)

 参考:金融庁HP


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【関連ページ】
https://www.responsible-investor.com/home/article/deutsche_kay_feat/(執筆日:2016年10月6日)

Responsible Investor, Raji Menon 2016年10月6日(翻訳:QUICK ESG研究所)

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